#660/3137 空中分解2
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トゥウィンズ・3 八章 (3/4) (18/25) あるてみす
★内容
ところがマイア姫は無謀なことに、首筋に当たった剣を素手で握ったのだ。マイ
ア姫の手が剣の刃で傷ついて血を流す。しかし、マイア姫は何も気にすることなく、
刃を握ったまま剣を引っ張った。このまま、あたしが剣を引いたりしたら、マイア
姫の手がバラバラになってしまう。あたしは慌てて剣を放した。
マイア姫はあたしの剣を放り投げると、あたしに飛びかかってきた。血だらけの
手があたしの首を掴もうとする。あたしはマイア姫の腕を掴んで、なんとか押し返
した。でも、マイア姫って意外に力があるのよね。
「くうっ。」
思わず喉から声がもれる。あたしって、そんなに体力ある方じゃないから、持久
戦に持ち込んではいけない。
腕の力が続かず、マイア姫の手があたしの首に近付いてくる。
「んっ!」
一瞬、思いきり力んでマイア姫を突き飛ばした。
マイア姫は一旦離れはしたものの、再び組み付いてくる。あたしはマイア姫の腕
を掴むと、その下をくぐり抜けて後ろに回り、腕を後ろにひねり上げた。これなら
痛みで身動きが取れなくなる筈。
ところが、マイア姫はそのまま腰を落として前に屈むと、あたしを背負い上げた
のだ。そして、腕が折れそうになるのも構わず、背中のあたしを頭から落とそうと
した。
あわわ……。
慌てて床に手をついて、そのままマイア姫の背中からずり落ちながら、一回転し
て起き上がる。
そして、マイア姫の方に向き直ったところを、マイア姫に組み付かれて押し倒さ
れる。
「わっ!」
マイア姫が覆いかぶさってきて、あたしの首を締めようとした。あたしはマイア
姫を突き飛ばそうとする。その勢いでマイア姫の体が横に転がり、今度は、あたし
がマイア姫を組み伏せるような体勢になる。ところが、勢い余って、再びあたしが
マイア姫に組み敷かれる体勢になり……あたしとマイア姫は組み合ったままゴロゴ
ロと転がっていた。
と、何かに当たって、その動きが止まる。見上げると、そこに健司の顔。
健司がニヤニヤ笑いながら足元に転がってきたあたし達を見下ろしている。
そういえば、さっきまで聞こえていた一美の声がない。
「えっ?」
脇に一美が転がっていた。
「一美!」
思わず叫ぶ。そして、あっと思った時にはもう遅かった。
健司の拳があたしのお腹にきれいに決まり、あたしは声を立てることさえできず
に、目の前が真っ暗になった。
「うっ……。」
何やら手首が痛い。お腹の中を鈍痛が駆け回っている。あたしは顔をしかめた。
「よう。やっとお目覚めのようだな。」
目を開けると、陰湿な笑いを浮かべていた健司の顔が目の前にあった。
あたしは地下牢のようなところで石壁に大の字に張り付けられていて、手首と足
首が金具で固定されていた。体が全く自由にならない。
「ちょっ……ちょっと、なんで? なんで、あたしがこんな目に遭わなきゃなんな
いのよ! ねえ、健司、いったいどうしちゃったの?」
あたしの叫びも虚しく、健司はニヤニヤ笑うだけだった。
「それより、お前さんの仲間の心配でもした方がいいんじゃないのか? ほれ。」
健司が指す方を見ると、あたしから2メートル程離れたところに一美が、さらに
その向こうに康司が同様に張り付けにされていた。一美も康司も頭を垂れたまま、
身動き一つしていない。
「一美! やだ、ちょっ……。」
「心配すんなって。そう簡単に殺しゃしねえよ。」
思わず叫んだあたしの声を、健司の残忍そうな声がさえぎった。
「今、殺しちまったんじゃ、面白くもなんともねえからな。少し趣向を凝らしてみ
ようってことさ。せっかく再会できたんだからよ、少しは楽しもうじゃねえか。」
健司の手があたしの顎にかかる。健司の顔が間近に迫り、生臭い息を吹きかけら
れる。
「うっ!」
あまりの臭さに顔をそむけた。
「さて、と。こういうのは観客が多い方がいいからな。」
健司は一美の頬を何度か叩いた。やがて一美が目を覚ます。
康司も同様にして起こされる。
あたしは、一美も康司もとりあえず無事なのが判ってホッとした。
「それじゃ、そろそろ始めるとするか。」
健司は、そう言うなり、いきなりあたしの短衣を引き裂いた。
「あっ!」
続いて、健司は、あたしの下着にも手をかけた。
何も抵抗できないまま、あたしは完全に裸にされてしまう。
「やだーっ! 何するのよーっ!」
「博美!」
一美の悲痛な叫び。だけど、それだけじゃどうしようもない。
健司は欲望にギラついた目をして、あたしに飛びついてきた。
「いたーいっ!」
胸を強く掴まれて、痛みが走る。
「よう、少しは色っぽく悶えるくらいのことはしろよ。せっかく恋人が抱いてやっ
てるんだぜ。」
そして、健司の下卑た笑い声。あたしは顔をそむけた。
こんなこと……こんなことって……。なんで、あたしが……。
くやしくて、悲しくて、涙が出てくる。
「お願い、健司、やめてーっ!」
あたしは我慢できなくなって叫んだ。
「うるせーっ。耳元で騒ぐんじゃねえ!」
バシッ!
急に頬が痛んで、頭がクラクラした。どうやら健司に頬を叩かれたらしい。叩か
れたところが拳で殴られたように痛い。
あまりの痛さで言葉を失っていたところに、猿ぐつわをかませられる。
「んぐっ! んーっ!」
そして、健司の手が再びあたしの体を荒々しく這い回る。その行為のえげつなさ、
おぞましさに我慢できず、悲鳴を上げても、さるぐつわのせいで言葉にならない。
肉欲の虜になっている健司の、その醜い姿に吐き気を覚える。
「ぐっ……。」
胃の中から何かがこみ上げてきた。本当に気持ち悪くて、今にも吐きそう。
「どうだ? 少しは気持ち良くなってきただろう。」
うぐっ! うう、気持ち悪い……。吐き気がして、たまらない。
健司の手があたしの体中を這い回る。その、いやらしい手付きで撫で回されるた
びに、背筋がぞっとして震えが走り、嘔吐感も止まらず、あたしは我慢できなくな
っていた。
胃の中がムカムカして、変に気持ち悪い。
「うぐっ! けほっ!」
我慢できずに吐こうとして……しかし、吐くものは何もなかった。ただ、酸っぱ
いものが口の中一杯に広がっただけ。その酸味にムセて、あたしは思わず咳込んで
しまった。
「ああ! ったく、うるさい女だな!」
健司が腹立たしげに言うと、あたしから離れて一美に近付いた。
おぞましさと気持ちの悪さを堪えるのに精一杯で、あたしは今まで全く気付かな
かったんだけど、一美が何やらギャアギャア騒いでいたらしい。
「お前の方から先に犯して欲しいのか? それなら、御要望にお応えしてやるぜ。」
「冗っ談じゃないわよっ! 誰があんたみたいなケダモノなんかに抱かれたいなん
て思うもんですか! 抱かれるんなら康司みたいに、ちゃんとした人に決まってる
じゃない! そんなことさえ判らないなんて、やっぱりケダモノはケダモノよね。
よくもまあ、恥ずかしげもなく生きてられるもんだわ!」
一美ったら、相変わらず口だけは達者で、本当に感心してしまう。あたしだった
ら、あんなに口が回らないわね。
と、健司の目が凶悪な光を帯びた。
「そうか。なら、お望み通り、康司に相手をさせてやるよ。おい……。」
部屋の端の方で待機していた兵士を呼ぶと、康司の金具を外す。そして、康司の
手足一本一本を、それぞれ兵士が一人づつ押えながら、一美の前に連れていった。
健司が一美の短衣を切り裂いて、半分裸のような状態にする。
「きゃあーっ!」
一美の悲鳴。そして、康司が一美の前に連れて行かれる。
「や、やめろーっ!」
康司の叫びも虚しく、兵士達は康司を一美のそばに連れて行く。同時に、康司の
ズボンが脱がされて、あたしは思わず顔をそむけた。
「いやーっ! やめてーっ!」
一美の悲鳴。
「ほら、こっちはこっちで楽しもうぜ。」
いつの間にか、あたしの前には健司が戻ってきていた。
「さ、これからがお楽しみの本番だ。」
健司の言葉に戦慄を覚えて、あたしは震え上がる。
「このやろーっ!」
突然、康司の声。同時に、ドスッ、バキッという音が聞こえた。
ハッとして見ると、康司の足元に兵士が四人倒れている。どうやったのか、康司
は手足を押さえていた兵士達を殴り倒してしまったらしい。
そりゃ、康司って結構力があるし、空手もやってるから、並の人間が相手じゃ、
かないっこないってのは判ってるんだけど、それにしてもちょっとすごくない?
後で聞いたところ、少し暴れてやったら足を押さえていた兵士がよろめいてくれ
たので、そのまま足を振り切って蹴り上げ、まず二人を倒したんだって。次に、思
いきり飛び上がって、手を押さえていた方の兵士も蹴り上げたそうだ。最後に、そ
れぞれの兵士に決めの拳を一発づつ与えてやって、完全に気絶させたらしい。
健司は、それを見て、しばらく呆然としていた。
康司は倒れた兵士から金具の鍵を奪って一美の金具を外す。カチャカチャいう音
で、健司は我に返ると、腰から剣を抜いた。そして、康司に向かって怒鳴る。
「てめぇら、動くんじゃねえ!」
健司の剣があたしの首に当たり、首筋がヒヤッと冷たくなる。一美を解放した康
司はあたしの方を見て、動きを止めた。
「よーし。そうやって、おとなしくしてないと、こいつの命はなくなるぜ。」
あたしを人質にした健司は勝ち誇って言葉を続けた。
「しかし、なかなかアジな真似してくれるじゃねえか。え? 康司。」
「貴様というヤツは……どこまで卑怯なんだ。もう生かしちゃおけねえ。」
康司の顔が怒りで真っ赤になり、手が震えている。
「おい、こいつらを捕らえろ!」
健司の命令で兵士達が動く。が、そのまま素直に捕まるような康司じゃなかった。
わっと寄ってきた兵士達の腕の下をくぐり抜け、それをかわしながら健司に向か
って真っ直ぐに突っ込んでくる。
バキッ!
避ける間もなく、勢いの付いた康司の拳が健司の顔にめり込み、健司は壁際まで
吹っ飛ばされて、そのまま動かなくなる。
康司はそこで反転すると、康司を取り押さえようと集まってきた兵士達に向かっ
ていった。
一美が隙を見て、あたしの金具を外してくれる。
自由になったあたしは、さるぐつわを引き剥すと、落ちてた剣を拾う。
「ちょっとちょっと、博美ったら。先に服ぐらい着なさいよ。」
一美が倒れていた兵士の上着を奪い取って羽織ながら言った。あたしも一美に倣
って、慌てて上着を羽織る。
そして、再度剣を構えると、康司の周りに集まっている兵士達に向かった。
これだけの兵士が相手じゃ、いくらなんでも、康司一人じゃ多勢に無勢よね。
適当な兵士に向けて剣を一閃。後ろからいきなりじゃ、ちょっと卑怯って気もし
ないでもなかったけど、この場合、しかたないよね。
と、倒れた兵士の隣にいた兵士が気付いて、あたしに剣を向けてきた。あたしは
しばらく不動のまま相手をにらみ据える。
「このアマー!」
相手が叫びながら剣を振りかぶってきたので、あたしはその動きに合わせて剣を
動かし、相手の剣を止めると、そのまま弾き返した。そして、相手が体勢を崩した
ところで、剣道の面を打つように剣を思いっきり振り下ろした。
相手の兵士は声もなく倒れる。
あたしだって昔は剣道やってたんだから。女だと思って甘く見ないでよね!
上段で構えて次の兵士に向かう。兵士が剣を振り下ろしてきたところを下から受
け止め、それを一瞬で押し返しながら、返す刃で敵の胴を払う。
バキッ!
胴が見事に決まり、兵士の鎧が一発で割れる。なんか、安物だったみたいね。
そして、兵士は腹を押さえたままうずくまり、やがて倒れた。
あたしは、その様子を横目でチラッと見ながら次の兵士に向かっていった。
それにしても康司って強いわよね。あたしが一人倒す間に、素手だけで三人は倒
してる。それを見た他の兵士は康司を恐れて、皆あたしの方に集まってくる。
「わーっ、こんなの無理よーっ!」
あたしは思わず叫ぶ。これだけたくさんの兵士達に一度に飛びかかられては、と
てもじゃないけど対処しきれない。
手の空いた康司は、あたしの方に向かってくる兵士を後ろから次々に殴り倒して
いく。あたしの周りの人垣は、あっという間に減っていった。
「わーっ! 来るなーっ! やだー、来ないでよーっ!」
−−− 続く