AWC トゥウィンズ・3 九章 (2/3) (21/25) あるてみす


        
#663/3137 空中分解2
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トゥウィンズ・3 九章 (2/3) (21/25) あるてみす
★内容
 そう言いながら、占い師は胸の前で手を組み、目を閉じて、なにやら呪文のよう
なものを唱え始める。
 やがて、カッと目を見開いて、両腕を前に伸ばすと、手の先から衝撃波のような
ものが飛び出して康司を襲った。
「うわっ!」
 康司は弾き飛ばされて、そのショックで周りの白い光が一瞬消える。
「いててて……。」
 体中のあちこちをさすりながら、康司が起き上がって、再び白い光を全身に纏っ
た。そして、再び占い師に向かう。
「ふっ、無駄じゃよ。いくらお主が頑張ってみたところで、このワシに触れること
はおろか、近寄ることさえできんのじゃ。ほれ。」
 再び、占い師の手から衝撃波が放たれて康司を襲う。康司は、さらに弾き飛ばさ
れて部屋の壁に叩きつけられる。
「さて、と。お主達には、どんな方法が良いかのう。」
 占い師は康司が気絶したのを確認すると、あたし達の方に向き直り、呪文を唱え
始めた。と、占い師の体が光り始める。
 やがて、占い師の体が宙に浮いて、その周りを風が舞い始めた。
 あたしと一美は、さらに力を込めて、占い師をにらみ据えた。と、ペンダントと
冠の玉がまぶしいくらいに強く光り、あたし達の体も宙に浮いた。
「ハーッ!」
 占い師が何やら叫ぶ。すると、辺りを舞っていた風が強くなり、あたし達を振り
回しながら部屋の中をかき回し始めた。
 あたしと一美は手をつないだまま、キャーキャー悲鳴を上げながら振り回されて
いたけど、壁にぶつかりそうになったとき、ちょっとした突起を見つけて、それを
掴んだ。そして、一美とともに壁の突起につかまりながら、玉の光を更に強めて、
占い師をにらんだ。
 あたし達の周りを包む光の層が厚みを増し、それとともに、吹き荒れる風の影響
が少なくなっていく。やがて、あたし達は空中に浮いたまま、その場で停止する。
 占い師とあたし達は互いに空中でにらみ合い、そのまま、しばらく時が過ぎた。
「おのれ!」
 占い師がサッと手を上げると、上へ向かって光が走り、それが天井にぶつかると
稲妻となって部屋の中に降り注いだ。
 あたしと一美の上にも稲妻が降ってきて、周りにまとわりつき、パリパリと音を
立てる。
「一美。」
 声をかけると一美がうなずく。
 あたしが手を前へ伸ばすと、一美も同じように前へ手を伸ばして、まとわりつい
ている稲妻状の光を手の先に集中させて、光の玉を作る。
「いくよ!」
「うん。」
 うなずき合うと同時に、手の先に集まった光の玉を占い師に向けて投げた。二つ
の白い玉が占い師に向かって飛んで行く。
「ハッ!」
 占い師は、手の先から衝撃波を発生させて、二つの玉を砕く。
 あたしは、今の稲妻と同じような技が使えそうな気がして、両手に意識を集中さ
せながら言った。
「そんな程度のことだったら、あたしにだって、似たようなこと、できるわ。」
 そして、両手を上に向けると、手の先に集まった力を思いきり放出する。
 手の先から放たれた力は光の玉となって占い師の方へ飛んで行き、その真上で破
裂すると、稲妻状の光となって、占い師に向かって降り注いだ。
「ぐわっ!」
 バチバチと派手な音を立てながらまとわりつく稲妻を払いのけながら、それでも
少し受け損ねて稲妻の一部をまともに受けてしまった占い師は、床に落ちると転げ
回って悲鳴を上げる。
「ね? こっちの方が効率的でしょ?」
 あたしは空中を移動して、占い師の目の前で停止する。
「くっ!」
 占い師は首を振って起き上がると、いきなり、あたしに向けて衝撃波を放った。
「はっ!」
 あたしは慌てて、それを避ける。と、後ろでドーンと音がして、壁がバラバラと
崩れる音がする。
「康司!」
 同時に、一美の悲鳴のような声が上がる。
「えっ?」
 振り返ると、気絶している康司の真上へ壁のカケラが降り注ぐところだった。
「危ない!」
 あたしは、慌てて力を放ち、落ちてくるカケラを片っ端から粉微塵にする。さら
に、風を起こして、塵になったカケラを吹き飛ばす。
 ドン!
「キャッ!」
 いきなり後ろから突き飛ばすような力を受けて、あたしは前へ転んでしまった。
 床に顔をぶつけて、鼻が痛い。と、今度は体全体に衝撃が走った。
「キャッ!」
 いきなり吹き飛ばされて壁に激突。意識が半分遠ざかりかけた。
「いったーい……。」
 あたしは頭を振って、意識を完全に取り戻す。
 どうやら、転んでしまったときに、纏っていた光が消えたため、占い師の攻撃を
まともに受けてしまったらしい。
 体中が痛んで、頭がクラクラする。
 なんとか気を取り直して、力を込めると、再び白い光を纏う。しかし、受けたダ
メージが大きいせいか、さっきのように強い光にならない。
「ふん。そんな程度で、このワシに勝てるつもりか?」
「きゃあっ!」
 占い師の周りから猛烈な風が吹き荒れて、あたしは部屋の中を飛ばされた。
 何度か壁にぶつかり、そして、再び床に戻れたとき、あたしはほとんど体力を使
い果たして、ぶざまにも床に転がってしまった。
「お主には、特別に面白い死に方を用意してやろう。」
 その声とともに、占い師の方から不思議な圧力がかかってくる。
 あたしの体はズルズルと床の上を滑って、少しづつ占い師から遠ざかる。もはや、
起き上がる気力すらなく、身動きもできない。
 と、急に抱きすくめられ、あたしの体の上に誰かがのしかかってきた。
「け、健司?」
 あたしの上に乗ってきたのは健司だった。その健司の手が、あたしの首に伸びて、
その指に力がこもる。
「うっ……。」
 声も立てられず、あたしは健司に首を絞められる。やがて息苦しくなって、頭の
中で何かが破裂しそうになる。
 目の前の風景も歪んできて、あたしは意識を失っていく。
「博美!」
 いきなり一美の声がして、息が楽になる。一美が健司の背中に抱きついて、健司
を羽交い締めにしながら、あたしから引き離そうとしていた。
「こ、このーっ!」
「ぐわあっ!」
 一美が必死の形相で健司を絞め上げる。一美の全身を覆っている白い光が、健司
にもまとわりついて、健司は苦し気に悲鳴を上げた。
「ぐぐぐっ……。」
 健司がうめいて半ば気を失い、一美が手を離すと、その体があたしの顔の上に倒
れ込んできた。
 同時に、冠からバチバチバチッとスパークが走り、健司の体の上を白い光が走り
抜ける。
「ぐぎゃあああっ!」
 それとともに、あたしの周りにも再び白い光が出現した。あたしの冠から発生す
るスパークに、健司は盛大な悲鳴を上げ続けながら、やがて、完全に気絶した……
と思いきや、パッと目を覚まして、白い光に完全に包まれながらゆっくりと起き上
がる。
「えっ?」
 健司は白い光りに包まれたまま、ゆっくりとあたしの手を取って起き上がるのを
手伝ってくれた。
 あたしと健司が立ち上がって占い師の方に向かう。一美もそばに寄ってきて、三
人で一緒に占い師の方に歩き始める。占い師からの強い圧力が、なぜか今はあまり
強く感じられず、楽に近付くことができる。
 健司の手があたしの腰に廻されて、後ろから支えられた。それとともに体が楽に
なってパワーがみなぎってくる感じがする。
「うぬっ!」
 占い師の悔し気な声。
 あたしの周りの光は再び最初の輝きを取り戻していて、占い師の再三の攻撃にも
耐えられるようになっていた。
「一美、康司を起こした方が良いんじゃない?」
 耳元でささやくと、
「うん。」
 一美は康司の元へと走り寄り、必死で康司を起こす。
 あたしは後ろから健司に支えられながら、ゆっくりと宙に浮き始める。
 全身にパワーが溢れていて、今なら何でもできそうな感じ。
 両手を上に伸ばして手のひらを重ね合わせ、一気に突き上げる。すると、手の先
から光が飛び出して、天井にぶつかり、それが複数の稲妻となって占い師の周りに
降りそそいだ。
 占い師は稲妻の檻に閉じ込められ、動きを封じられる。
 そのまま片手を降ろして占い師に向け、指先から電撃を見舞う。
「ハッ!」
 占い師は手の先から、あたしの電撃と同様の光を発射する。と、二つの光は途中
でぶつかって、跡形もなく消滅した。
 その間に、康司は意識を取り戻して、一美と共に白い光を纏いながら、占い師の
背後にまわっていた。そして、いきなり後ろから攻撃。
 かなり卑怯な気がしないでもなかったけど、そんなこと言ってられる程の余裕は
なかった。
 康司と一美の放った光は稲妻となって占い師を襲う。
「ぐぎゃぎゃぎゃ……。」
 バリバリバリッという音と共に、占い師は硬直したように立ちすくむ。さしもの
占い師も、この攻撃に対しては防ぐ手だてがなかったらしく、まともに受けてしま
っていた。
 二人の攻撃が止んでも、占い師は硬直したまま動かなかった。
 一美と康司は顔を見合わせる。あたしは両手を降ろして稲妻の檻を消滅させた。
 占い師に近付き、三人で取り囲んで軽くつついてみる。
「キャッ!」
 いきなり、冠が引き離されるように外れて、占い師の頭の上へと飛び、空中でク
ルクルと回転しながら、玉が白く輝き出した。
 康司の指輪と一美のペンダント、それにあたしのペンダントも、冠の玉に呼応し
て白く光り輝き始めた。
 冠の回転する速度が上がり、やがて白い光の輪となって占い師の頭上にゆっくり
と降りてくる。
 それとともに、康司の指輪とあたし達のペンダントの玉から、それぞれ白い光が
延びていって、互いの玉同士を結び、占い師を中心に据えた光の三角形を形成した。
 冠が作りだしている光の輪が少しづつ広がり、ペンダントと指輪が作りだしてい
る光の三角形に近付いて、やがて接する。
 光の輪が三角形に接すると、今度は三角形とともに収縮を始めた。
 三角形の頂点、つまり、あたし達のペンダントと康司の指輪が引っ張られて宙に
浮き、やがて玉だけが外れて、さらに収縮をしていく。
 光の輪は占い師の体にまとわりつき、占い師を締め上げる。
 占い師の体は白い光で覆われ、まぶしいくらいに白く輝き出す。
 完全に白熱した占い師からは、実際に熱も感じ取れるようになっていた。
 突然、その白く輝く物体が、バチッという音とともに、いきなり弾けて爆発し、
その爆発をまともに受けたあたし達は一瞬にして弾き飛ばされていた。

「博美、起きろよ。博美……。」
 そして、ピチャピチャと頬を叩かれる感触。
 ハッと目を覚ますと、あたしは健司の腕の中にいた。康司も一美も既に気が付い
ていたらしく、あたしの顔を心配そうにのぞき込んでいる。
「大丈夫か?」
「ん、なんとか平気みたい。」
「良かった……。」
 いきなり健司に抱き締められる。
「健司、それくらいにしとけよ。博美も疲れてるだろうからさ。」
「あ、そうだな。博美、ごめんよ。」
 健司はゆっくりと体を離した。
「ううん、平気よ。」
 そう言いながら起き上がる。それにしても、あれだけ玉を使って体力を酷使した
筈なのに、不思議とだるさが感じられない。しかも、途中で一度、完全に体力を失
った覚えがあるんだけど、それもすぐに回復したみたいだし……。
「しかし、疲れたなあ。」
 健司が床に座り込む。
 結局、何がどうなったんだろう。
 あたしは、さっきまで占い師がいた場所へ行ってみた。そこには、冠が一つ転が
っていて、あとは、わずかに黒いススのようなものが残っていただけ。
 落ちていた冠は少し歪んでいたけど、でも、あたしの知ってる冠だった。
 あたしは、その冠を拾って頭に載せた。

−−− 続く




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