#566/3137 空中分解2
★タイトル (NFJ ) 90/ 8/24 21:47 (124)
赤き不滅の星の民(3) KY
★内容
赤き不滅の星の民(3)
並木きょうすけ
洞窟の中は暗い。それにひんやりしている。入口は広かったが進むにつれて
幅は狭くなり、ついには人がやっと通れるほどになった。天井も手を伸ばせば
届きそうだ。
二十分も歩くと、ちょっとした広間にでた。自然にできた空間であろうか。
その奥に明らかに人工のものと思われる腰の高さくらいの石造りの小さな円柱
があった。カリダールは何も言わずにその円柱をまわし始めた。すると鈍い音
とともに広間の側壁が観音開きに開いていくではないか。
「すごいわ」
ヨーコが思わず感嘆したのは岩の扉のことではない。扉の向こう側から白い
光が差し込んできたのだ。その光に照らされて神殿があった。
目が明るさに慣れるにつれて神殿の輪郭が浮かびあがってきた。奥行きは十
五メートルほどで高さは十メートルほどか。左右各々六本ずつの白い円柱がや
はり純白の平らな屋根を支えている。神殿の奥にはメタウとプタウであろうか
柔和な笑みをたたえた二人の娘の像が立っていた。きのう森の人の集落で見た
像とは段違いに美しい。
私たちカリダールを残して引き込まれるように中へ入っていった。
その時、突然鈍い音とともに岩の扉が閉りだしたのだ。カリダールが向こう
側で何か叫んでいるが扉はあっというまに閉じてしまった。
天井からの白い光に照らされているからか、さすがのヨーコも顔色がない。
「私たち、閉じこめられたってわけね」
私はやっとのことでそれだけ言った。
「そうらしいわね」
「扉を開ける装置はこちら側にはないのかしら」
「へえ、アキナって案外頭いいのね。みんなで手分けして捜しましょう」
すぐにそれは見つかった。神殿の中、右側の列の手前から三番目の石柱の陰
に先ほどカリダールがまわしたのとそっくりな石造りの小さな円柱があったの
だ。
「いいわね、アキナ」
私はヨーコといっしょにその石の円柱をまわした。
一瞬の沈黙の後、鈍い音がしたが岩の扉には変化がない。
「おかしいわね」
「お嬢様、この神殿は下降しています」
ケンタローに言われて気づいた時には遅かった。神殿はまるで舞台で使われ
るセリのように降りていったのだ。
あわてて円柱を元の方向にまわそうとしたが今度は全然動かない。何てこと
なの。
私たちは上の方を見上げるだけでなすすべがなかった。
五分ほどで三人をのせた神殿は下降をやめた。もう見上げても薄明りがさして
いるだけで何も見えない。
一瞬の間をおいて神殿に面した岩の壁が前と同じように開いた。
「どうするヨーコ」
「こうなったら、とことん行くっきゃないでしょう。兄貴たちもきっと向こ
うにいるわ」
岩の扉を抜けると左右に長く続く通路へでた。もちろん人工的に岩をくり抜
いたものだ。とても暗い。ヘルメットのライトだけが頼りだ。
「右の方から何か音楽のようなものが聞こえてきます」
もちろん私やヨーコには聞こえない。ケンタローだけの特技だ。
「あなたもやっと役にたったわね」
私の嫌みに奮起したのか今度はケンタローが先頭で歩きだした。こうなった
ら私たちだけでは心細い。トシオさんたちと合流すればなんとかなるかも。
五分も歩いただろうか。通路は次第に広くなり広間のような感じになってき
た。
その時、斜め上からブーンという羽音とともに何かが私の顔に向かって飛ん
できた。
「アキナ、危ない」
私はあやうく首をひっこめた。しかし、それは執拗に私の顔を狙ってくる。
小鳥くらいの大きさなのだが、まるで蜂のようにしつこい。それに動きもすば
やいので、私は首を振り振り右へ左へと逃げ回るはめになってしまった。
「ケンタローなんとかしなさい」
どうやらヨーコも同じ目にあっているみたい。ヨーコが逃げ回る格好を一度
見てみたいものね。でも今は自分のことで精一杯なのが残念。
「ケンタロー、早く」
ヨーコの声は必死だ。
「レイガンよ」
私は言うがはやいかホルスターからレイガンを抜取りねらいをつけようとし
た。しかし、相手は速いしヘルメットのランプだけが頼りではとても狙いなん
かつけられない。二、三発打ったが当たりそうにもない。逆に腰につけていた
ザイルをまっぷたつに切られてしまった。
ヨーコと私は子供の頃、学童レスリングで鍛えた仲だが、さすがに疲れてき
た。
「アキナ、走ろう」
「オーケー」
私たちは一目散に走りだした。めざすは広間の出口だ。やっと着いた。さら
に通路が続いている。
私たち二人はその通路に飛び込んだ。
「やったね」
ヨーコが言い終わらないうちに、私の頭上五センチくらいのところをするど
い黄色のビームが通過して反対側の壁を溶かして十センチくらいの穴を作った。
「きゃ、助けて」
言ったのはヨーコ。私は横向きに倒れ込みながらすばやくレイガンをかまえ
た。
今度はヨーコの右横をビームが駆け抜ける。要するにこれはレイガンと同じ
だ。ビームは天井のある1点からでているようだ。私は光線の出どころと当り
をつけた場所にレイガンを五、六発立て続けにお見舞いしてやった。
「きゃ、助けて」
今度は私。だってヨーコが私に向かってレイガンを発射するんだもの。
振り返るとさっきの蜂ロボットの残骸が通路に落ちていた。
安心するのはまだ早い。残りの蜂ロボットがこっちに向かってやってくる。
「アキナ、速く」
わかっているわよ。命令するひまがあるんだったらもう一匹仕とめたらどう
なのよ。
私たちはもう一度走った。しかしその通路は五十メートルほどで行き止まり
になっていた。
絶体絶命じゃない。
恐る恐る振り返るとケンタローがキャタピラの音をさせながらゆっくりと近
づいてきた。蜂ロボットは広間の中ほどに置いてある発煙筒のまわりをまわっ
ている。どうりで煙たいはずだ。
「音楽じゃなくて羽音じゃない。どういう耳をしているのよ」
ヨーコが口を尖らせた。
「お嬢様、やつらは急に襲ってきたのです。それまで羽音なんか全然しませ
んでした。あの広間に入ってくる生命体を赤外線で探知して攻撃するようにプ
ログラムされているのでしょう。発煙筒を投げこんだのでしばらくは大丈夫で
しょう」
「でも行き止まりよ、ここは」
「扉があるはずです。音楽はその向こう側から洩れてくるようです」
そんなにいつもうまく行くかしら。
私が半信半疑で岩を押してみると簡単にその岩は半回転して通路ができた。
「何か間違っているわよ」
私の声を無視してヨーコとケンタローはさっさと向こう側へ行ってしまう。
いつもこうなんだから。
(続く)
ェユケアトs;
赤き不滅の星の民(3)
並木きょうすけ