#639/3137 空中分解2
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トゥウィンズ・3 三章 (3/3) ( 8/25) あるてみす
★内容
吹っ飛ばされた時、したたかに頭をぶつけたらしく、時々頭を振りながら、男達
を従えて再び洞の中に入ってくる。
男達も首領の無事を見て元気を取り戻したのだろう。再びあたしとスクルトを取
り囲んだ。
あたし達は壁際に追いつめられて、もはや逃げ場はない。
こうなったら、もう、やるしかないわよね。
あたしは全身に力を込めたまま身構えた。全身の光が少し強くなる。スクルトは
不安そうな顔であたしの方をチラッと見たけど、その後、やはり同じように身構え
た。
「お前ら、ちょっと待てい!」
急に首領が怒鳴った。そして、ゆっくりとあたしの前にやってくる。
「明りを持ってこい!」
男の一人が明りを持ってきて首領に手渡す。
首領は、その明りをあたしの前に持ってくると、あたしの顔を照らした。
な、なによ。油断させようったって、そうはいきませんからね。
あたしは身構えたまま、首領の動きを見つめていた。
しかし、首領はあたしの顔を見つめたまま、ピクリとも動かない。
そのまま、しばらく時が過ぎる。
「も、もしや、あなた様は……。」
首領はいきなり地面に片膝をついて、従者のような態度になった。
「えっ?」
急に、首領の口から思ってもいなかった言葉が飛び出して、あたしは戸惑い、呆
然とした。自分じゃ判らないけど、多分、キョトンとした表情になってたと思う。
「あっしの記憶に間違いがなければ、ティアの女神様では……。」
「えーっ!」
誓ってもいい。あたし、盗賊に知り合いなんていた憶えない。
驚きの余り、全身に込めていた力が抜けて、ペンダントの玉の光が消え、あたし
の全身を包んでいた白い光も消える。
「いかにも、その通りだが、何故お前のような者がそのようなことを知っておるの
だ?」
突然、スクルトが偉そうな態度に出る。多分、今までの仕打ちに対する鬱憤もあ
ってのことなんだろうけど、でも、そういうスクルト自身だって一昨日の夜までは
何も知らなかったのよね。
「あっしは以前、ソーラ王の城下でティアの女神様をお見かけしたことがございや
す。その時は遠くから拝見させて頂きやしたが、やはり不思議な力を使っておいで
でやした。」
以前……ってことは、前にこっちに来たときの話よね。
「このような場所で、まさかティアの女神様にお会いできるとは……。知らなかっ
たこととはいえ、無礼な振舞いをしちまいやして、本当に申し訳ございやせん。ど
うか、お許し下さいやし。」
そう言って頭を下げる。まるで、お姫様に対する騎士のような態度。
他の男達も首領に従い、一斉に腰を落として片膝をつき頭を下げる。
あたし、こういう雰囲気って駄目なのよね。変にお尻の辺りがこそばゆくなるし、
それに、とっても恥ずかしい。
「あ、あの……。」
どうしよう。本当に困っちゃう。
「お願いだから、どうか頭を上げて下さい。」
あたしが、いくらそう言っても、首領は、
「まことに恐れ多いお言葉。あっしにはもったいねえことです。」
そう言ってひたすらかしこまっている。
あーん、困っちゃったなあ……。
と、スクルトが見るに見かねたのか助け船をだしてくれた。
「お前の言いたいことは判った。だが、もう夜も遅い。我々としても疲れておるの
でな。そろそろ休みたいと思うのだが。」
「これは失礼致しやした。では早速。」
そして、首領の合図で男達が洞の外へと出ていく。首領は、もう一度頭を下げて
挨拶をすると、そのまま闇の中へ消えた。それとともに洞の中が闇に包まれる。
「ふう。驚いたわ。まったく。」
「しかし、無事でよかったぜ。」
あたしは一気に力が抜けた。
そういえば、このペンダントって確かにパワーはあるんだけど、体力をかなり消
耗するんだったっけ。こりゃ、考えて使わないといけないわね。気を付けないと、
この先、身が持たない。
岩壁に寄りかかって一息つき、そのまま座り込んだ。
「ねえ、着替えの服はある?」
あたしの服、完全に破かれてて、修復はちょっと無理みたい。
「あることはあるけど、今はちょっと暗くて出せないから、明日の朝にしてくれな
いか?」
「うん。判った。」
あたしはスクルトからちょっと離れて座ると、明りを消した。
「しかし、ヒトミって、すげえ有名だったんだな。」
スクルトが闇の中でボソッとつぶやく。
「そうみたいね。やっぱりすごいことなのかなあ。」
あたしは胸元からペンダントを取り出して眺めた。
普段は、あたしがその気にならないと目に見えるほどの光を発しない玉だけど、
これだけ完全な闇の中だと、何もしなくても、ほんの少しだけど光を発しているの
が判る。
本当に、ほんのわずかだけど、ぼんやりと光ってるの。
「女神って言うけど、結局はこの玉の力なのよね。」
「へえ、なんかすごいな……。」
スクルトがそばに寄ってくるのが雰囲気で判る。
「絶対に触らないでね。あたし以外の人が触ると痛い目に遭うから。」
「あ、ああ……。」
スクルトは、さっきの事を思いだしたのか、ちょっとおびえたみたいな声になる。
「さ、そろそろ寝ましょ。」
あたしはスクルトから少し離れて壁に寄りかかると、そのまま目を閉じた。
−−− 三章終わり