#821/3137 空中分解2
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CAMPUS> 過去からのファイル 1-4 ■ 榊 ■ (29/75)
★内容
沙羅は楯の入った箱と、賞状の入った筒と、竹刀を持ってドアの前に立っていた。
藤神 遼
渚
庸助
と書いた名札を確かめると、沙羅はドアを軽く叩いた。
すぐに中から返事がくる。
「はい!」
2秒も待つと赤い鉄のドアが開けられ、中からエプロン姿の20ぐらいの女性が出て
きた。
沙羅は軽く頭を下げた。
「お久しぶり。渚姉さん」
「あらー、沙羅ちゃん。どうしたの。お久しぶり」
沙羅はちょっと中をうかがった。
「お兄ちゃんいますか?」
「いるわよー。さー、入って、入って」
渚は沙羅を中にいれ、一人先に家の奥に入って行った。
「ちょっと、あなた。沙羅ちゃんよ!」
「おっ、本当か?」
遠くからこう聞こえると、土間に立っている沙羅の所に遼がやってきた。
浴衣姿である。多分寝ていたのだろう。
「沙羅、久しぶりだなー。おい、そんなとこ立っていないで、中はいれ、中」
「それじゃあ、失礼します」
沙羅は遠慮がちに靴を脱ぎ、中に入った。
「そんな、他人行儀になるなよ。血はつながってちゃあいないけど、兄妹だと言った
ろ?」
遼は中に入って行き、応接間に沙羅をよんだ。
応接間と行ってもたいしたことはない。
8畳ぐらいの所に低い机と、座布団と、TVがあるだけだった。
遼は唯一、背もたれのある座布団に座った。
「まあ、好きなところに座れ」
遼がすすめると、沙羅は横に座った。
ちょうどその頃、渚が1才になる子供を抱いて、沙羅の向かいの席に座った。
赤ちゃんはだーだーと言って喜んでいる。
3人はしばらく、その赤ちゃんを見ていたが、遼が口を開いた。
「沙羅、今日はどうしたんだ。いきなり」
沙羅は真面目な表情で遼を見た。
「ちょっと、真面目なことなんだけど……」
「ふむ」
遼がうなずくと、沙羅は机の横のあいている所に座りなおした。
遼もそれにならって移動し、沙羅と向かい合った。
沙羅は、姿勢よく正座していた。
その沙羅の長い髪は畳について、整然とした雰囲気を漂わせていた。
横に箱と筒と竹刀が置いてある。
遼も浴衣を閉めなおし、姿勢を正した。
「いいぞ」
遼が言うと、沙羅は横に置いてあった箱から楯を取り出し、前におき、筒から賞状だ
し、同じ様に前に出した。
そして、最後に竹刀を出す。
そして、指を揃え、深々とお辞儀した。
「むかし、剣道を教えてもらったおかげで、今日、インターハイで優勝することがで
きました。これが、その賞状と楯と、その時使った竹刀です。どうぞ、もらって下さ
い」
沙羅は伏せたまま、言った。
遼は少し間を置いて、きっぱりと言った。
「沙羅、そんな事気にしないで、もっていろ。その賞状は、お前の努力の証であって、
決して僕がもらうべきものではない」
沙羅が顔をあげた。
すると、そこに赤ちゃんの庸助が横から抱きついてきた。
沙羅は庸助をだっこし、笑顔で庸助を見た。
「それだけじゃ…………ないんです」
沙羅は視線を遼に戻した。
「この子が大きくなったら、体の弱い女の子がいて、その子が一生懸命、剣道を習
ったときに使った剣だよ。って言って、この竹刀を渡して欲しいんです。そして、賞
状と楯を見て、私の事を時々でも思いだして欲しいんです。あつかましいとは、解っ
ているんですけど、お願いします…………」
沙羅は再び、深くお辞儀をした。
しばらく遼は黙っていたが、やがて笑顔になり、言った。
「そういうことなら、有難くもらおう」
沙羅も顔をあげ、笑顔で答えた。
沙羅は、安心したという表情を浮かべ、一呼吸した。
「それじゃあ…………、優勝できるかどうか解らなかったんで、いきなり来てすみま
せんでした」
沙羅は立ち上がった。
「なんだ。もう帰るのか」
「はい……友達が………………待っているので……」
遼も立ち上がった。
「いい…………友達か?」
遼が聞くと、沙羅は顔をほんのりと赤く染め、少しはずかしそうな顔をした。
「すごく……いい…………友達です」
土間の方に4人全員行った。
沙羅は靴をはき、ドアを開けた。
「それじゃあ」
沙羅は軽く礼をすると、出て行こうとした。
そこに遼が声をかけた。
「沙羅、またいつでも来いよ。ここは、お前の家なんだから」
沙羅は立ち止まり、ゆっくりと振り向いた。
小さな頃の少女の面影を残した、今までの中で、最もいい笑顔をして…………
陽光の差し込む、マンションの玄関先にて−−−−−
FIN.
うーーーーん。下手だーーーー。
はずいなーーーー。
ですが、おそらくこれが最後のUPです。
さて、次はいつになることやら。
一年後に、UPできたら………と思っていますが………
ジョン・レノンは言いました。
「今までの作品をすべて燃やしてしまいたい。恥ずかしい」と。
ましてや、未熟な僕はなお恥ずかしい。
文章はおろか、MSGまですべて消してしまいたいと願った事が幾たびもあります。
が、こうして皆さんに読んでもらうということは、それ以上に嬉しいものがありまし
た。
その感動を忘れずに、書き続けたいと思っています。
そしていつか、誰にみせても恥ずかしくないような作品を書き、沢山の人に読まれた
いな、と願っています。
そして、最後に、
読んで下さってありがとうございます。
心から、感謝をしています。
■ 榊 ■