AWC トゥウィンズ・3 三章 (2/3) ( 7/25) あるてみす


        
#638/3137 空中分解2
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トゥウィンズ・3 三章 (2/3) ( 7/25) あるてみす
★内容
 あたしはあわてて頭を下げる。
「ま、旅は道連れだ。よろしく頼むぜ。」
 スクルトは昨日と違って優し気な表情を浮かべている。
「さ、そうと決まったら、善は急げだ。朝御飯食べたらすぐに出かけるぜ。」
 そして、三人でテーブルを囲んで朝食をとった。

「じゃ、行ってくるからな。」
「ああ、気を付けて行っといで。あんたも無事にお城にたどり着けるように祈って
るよ。」
「ありがとうございます。本当に、いろいろとお世話になりました。」
 そして、スクルトと一緒に家を出た。
「さ、こっちだ。しばらくは一本道だから、迷うことはないぜ。」
 昨日、あたしが来たのと逆の方へ向かって行く。と、少し歩いたところでいくつ
かの建物が見えてきた。
「ここがシモツの村だ。たいして何もない小さな村さ。」
 スクルトの言葉通り、本当に小さな村だった。道に沿って家が何軒か立ち並んで
いるだけで、それもすぐに途切れる。そして、その先にはもう何もない。ただ草原
が続くだけ。
「これで、あとはしばらくは草原の中の一本道だ。俺一人だけなら少し急げば今晩
中に次の村にたどり着けるんだけど、ヒトミがいるからな。たぶん、今晩は途中の
森の中で野宿ってことになるだろうな。」
 えーっ? 野宿ですって? そんなの、やだあ。
「ねえ、それまで、途中には何もないの?」
「ああ、ひたすら、この草原が続いたあとで、ちょっと大きな森の中を抜けるんだ。
その先にカンナっていう村があるんだけど、ヒトミの足じゃ今日中に着くのはちょ
っと無理だろうからさ。ま、野宿でもすれば何とかなるだろう。」
「カンナ村?」
「次の村さ。まだまだ遠いぜ。」
「ふうん。随分詳しいのね。」
「そりゃ、キサラには何度か行ってるからな。嫌でも途中の様子なんか覚えちまう
ぜ。」
 さすがに、何度も行ってるって言うだけあって、スクルトの言葉通り、行けども
行けども一面の草原。もう、緑一面の地面なんて見たくないってくらい。単調すぎ
てつまんない。
 途中で何度か休憩しながら歩き、お昼過ぎくらいにはスクルトが背負ってた荷物
の中からお弁当を出して食べ、また歩き続ける。
 どこまで行っても一面の草原。やがて、日が西に傾いて、そろそろ夕方かなあっ
て思える頃になって、先の方にうっそうと茂った森が見えてきた。道は森の中に向
かってまっすぐに延びていた。
「やっと森の入口に着いたか。これからがまた長いんだよな。」
 スクルトがそう言って森に入り、あたしも後に続く。
 森に入ると、ひんやりと涼しい。なんとなく空気もすがすがしい感じ。
 小鳥とかもいるみたいで、いろんな鳴き声が聞こえてくる。
 やがて、かすかなせせらぎの音。近くに小川が流れているらしい。
 しばらく歩いていると、辺りが薄暗くなってきた。
 それまで木漏れ日となってチラチラと見えていた夕日も見えなくなっている。
「ねえ、まだ抜けられないの?」
「ああ、この森、ちょっと大きいから、抜けるのに結構時間がかかるんだ。今日中
に抜けるのは無理だろうから、今夜はこの中で野宿だな。」
「夜になっても歩き続けたら、夜のうちにカンナ村に着けるんじゃない?」
「ああ、徹夜で歩くつもりなら止めといた方がいい。夜になったら完全な闇になる
から、つまづいて転んで怪我をするのがオチだぜ。まあ、うまく歩ければ多分、日
が変わる頃には、この森を抜けられるだろうけど、でも、カンナ村も夜中だから、
宿に泊まることなんかできないだろうな。」
「そっか。」
「それに、下手に村のそばなんかで野宿するよりは、こういう森の中の方が安全な
んだ。何しろ、村の近くだと盗賊に襲われる恐れが充分あるからな。」
「盗賊?」
「この辺はかなり物騒だって、お袋が言ってたろ? 俺はまだ会ったことないけど
結構いるらしいぜ。もっとも、命までは取られないってことだけど、荷物と有り金
全部奪われるっていうから、下手すりゃ待ってるのは野垂れ死にってことになるん
だろうな。もっとも、女は連れて行かれて慰みものになるって言うから、ヒトミな
ら命の心配まではいらないだろうけど、でも、どういう目に遭うかは判らんぜ。」
 やだ。ここって、そんなに物騒なとこなの?
「でもまあ、森の中なら姿を隠せるから、そういう奴らに出会うこともないだろう。
安心してていいぜ。」
 そして、いい加減に暗くなってきて、そろそろ足元も危ないかなっていう頃にな
って、
「あ、ここだここだ。ちょっと来いよ。」
 スクルトが突然道を外れて下草を踏み分けながら木の間に入って行く。
 あわてて付いて行くと、ちょっと行ったところに大きな洞があった。そして、そ
の向こうには小川が流れている。さっきからずっと聞こえていたせせらぎの音は、
この小川から聞こえてたのね。
「前に一度、この森で野宿したことがあってさ、そんときに、ここに泊まったんだ。
目の前には川も流れてるからなかなか便利だろ?」
 洞の中に入ると、奥はすぐに行き止まりになっていた。でも、そんなにせまくは
ないし、中で火を焚いた跡もある。雨露をしのぐにはいいかもね。
「さて、完全に暗くならないうちに火を起こさないとな。」
 スクルトは、大小さまざまな枝を何本か拾い集めて来ると、小さな枝を使って一
生懸命に火を起こす。そして、パチパチという小さな音が出始めた頃、少し大きめ
の枝を火にくべて、洞の中を明るく照らした。
「さて、弁当にするか。」
 スクルトはすぐに荷物の中からお弁当を二つ出す。
「食い終わったら、すぐに寝ろよ。明日は早いからな。」
 そして、早々と食べ終わったスクルトは、お腹一杯になったらしく、満足した表
情で、そのまま岩壁に寄りかかって眠ってしまった。
 あたしもお弁当を食べ終わって、スクルトの隣に座って壁に寄りかかると、小川
のせせらぎを聞きながら目を閉じる。
 と、少し経って、スクルトが抱きついてきた。
「や、やだ。ちょっと、何するのよ。」
「ちょっとくらい、いいだろ。」
 スクルトは、あたしに抱きついたまま服の中に手を入れてくる。
「いやっ!」
 あたしはスクルトの手を引き離そうとして、体をひねった。
 一瞬、あたしの胸の所で白い光が走って、同時にバチッ! という音がした。ス
クルトは悲鳴を上げて、あわてて手を引いた。
「判った? 今度変な真似したら、これだけじゃ済まないからね!」
 あたしは、手を押さえているスクルトにそれだけ言い放って、少し離れて座ると、
壁に寄りかかって再び目を閉じた。

 どれくらい眠ったんだろう。スクルトの起こした焚火も完全に消えていたから、
かなり時間が経ってたんだろうと思う。とにかく、あたしは、ちょっと変な音に気
付いて目を覚ました。
 なんか、人の声みたいに聞こえる。うん、間違いなく人の声だわ。
 こんな暗闇の中を何人かが喋りながら歩いてる。それも、草をかき分けながら。
 そして、その音はこっちに近付いてくるみたい。
 スクルトも気付いて目を覚ました。あたしが起きているのに気付くと、「しっ」
と言って、息をひそめる。
「ほら、やっぱり誰か来てますぜ。」
「だがな、この踏み跡は昨日のものかもしれないんだぞ。」
「いや、間違いありませんって。だいたい、あんな時間にこの森に入ったら、今日
中に抜けられるわけないんですからね。間違いなく、ここにいますぜ。」
「まあな。いなくて元々、いれば楽しめるってことだからな。こうやって探りに来
るのもまた一興ってとこだな。」
「そうですよ。ま、連中にすれば、我々に出会ってしまったのが運の尽きってやつ
ですがね。さて、今度の獲物はどんな奴らですかね。」
 そういう話し声とともに、明りがチラチラと見え始める。
「チッ!」
 スクルトは舌を鳴らすと、緊張して立ち上がった。あたしも思わず立ち上がる。
「やべえぜ。どうやら最悪の連中が来ちまったようだ。」
 スクルトは荷物を持ち上げながら、そう呟いた。
 そのとき、明りが洞の中を照らした。
「お頭。やっぱり、いましたぜ。ほれ、この通り。」
 そして、何人かが洞の入口に集まってくる。
 スクルトは一戦を交えることにしたのか、荷物を降ろして身構えた。
「若いの。無駄な抵抗はよしな。これだけの荒くれを相手に勝てるわけがなかろう。
つまらん怪我をしたくなかったら、素直に有り金と荷物をすべて出すんだ。」
 首領らしい、ちょっと貫禄のありそうな男が入口に立って、凄みを効かせて言う。
 同時に、何人かが入ってきて、スクルトを取り押さえ、荷物を取り上げる。
 スクルトは抵抗しようとしたけど、何度か殴られておとなしくさせられた。
 あたしも腕を後ろで取り押さえられて、身動きができなくなる。
 と、そのうちの一人が、スクルトの体を探って、持っていたお金を全部取り上げ
る。
 そいつはあたしの方にもやってきて、あたしの体を探りだした。
「きゃあ!」
 あたしは思わず悲鳴を上げてしまった。
 だって、そいつったら、いきなり胸を触るんだもん。
「ん?」
 男達の視線が一斉に、あたしの方に注がれる。悲鳴上げたのがかなりまずかった
みたいで、なんか、ちょっとヤバい雰囲気になってしまった。
 首領らしい男が、のそっと近付いてくる。そして、いきなりあたしの帽子を取っ
た。頭の上に束ねておいた髪の毛が支えを失って解け、背中まで落ちてくる。
 と、いきなり顎に手をかけられて、上向かせられた。
「ほう。」
 首領は、あたしの顔をじっと見たあと、急に、あたしの襟元に手をかけた。
 ドキッとする間もなく、いきなり服が引き裂かれる。
 ビリビリッ!
「きゃああ!」
 あたしは思わず目を閉じた。この服の下には下着しか着ていなかったのだ。その
せいか、男達のいやらしい視線を感じる。あたしは、恐らくこの後に行なわれるに
違いない身の毛もよだつような行為を想像して背筋が寒くなった。
「よし、この女は連れていけ。いや、ちょっと待て。なかなかいいものを持ってん
じゃねえか。」
 あたしの胸にはペンダントが下げてある。首領は、このペンダントに目を付けた
らしく、いやらしい笑いを浮かべながら、あたしの胸に手を伸ばしてきた。
 このペンダント、確かに貴金属でできてるし、豪華な細工が施してあるから、か
なり高価な代物であることに間違いはない。でも、あたし以外の人間が下手に触っ
たりすると……。
 しかし、そんなこと、まったく知らない首領は何の躊躇もせずにペンダントに手
をかけた。そして、値踏みするようにじっと見た後、真ん中に付いている玉を撫で
ようとする。
 その瞬間、バシッ! というすごい音がして、一瞬白い光が走り、次の瞬間、首
領の体は洞の外へ吹っ飛ばされていた。
「お頭!」
 何人かの男が、出口に殺到する。出遅れた男達は皆、呆然として出口の方を見て
る。あたしの手を押さえ付けている男も呆然としてるみたい。
 チャンスとばかりに、あたしはそいつの股を狙って足を後ろに蹴り上げた。
「ぐわっ!」
 あたしの蹴りは見事に決って、その男は股を押さえて座り込んだ。
 手が自由になったあたしは、引き裂かれた服を胸の前で合わせて手で押さえなが
らスクルトのそばに寄ろうとした。しかし、それと察した一人があたしの手を掴ん
で押さえつけようとする。
「このアマ!」
「やだっ! 離してよ!」
 あたしは必死で暴れる。そいつはあたしを離すまいとして、あたしの体ごと押さ
えつける。
 後ろから抱きすくめられたあたしは、身動きが取れなくなった。
 あたしの体に廻された腕が胸に伸びて、ペンダントを引きちぎろうとする。とこ
ろが、その男は、なぜ首領が吹っ飛ばされたのか理解していなかったらしく、無造
作にペンダントを握りしめた。
 バシッ!
 再び白い閃光とともに激しい音がして、そいつは悲鳴を上げる間もなく岩壁に叩
きつけられ、あっけなく気絶した。
 ペンダントの真ん中で玉が白く輝き、ペンダント自身を白く染め上げている。
 あたしの全身もわずかに白く光っている。
 男達の表情が呆然から驚愕へと変わっていく。スクルトもおびえたような表情で
あたしを見てる。
 確かに、真っ暗な闇の中で、全身をボーッと白く光らせた人間がいたら、あたし
だって、すごく不気味だろうと思う。でも、今はそんなこと言ってる場合じゃない
のよね。
 あたしは全身に少し力を込めながらスクルトに近付いた。スクルトの手を押さえ
ていた男は、あたしが近付くにつれておびえたような表情になり、スクルトから逃
げ腰で離れていく。
「お頭! 大丈夫ですかい? お頭!」
 何人かが洞の外で輪を作って騒いでいる。と、それをかき分けるように首領が姿
を現わした。

−−− 続く




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