AWC CAMPUS> 過去からのファイル 3-12 ■ 榊 ■ (43/75)


        
#835/3137 空中分解2
★タイトル (HHF     )  91/ 3/ 9  13:45  (128)
CAMPUS> 過去からのファイル 3-12 ■ 榊 ■  (43/75)
★内容


わずかに声は震えていた。
「俺は用はないさ。こいつらだよ」
美那と菜緒は向き合うと、美那が自分のヘルメットを上げた。
そして、責任者の方を向いた。
「殺した相手の子供の顔ぐらい覚えといて下さい」
責任者の顔に初めて、恐怖が浮かぶ。
「せっ、芹沢!」
責任者は亡霊でも見るかのように後ずさった。
美那の顔は死んだ母の顔にそっくりだったのだ。
ゆっくり歩き出すと責任者は椅子にへばりついた。
その時、後ろから男の声がした。
「社長。あきらめろ。もう、終わりだ」
さっとみんなの顔が入口の方を向く。
「さっ、榊!」
「お久しぶりです」
榊はがれきを避けながら、ゆっくり中に入ってきた。
美那の肩を軽く叩き、そのまま社長の所まで歩いて行く。
机のすぐ前で立ち止まり、手に持っていた白いファイルを前に出し、ちらつかせた。
「そっ! それは………」
明かに、まずそうな表情を浮かべる。
榊は、あくまで穏やかな表情で向かった。
実はこの表情が一番恐い時であるのを知っているのは、斉藤だけである。
榊と向かい合っている社長なみに、斉藤は背筋が寒かった。
「まさか、本当に人体実験をしているとは思いませんでしたよ。しかも、これだけの
数をね」
榊はファイルをパラパラとめくった。
「それは………」
「何か言い訳ができますか?」
「いっ、いや。その…………」
榊は軽く手を上にあげた。
そして、見えないような早さで振り下ろした。

バクッ!!! バキッ〜〜ン!!

ざっと、社長の体の中を風邪が吹き抜けた。
それも、そのはず。
大きく、太い木でつくられた高価そうな机が、榊の手刀のもとにもの見事に両断され、
地に伏してしまったのである。
気絶しないだけでも、大したものである。
榊はそのまま後ろを向き、斉藤達の所に戻って行った。
榊は寄り添って立っている美那と菜緒の方を向く。
「あとは、任せるよ」
そう言い残すと、美那と菜緒の肩を軽く叩き、斉藤のとなりに並んだ。
菜緒もヘルメットを脱ぎ、お互い顔を見合わせた。
いつにない真剣な顔でうなずくと、責任者の方を向いた。
その二人の視線を受け、一瞬、社長はびくっとした。
「最後の審判を下すのは彼女らだ。せいぜい好運を祈りな」
榊がそう後ろから言うと、美那と菜緒はそれぞれ歩き出し、社長の横についた。
美那が社長の右、菜緒が左に立つと、またお互い顔を見合わせ合図した。
社長は、動かなかった。
いや、動けなかったのだろう。
そして、美那と菜緒は手を振りかざした。
社長は体を硬直させ、顔を引き吊らせた。
斉藤と榊は、どうなるかを見守った。
緊張の時が流れる。
そして、二人は同時に拳を放った!
風を切る、すさまじい音が響いた!

ビュ!!!


一瞬だけ、時が止まる。

斉藤は一瞬閉じてしまった目をゆっくり開けた。
斉藤は血の散乱した部屋を思い浮かべていたが、部屋は案外きれいだった。
美那と菜緒の手は、社長の顔の寸前の所で止まっていた。
そしてお互い、責任者の頬を“とん”とだけつつく。
それだけだった。
責任者は、緊張の糸が切れ、床に崩れ落ちた。
音を立て、床に伏す。
「へへ」「ふふ」
美那と菜緒はお互い顔を見合わせ笑った。
そして笑いながら、急に目に涙を浮かべた。
やがて笑い顔が泣き顔になると、二人で抱き合った。
そしてついには、大泣きしだした。
美那も菜緒も。
同じ様に泣いた。
榊は横の斉藤をつつく。
斉藤は何かと向くと、榊は言った。
「大物だな、あの二人」
すると、斉藤は鼻で笑い、榊に言い返した。
「当り前だ。俺達のクラブ員だぜ」
相変わらずの自信有りげな言葉に榊は思わず笑ってしまった。
「ははは」
すると、斉藤もつられ、笑いだした。
「くっくっくっ」
そして、お互い肩を支えながら、大声で笑いだした。
まるで、全てを笑い飛ばすかのように二人は笑った。
美那と菜緒は、その反対に大声で泣いた。
まるで、悲しくて泣いているかのように、そして嬉しくて泣いているかのように。
部屋は、狂ったような笑い声と泣き声がこだまする。
「はぁっはっはっ!」「あ−−−−ん!」「はははは!」「なお−−−!」

そんな時、森のどこかで、ふくろうが鳴いたような気がした。
夜はふけゆく。

                                                 END




《後書》

また、乱菜さんに「文章力は皆無」と言われそうな文章をここにUPしました。
「MARUS」の方は昔に書いた作品を大幅改正しているので、結局最近書いた物と
なんら変わりはなくなっているのですが、こちらの方はほぼ昔に書いたそのままなの
です。
ですから、せっかく皆さんから頂いた反省点も盛り込まれておらず、ある程度変わっ
てきた最近の書き方でもなく、昔の悲惨なままの文章なのです。
(もっとも、今でもあまりまともとは言えませんが)
ですが、コスモパンダさんも言っていたのですが、一度改正をするとだいぶ雰囲気が
変わってしまいます。
「MARUS」がそうでした。
ですから、これはこのままでUPしようと考え、こうなってしまいました。
まことに、すみません。

それでも、なんらかの面白味を感じてくれれば………と思っています。


                     (HHF99190)■ 榊 ■


それと、続きを書きますと言って、かなり遅れてしまったこともお詫びします。







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