AWC 運がいい (もう一つの終わり方) 刹那


        
#769/3137 空中分解2
★タイトル (HAG     )  91/ 2/19  16:31  (142)
  運がいい  (もう一つの終わり方)    刹那
★内容
はじめに
  新人さんのために言っておきます。
  この作品を読む前に#740、#741にある「運がいい」を読
んでください。
  今回のこれは「運がいい」のなかがきで言っているもう一つの終
わり方です。
  ストーリーはなかがきから後だけをUPしています。
  ですから前の「運がいい」のなかがきからの続きが今回のこれで
す。
  ややこしいですが宜しくお願いします。
===============================
**12月29日  喫茶店**

  昼過ぎ、妙子は例の郵便局でバイトをしている女の子と喫茶店で
待ち合わせをした。
「ねぇ、清水さん。坂本  隆からの年賀状はあった?」
「ええ、あったわよ」
「そうか、もう29日だもんね」
  妙子は注文したアイスコーヒーを一口飲んで言った。
「ねぇ、頼んだわよ。そのハガキを絶対に坂本家の束の後半に差し
込んでね」
「それは構わないけど・・・ねえ、いったい後半にそのハガキがあ
ったらどうだって言うの?」
「うん?  あのね、その坂本っていうのがあたしに交際を申し込ん
だんだ」
「・・・へぇ」
  清水の顔が少し歪む。困惑した目。
「・・・清水さん、どうしたの?」
「いえ、別に・・・それで?」
「うん、それでね・・・」
  妙子はクリスマスイブに隆が来たことから持ちかけた勝負の話ま
でをつつみかくさず、全部清水に話した。
「・・・というわけで、そのハガキが前半にあればあたしは隆とつ
きあわなければならないのよ。でもあたしにはあなたがいるからハ
ガキが前半にくることなんてないけどね」
「ふーん、そういう訳だったんだ」
  納得した、という顔をして清水もアイスコーヒーを飲んだ。
  でもその目に宿るのは困惑の色。

妙子の日記】
  どうしたんだろ、清水さんの様子がおかしかった。
  でもまあいいか。
  とにかくハガキのことはキチンと頼んでおいたし。
  これであいつもあたしのことを諦めるだろう。
  やれやれね。

【隆の日記】
  今日、幼馴染みの秀美にあった。
  秀美はうまい具合に郵便局でバイトをしているんだ。
  しかも区分けの受け持ちに妙子の家がある!
  俺ってなんてラッキーなんだ。
  さっそくおれは秀美に頼んだね。
  俺のハガキを妙子の家の束の前半に入れといてくれって。
  その時のあいつの表情がちょっとへんだったけどまぁいいや。
  とにかく、これでカンペキ!
  元日には妙子と初詣でに行こうっと。

【清水  秀美の日記】
  どうしよう・・・。
  どうしたらいいのよ〜。
  今日、二人の人間にあった。
  一人はバイト仲間の妙子さん。
  もう一人は幼馴染みの隆。
  前に妙子さんの口から隆の名前がでたときもビックリしたけど、
まさか二人でそんな賭けをしているなんて。
  しかも二人が二人とも郵便局でバイトをしているあたしにイカサ
マするように頼みにくるなんて!
  正々堂々と「運」にまかせようって気にならないのかしら。
  隆にいうことを聞いて前半にハガキを入れたら妙子さんが嫌がる
し、妙子さんの言うことを聞いて後半にハガキを入れたら隆に怒ら
れるし・・・。
  あ〜〜もう!  どうしてあたしが人の恋路で悩まなくっちゃなら
ないの。
  でも。
  ホントにどうしょう。
  ハガキを隠すって訳には行かないよね。
  妙子さんにはもう「あった」って言ってしまったし。
  まったく、もう!  いい迷惑だわ。


**そして  1月1日**

  朝の9時、吐く息が白くなるこの寒空に隆と妙子は妙子の家の前
で立っていた。
  隆は「妙子を信頼しているから結果だけ教えてくれればいい」と
言ったのだが「ダメよ、こういう賭けは2人で確認しなくちゃ」と
の妙子さんのお言葉にしたがって朝早くから妙子さんの家にやって
きたのだ。
  実は妙子さん、隆のガッカリする顔が見たいのだ。
「なぁ、いつまでここに立っているんだ?」
「決まってるでしょ、年賀状がくるまでよ。大丈夫もうすぐよ。去
年は9時頃にきたんだから今年も多分そうよ」
  妙子さんは考えていた。
(ふふん、ハガキを数え終わったときの隆のがっかりした顔が目に
浮かぶわ。これでやっとのんびりとした生活に戻れる)
  隆も考えていた。
(秀美に頼んでいるからハガキは間違いなく前半にあるんだ。こん
な寒空の下で待たなくても・・・。ま、妙子がハガキを数え終わっ
たらそのまま二人でデートに行くことにするか)
  二人が腹の中でいじきたないことを考えていると自転車の後ろの
箱に年賀状をたくさん積み込んだバイトの男の子がやってきた。
  妙子達と同じぐらいの年齢の男の子は妙子達の少し手前で自転車
を止めるとよっこらしょ、とスタンドを立てた。
  そして前の鞄から何件かをひとまとめにしたハガキの束を取り出
し近所に配っていった。
(たいへんねぇ、元日の朝早くから・・・)
  と、妙子が考えているうちにそのバイトの男の子が妙子達の前に
やってきて「はい、どうぞ」と妙子に年賀状の束を渡し、通り過ぎ
ていった。
「さぁ、前半にあるか、後半にあるか?」
  隆が妙子の手元にある年賀状を見ていう。
「あわてないでよ。すぐ調べるから」
  年賀状の数は30枚くらい。
  妙子が数える。
「いちまい、にまい、さんまい、よんまい、ごまい・・・」
  そして。
「じゅうに、じゅうさん、あった!  これがあなたの年賀状ね」
  束から年賀状を取り出し隆に見せる。
「そうだよ」
  裏を見ると「前半にありますように」と大きく文字が書いてあっ
た。
「単純な年賀状ねぇ」
  妙子は溜め息を着いた。
「14枚目にあったということは残り13枚以上だとあなたの勝ち。
12枚以下だと私の勝ちね」
  そう言うと残りの束を数え始める。
「いちまい、にまい、さんまい、よんまい・・・」
(やれやれ、このハガキを数え終わればこのバカともおさらばよ)
「ごまい」
(さて、デートはどこに行こうかな?)
「ろくまい、しちまい、はちまい・・・」

===============================
あとがき
  刹那の6つ目の作品です。
  この作品はこれで終わりです。
  中途半端に終わったわけではありません。
  始めからハガキの数を数えているところで終わろうと決めてまし
た。
  さて、清水  秀美さんはハガキを前半にいれたのでしょうか、そ
れとも後半に・・・。
  どっちでしょうね?




前のメッセージ 次のメッセージ 
「空中分解2」一覧 刹那の作品
修正・削除する         


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE