AWC トゥウィンズ・3 五章 (1/2) (10/25) あるてみす


        
#645/3137 空中分解2
★タイトル (VLE     )  90/ 9/22  11:40  (197)
トゥウィンズ・3 五章 (1/2) (10/25) あるてみす
★内容
五章  乱闘

 フハ村で気絶させておいた、あの役人とおぼしき連中は、気が付くと同時に隣街
のミナツに連絡を入れていたらしく、夕闇せまる頃になって、あたし達がミナツに
到着すると、何やら物々しい警戒体勢が取られていた。
 あっという間に、あたし達は警備兵に取り囲まれて捕らえられ、牢屋のような場
所に連れて行かれた。元盗賊御一行様達も近くにいたはずなんだけど、たぶん、警
備兵達の手並が余りにも鮮やかだったので、手出しする暇がなかったんだろう。
 あたし達の連れて行かれた場所には、他にも何人もの若い男達が閉じ込められて
いた。どうやら警備兵達は、特にあたし達だってことが判って捕まえたんじゃなく
て、怪しそうな連中は皆、捕らえて閉じ込めているらしい。
 たくさん並んだ鉄格子の中から、たくさんの顔がのぞき、警備兵達に罵倒を浴び
せる者、大声でわめき散らす者、鉄格子を叩いて暴れる者などで、騒然としていた。
「うるさい! 静まれ!」
 警備兵の一人が鉄の棒で、鉄格子の中の人達を小突いておとなしくさせながら、
一つの鉄格子の前に来ると、その扉を開いて、あたしとスクルトを後ろから突き飛
ばした。
「きゃっ!」
 つまずいて前に転び、思わず悲鳴を上げる。同時に、かぶっていた帽子が転がっ
て、束ねていた髪が床に広がる。
「なにっ?」
 扉を閉めかけていた警備兵が目を向いた。閉じ込められていた人達の視線も一斉
に、あたしの方に向けられた。
「貴様、女か?」
 しまったと思ったときには、もう遅い。
「なあ、二人連れのうちの一人は、男の格好をした女だってことじゃなかったか?」
「そういえば、伝令の奴、そんなこと言ってたな。」
 警備兵達が顔を見合わせて言う。
「それじゃ、こいつらが……。」
「そうらしいな。おい、お前ら、ちょっと来い!」
 兵の一人が中に入ってきて、あたしとスクルトの腕を掴んだ。
「いたーい! 何するのよ!」
 しかし、その兵士はかなり力が強く、あたしとスクルトが暴れてもビクともせず
に、あたし達の腕を掴んだまま牢の扉をくぐる。
 あたし達は引きずられたまま牢の外へ。
「一美。もしかして、一美か?」
 あたしは、急に懐かしい声を聞いて振り返った。その鉄格子の中には心配そうな
康司の顔。
「康司!」
 あたしは思わず叫んで、手を振り払おうとした。でも、この警備兵、力が強くて、
いくら暴れても全然離してくれない。
「一美!」
 再び、康司の叫び声。
「うるせえ! 静かにしやがれ!」
「ぐっ!」
 警備兵の一人が鉄の棒で康司を小突き、康司が中に倒れるのが見えた。
「康司!」
 あたしは、声の限りに叫ぶ。
「やだ! 離してよ! 康司! 康司!」
「まったく、うるさい女だな。少しは静かにしねぇか!」
 そして、急に痛む頬。同行の警備兵に頬を強く叩かれたらしい。
 同時に、胸の奥からこみ上げてくる怒り。余りにも理不尽な警備兵達の行為に、
あたしは堪忍袋の緒を切った。
「もう、あたし怒った……。絶対に許さないっ!」
 自由な方の手で服の上からペンダントを強く握りしめ、目を閉じて奥歯をグッと
噛みしめる。そして、全身を怒りに震わせながら、目をカッと見開いて体中の力を
解放した。
 バシッ!
 あたしの腕を掴んでいた兵士が弾き飛ばされて壁に激突し白目を剥く。スクルト
は、弾き飛ばされた兵士のあおりを受けて転んだようだけど、そんなことを気にし
ている暇はない。
 あたしは全身を白い光で包みながら、一人の警備兵の前に行く。
「その扉を開けなさい!」
 康司の閉じ込められている鉄格子を指しながら、あたしは命令調で言った。
「うわ……ば、化物だぁ!」
 その警備兵は腰を抜かしてガタガタと震えながら、必死で腰の辺りをまさぐって
鍵の付いたリングを掴む。
「それが鍵ね。早く開けなさい!」
「は、はい! すぐに!」
 兵士は、余程あわ喰ったのだろう。鉄格子の前にすっ飛んで行って、ガタガタと
震える手で扉を開けようとした。しかし、慌てているせいか、なかなかうまく鍵が
開かない。
「よこしなさい。」
 あたしは兵士の手から鍵を奪い取ると、鉄格子の扉を開けた。そして、中に飛び
込む。中にいた人達は、あたしの姿を見るや、あとずさりを始めた。そして、開け
放たれていた扉から一目散に逃げ出す。あとには康司一人が取り残された。
「康司! 康司!」
 あたしは倒れていた康司に飛びついて抱き上げた。
「よう、一美。会いたかったぜ。」
 気絶はしてなかったけど、でも、お腹の辺りを押さえて、とても苦しそう。
「ねえ、大丈夫? お腹、痛むの?」
「ああ、少しな。でも、もう少し休んでりゃ、なんとかなりそうだ。」
「良かった……。」
 そして、ほっとすると同時に、再び怒りがこみ上げて来る。
「よくも……あたしの康司を……。」
 よくも、康司をこんな目に遭わせてくれたわね!
 あたしの怒りは、康司を小突いた警備兵に向けられた。怒りに燃えながらユラリ
と立ち上がり、全身を白く光らせながら、その警備兵をにらみつける。
「わ、あわわ、うわーっ!」
 その警備兵は一目散に逃げ出した。
「ま、待て。一美。」
 いきなり康司に呼び止められる。
「あんなのは、ほっといていいから、ここに閉じ込められた人達を解放してやらな
いと……。一美、鍵を持ってるだろう。それ使って、扉を全部開けてきてくれない
か。」
「ねえ、ほんとに大丈夫なの?」
「ああ、俺は大丈夫だから。それより、早く開けてやってくれ。」
「うん。」
 あたしは鉄格子の中から飛び出すと、腰を抜かしている兵士を捕まえた。だって、
こんなに鍵があるんじゃ、どれがどこの鍵だか、あたしには判らないんだもん。
「ここの鍵を全部開けなさい。早く!」
 その兵士を追い立てるようにして、次々と鍵を開けさせる。
 中に閉じ込められていた人達が次々と逃げ出して、辺りは急に静かになった。
 康司は腹を押さえながら鉄格子の中から出てくる。
「大丈夫?」
「ああ。なんとかな。」
 あたしは康司に肩を貸して建物の外へ出た。
「ヒトミ、その男は誰だ?」
 先に外に逃げ出していたスクルトが、胡散臭そうに康司を見る。
「あたしの恋人の康司よ。あたしと一緒に飛ばされて、途中で別れ別れになってし
まったの。前にも話したでしょう。」
「へえ、こいつが。」
 スクルトは康司のことをジロジロと見る。
「一美。こいつは誰なんだ?」
 さすがに康司も気分を悪くしたらしい。言葉の端々にトゲが感じられる。
「スクルトっていうの。康司と一緒に飛ばされて、途中で別れちゃったでしょう。
その後お世話になった家の息子さんなの。それで……。」
「おっと、話は後だ。こいつは、少しマジにならないと、まずいぜ。」
 康司はあたしの肩から腕を離すと、あたしを背にかばうようにして身構える。
「ああ。おれも、そう思うよ。」
 スクルトも一緒に身構える。
「お前、なかなかやりそうだな。」
 スクルトが横目で康司の方を見て言った。
「まあな。だが、話は後だ。まずは、こいつらをなんとかしないとな。」
「貴様らが、この騒ぎの首謀者か。我々に刃向かった報いはたっぷり受けてもらう
ぞ。やれ!」
 ズラッと並んだ兵士達。その数、えーと、いったい、何人くらいいるのやら。
 一方、こちらは康司とスクルトの二人だけ。あたしはとても戦力になんかならな
いし、さっきまで牢に閉じ込められていた連中もいるにはいるんだけど、はたして
彼らが戦力になるかどうか。
 と、突然、悲鳴や怒号と共に兵士達の一角が崩れた。
「よーし! おめぇら。ここが俺達の腕の見せどころだぜ。」
 いきなり乱入してきて兵士達の間をあばれまわる元盗賊御一行様達の姿。彼らが
これほど頼りに思えたことはなかった。片方が戦争のプロなら、もう片方は喧嘩と
略奪のプロ。命令に従いながら統率された動きしかできない兵士達と、自由気まま
に、しかし見事な連携プレーで暴れ回る盗賊達じゃ、動きに違いがあるのは当然と
いえば当然。
 あっという間に体勢を崩されて、慌てふためく兵士達。しかし、そこはやはり統
率のプロ。徐々にではあるが、兵士達の方も体勢を取り戻して、元盗賊御一行様達
と互角に戦い始めた。
 あたし達は、その様子を手をこまねいて見ていたわけではない、と言いたいとこ
ろだけど、実は元盗賊御一行様のあまりにも見事な登場の仕方に、半ば呆然として
見とれていたのだった。
 でも、いつまでも、こうして見ているわけにはいかない。
「一美、ここでおとなしくしてろよ。」
 二人は、そう言い残して兵士達の中に飛び込んでいった。
「いい加減に、おやめなさい!」
「皆の者! 静まれ! 静まるのだ!」
「バカ者共! いい加減にせんか!」
 突然、何人かの怒鳴り声。最初はあまり効果がなかったようだけど、その声が何
度か同じことを叫ぶうちに、兵士達の動きが少しづつ止まっていった。同時に、声
の方をポカンと見上げる元盗賊御一行様や康司やスクルトの姿。
「そなた達は、いったい、何を争っているのですか。事と次第によっては許しませ
んよ。」
 あたしと同じくらいの年の着飾った女性が馬にまたがったままで、凛とした声で
言い放った。
「申し訳ありません。しかし、こいつらが……。」
 兵士達の長官らしい男が言い訳をしようとした。
「なんだと? てめぇらがいきなり訳の判らねえこと言って、俺達を捕まえようと
したんじゃねえか! 今更、何を言ってやがる!」
 スクルトが、長官の声を遮る。
「静まりなさい!」
 再び凛とした声。長官らしい男は首をすくめた。
「いったい、何がどうなっているのですか。初めからお話しなさい。」
 そして、長官らしい男は、何かと弁解じみた調子で話し始めた。
 フハ村で二人組が兵士達に刃向かったらしいこと。その二人組が、この街に来る
ということだったので、その二人を捕まえようとしたこと。人相が判らなかったの
で、それらしい人間を押さえておいて、後で取り調べるつもりだったこと。急に訳
の判らないことが起きて、この騒ぎになったことなど。
 それを聞いていた女性は、長官らしい男に問いただした。
「その二人組が、どういう理由で刃向かったのか、理由を聞いていますか?」
「どうやら、そのうちの一人が成人だったのに、兵に加わらなかったんで、捕まえ
ようとしたら暴れて逃げたってことらしいんですがね。それ以上の事は聞いていな
いんで、詳しいことはちょっと……。」
「そうですか。しかし、そのような話はフロール卿の所に届いておりませんね。」
「実は、急ぎの情報だったもんで。後でお伝えしようとは思ってたんですが。」
「急ぎであろうと何であろうと、このような事態をフロール卿が御存知ないという
のは問題です。そなたは、いったいフロール卿を何だと思ってるの?」
「申し訳ありません。しかし、成人になったら兵士として徴用されるというのは、
ソーラ王様からの御命令ですから、それには従わないと……。」
「どんなことであろうと、この街ではフロール家が法律です。フロール家の許可な
く人を逮捕することなどできないのは、そなたが一番良く判っている筈ですね。」
「はあ。しかし、王様の……。」
「お黙りなさい! 一つだけはっきり言っておきます。いくら王様の命令と言えど
も、今回の徴兵については、フロール家は従うつもりはありません。」
「しかし、それでは……。」
「以前は王様も慈悲深く民の事を考えた法をお決めになっていましたが、今は違い
ます。今の王は人が変わったように、民を苦しめ、国を滅ぼすような命令を次々と
出しています。そのような王に、我がフロール家は従うつもりはありません。」
「はっ。」
「従って、フハ村で起こった事についても、このミナツでは不問とすることにしま
す。」
「判りました。」
「ところで、一つ、気になったことがあるのだけど。」
「はい、何でしょうか。」

−−− 続く




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