AWC 閻魔対プルトー(2)       青木無常


        
#735/3137 空中分解2
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閻魔対プルトー(2)       青木無常
★内容
 「おおっ、プルトーの不意をついて閻魔が張り手で応酬する! 張り手張
り手張り手、プルトーの巨体がみるみるコーナーに追い込まれました。さあ、
プルトー、それをかわして首を取りに出るが、つかまらない。両者、ふたた
びリング中央で視殺戦です。邪魔本さん、プルトー、意外にいい動きを見せ
ますねえ」
 「ええ、あの巨体でドロップキックを出せますからね。驚きです。関節技
もうまいですしね。閻魔、油断してはいけません」
 「関節技も使えるんですか」
 「使えます」
 「さあ、リング上ではにらみあいがつづいていますが、おおっと、プルト
ーつっこんだ、閻魔かわす、閻魔かわして背後に回り、、、ひねりを加えた、
バぁックドロップーっ!」
 「あープルトーあれをくらってはいけませんね」
 「そのまま、グラウンドでの展開。閻魔、腕をとりにいきます。アームロ
ックの体勢。邪魔本さん、閻魔の方は、関節技はどうなんですか?」
 「ええ、ひととおりはできますよ。しかしプルトーはベールゼブブ道場で
みっちりとトレーニングをつみましたからね。関節技では若干、プルトーの
方に一日の長があるかもしれません」
 「ロープブレイク。立ち上がってくるところを、閻魔腕をとらえて、ロー
プにふりました。返ってくるところを、、エルボー! 不発です! プルト
ーが顔面をとらえた! アイアンクロー、鉄の爪!」
 「あれはききますよ」
 「プルトーの巨大な手のひらが、がっちりと閻魔の顔面を締め付けていき
ます。閻魔の形相、すごいですねえ。真っ赤に張れ上がっていきます。閻魔、
水平打ちでプルトーの胸板を叩く。プルトー離しません。吸いついたように
指が顔面に食い込んでいる。これは強烈アイアンクロー! 閻魔、ロープに
ふるが、、離れない。邪魔本さん、強烈ですねえ」
 「林檎を握りつぶしますからね。記者会見でяチアう、見せるわけです」
 「おっと、離しました。首を抱えて、ブレンバスターか。いや、DDT!
DDTが炸裂! カバーの体勢に入ります。カウントは2。カウント2で返
します、閻魔。プルトー、閻魔の髪を抱えて立たせます。ああっと閻魔、体
当たり! かわしました、プルトー、サイドをとらえてぇ、サイドォ、、ス
ープレックス! カバーです。カウント、1で返します。邪魔本さん、プル
トーのインサイドワークに翻弄されている、といった感じですね閻魔は」
 「海千山千のヒールですからね、プルトーは」
 「さあ、リング上ではさそり固めの体勢。閻魔、ロープに逃れます。立ち
上がってくるところを……首を抱えて……閻魔、持ち上げた! 首を抱えら
れた姿勢のまま肩口で持ち上げて、、、水車落とし! 水車落としぃ〜〜〜
! そのままカバーに入る。いや、カバーには入りません。プルトーの巨体
を裏返して……これは、キャメルクラッチですか、邪魔本さん」
 「キャメルクラッチですね」
 「キャメルクラッチの体勢です。プルトーの上半身がぐいぐい持ち上げら
れます。顎がのけぞる。これは苦しい、プルトー、これは苦しい。ああっと
! プルトー、血を吐きましたよお!」
 「吐きましたね! 水車落としの時に、打ちどころが悪かったんですかね」
 「吐血ですよ! これは試合つづけられるんですかね」
 「通常ならレフリーストップがかかるかもしれませんが……」
 「レフェリーの弘法大師、ストップをかける様子は見せません。続行のよ
うですねえ」
 「大事な一戦ですからね」
 「さあ、しかしプルトーの顔面は真っ白に変わってきました。勝敗決した
か、この技から逃れられないのか、プルトー。お、閻魔、離しました」
 「らちが開かない、と見たんでしょうね。プルトーは、意地でもギブアッ
プしませんからね」
 「しかし受けたダメージは大きい! 閻魔、抱え上げて、ブレンバスター
の体勢。しかし、持ち上がらない。プルトーの巨体が、、持ち上がりません。
プルトーが、返す。返して、おかえしのブレンバスターーーー! さあ、プ
ルトー、チャンスです。カバーに入れ、カバーに入れ、カバーに、入らない。
両者、リング中央に大の字に横たわっております。邪魔本さん、ダメージが
……」
 「ええ、プルトーも投げた時に首を打ってます」
 「さあ、先に立ち上がるのはどっちか。レフェリーがカウントをはじめま
した。ダブルノックダウン! カウントが進む。しかし動けない。両者、動
けない。邪魔本さん、どうなるんですか」
 「再試合、ということも考えられますが。しかし……」
 「おや、レフェリーの弘法大師が閻魔になにか錠剤のようなものを服ませ
ていますよ。頬をたたいて……嚥下させます。あっと、今度は弘法大師、プ
ルトー側に向かって、同じように錠剤を服ませました。なんなんですか、あ
れは?」
 「いや、たいしたものではないでしょう。おそらく気付け薬の類だと思い
ます。ダメージから早急に回復させて、試合を続行のかまえにもっていこう
というところでしょう」
 「はー、このまま痛み分けでは、両陣営ともおさまりませんからねえ」
 「そういうことです」
 「ああ、両者、ゆっくりと立ち上がりました。薬が効いたようです。肩が
激しく上下しているが、目には生色が戻っています。リング中央に向かう。
しかし、まだ回復しきっていない」
 「両者とも、意外に体力が落ちているのかも知れませんね。セメントです
から、なにが起こるかわかりません」
 「そう、セメントですからねえ。さあ、にらみあったまま、まだ手を出し
ません。両者ゆっくりと円を描きながら――プルトーつっこむ! 肩を当て
ていきました。ロープにふって……ラリアット一閃! 強烈! きょうれつ
ぅう〜! 邪魔本さん、いまバウンドしましたねえ!」
 「ええ、閻魔がバウンドしました」
 「強烈ラリアット、閻魔が一回転。そのまま、、カバーに入ります、、カ
ウント2.9! カウント2.9〜〜! プルトー、閻魔を立ち上がらせて
……喉首とらえた! ハンギングツリー! ハンギングツリーです、プルト
ーのネックハンギングツリー! 閻魔必死でもがくが、動きが鈍い!怪力を
誇示するプルトー、ハンギングツリー! 閻魔の、閻魔の顔が土気色に変色
しています! ああ〜このまま終わってしまうのか、終わってしまうのか、
閻魔! 窮地に追い込まれました。後がない! 崖っぷち! ……あれ?」
 「あれ?」
 「あらら、どうしたのでしょう。プルトー、とつぜん閻魔を放り出してリ
ング外に飛び下りました。おや、おやおやおやおや、呆然とする観客を押し
退けて入場口に走っていきます。どうしたのか。いったいなにが起こったの
か? なにか切羽つまった雰囲気ですが……」
 「見てください。閻魔もですよ」
 「あっほんとうだ。閻魔の姿もありません。どこへいったのか。あ、いま
した。やはり非常口へ向かって一目散に飛んでいきます。ご覧ください。場
内はあまりにも意外な結末に、水をうったように静まりかえっています。あ
あ、ついに消えました。両者ともに、これは退場してしまったのですかあ?
おっと、ゴングです。いまゴングがうちならされました。邪魔本さん、これ
いったいどういうことですかあ?」
 「いや、ちょっとわたしにもどうなってるのかわかりませんが」
 「あ裁定が出ました。両者リングアウト。これは試合終了ということでし
ょうか。裁定は両者リングアウトと出ました。邪魔本さん、どうなってるん
でしょうね。これは、勝者なし、両者いたみわけ、ということで再戦になる
んですかね?」
 「いや、わかりました。再戦はありません」
 「しかし、それじゃ、勝者なしということで地獄の支配権はどうなってし
まうんでしょうか?」
 「最初にルールが説明されましたね。少々特別なルールだったんで、これ
はと思っていたんですが」
 「といいますと? わたくし、まだわかりませんが?」
 「特別ルールでは、リングアウトになった時点で試合は終了。そのときに
リングの上に入るのが勝者だということになっていました」
 「ですが、リングの上にはだれもいませんよ」
 「いるじゃないですか、ほら」
 「しかしあれはレフェリーですし……あ! まさか! そんなバカな!」
 「そうなんです。リング上にいるのは弘法大師。したがって、勝者も弘法
大師、ということになるわけです」
 「……なんということか! すると大師がさきほど選手に服ませていた錠
剤は……」
 「おそらく、下剤かなにかだったんでしょうね。弘法大師は実に意表をつ
く、ま、言ってしまえば汚い手で勝利を得たわけです」
 「なんと! みなさん! この意外な結末! この地獄一決定戦で勝利を
手に入れたのは、なんと! レフェリーの弘法大師なのです! ということ
は、全地獄の支配権は弘法大師の手に委ねられたというわけです。なんとい
う結末! なんという奇想天外! なんという……」

     5

 「なんじゃい、このみみずののたくったような字は! これは前衛絵画か
? アヴァンギャルドか? わしはこんなもん読めん! 書き直してきなさ
い」
 地獄の新しい統治者、弘法大師はそう言いながら小悪魔の持ってきた書類
をつきかえした。
 弘法大師が職についてからは、受理された書類はひとつもない。みながみ
な「字がひどくて読めん」という理由でつきかえされてしまうのだ。至急ワ
ープロの導入が検討されているが、地獄にはキーボードを打てる技術者など
数えるほどもいない。運営状態は日増しに悪化し、混乱の兆しを見せ始めて
い




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