#527/3137 空中分解2
★タイトル (AVJ ) 90/ 7/21 6:23 ( 52)
「法律」 浮雲
★内容
1
「日本国民は動物の肉を食べてはならない」という法律が参議院で可決・成立
し、来年4月から施行されることが決まった。さて、誰が一番困っただろうか。
それは肉屋でもなければレストランでもない。マクドナルドでもないしハンバ
−グの大好きな子どもたちでもない。
それは、この私だ。私こそ一番の被害者と言ってよい。私の食事から肉を取っ
たら、後に何が残るというのか。
もちろん、昔は魚肉ハムを食べたこともあるし、野菜だって結構行ける方だ。
私だって栄養のバランスぐらい考えているし、ダイエットにも気をつかっている。
だが、この健康な身体を維持していくためには肉が欠かせないのだ。何よりも
「健全な身体に健全な精神宿る」と言うではないか。
肌のツヤがいいと褒められるのも、歳の割に頭もしっかりしていると羨ましが
られるのも、みんな肉を食べているからこそなのだ。
あの歯ごたえ、肉に優る食べ物などこの世に一つとしてない。長い間生きてき
た私が言うのだからウソはない。
2
「動物の肉を食べてはならない」という法律を犯した者は、懲役5年以下の実
刑に処せられる。もちろん、売ったり買ったりしてもいけない。この場合は、も
っと罪が重く5年以上10年以下の懲役となる。
「チクショ−」
誰だ! こんな非人道的な法律を考え出した奴は。いまさら、「動物愛護」で
もあるまい。何か、裏があるに違いない。困る人間が大勢いるということは、そ
の反対に喜ぶ奴らが結構いる、ということになる。
いや、まてよ。うむ、きっと何か大儲けの企みが隠されているに違いない。大
体、保守党が賛成に回ったなどというのが、信じられない。
ははぁ、だいぶ見えてきたぞ。
3
「太郎ぉ・・・、太郎ったら、なんべん呼んだら分かるの。さぁおいで。お食事
よ」
おっと、声がかかった。こうしちゃいられねえや。
・・・
「ほら、お食べ。どう、きょう発売になった新しいドック・フ−ドよ。牛のもも
肉をベ−スに120種もの栄養・ビタミンがバランス良く配合されているって」
ん? どうでも良いんだ、私には。何しろ美味しければ。うむ、こりゃぁいけ
る。しかし、こんな旨いものもあと何ケ月食べられることやら。
「チクショ−」
・・・
「でもいいわねえ、あなたたち犬は。法律も何も関係ないんだから。さあ、私た
ちの分まで食べて長生きしてちょうだい」
・・・
「ワン」
「ああ、夢かぁ」
俊樹はいつの間にかソファにもたれたまま、うたた寝をしていたらしい。
「なんだあの夢は・・・」
その時だった。来客を告げられたのは。
「総理、農林大臣がおみえです」
おしまい