AWC 謎解きショート・五円硬貨     永山


        
#1781/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (JYC     )  89/ 8/21  12:38  ( 89)
謎解きショート・五円硬貨     永山
★内容
 その頃、世の中には変な犯罪が蔓延しておりました。異常な事件が続発し、
異常が「通常」になっていました。それらの中にあっては、これから書き記す
事件は、まだ「異常」な方でしたね。

 「ふん、全く、つまらん事件ばかりだ。」
彼が言った。私が聞き返す。
 「どうして?少なくとも、かつてよりは、変わった事件が増えて、君のよう
な名探偵が活躍し易い状況になっているじゃないか。」
 「こんな事件では、ダメなんよ。変わった事件なら何でもいいという訳じゃ
ないんだ。推理小説的な事件じゃないといけないんだよ。警察が解けない事件
を、我々アマチュア探偵が解く。ここにこそ、探偵としての楽しみ、醍醐味、
生きててよかった的な意義があるんじゃないかね。」
 「そりゃそうかも知れないが、どうにもならないよ。自分から、事件を起こ
したり、注文したりする訳にも行かないし。あ、いや、待てよ・・・。」
驕@「どうしたんだね。」
 「一つ、魅力的な事件を聞いていたんだ。小説のネタを探しに、警察に取材
に行ったんだ。その時、聞いたもので、君にぴったりだ、きっと。」
驕@「ちょっと待った。 それは、まだ解決していないんだろうね?」
 「もちろん。半年ほど前に、捜査はストップしてしまったらしい。」
 「なら、結構。話してくれ。」
そうして、私は話始めた・・・。

 いや、説明するってほどのものじゃないんだ。事件そのものは、実に簡単、
髓P純明快なのだ。新聞にも出ていたのだが、他に俗世間受けする事件が勃発し
過ぎて、続報がなかったんだ。ある古物商の店主が殺されたんだ。現場は調べ
尽くされたが、遺留品らしき物は見つからなかった。ただ一つの物を除いてね。
現場である被害者の書斎の隅に、五円玉が一つ、落ちていたんだ。え?それは
害者の物じゃないのかって?いや、まず、犯人の物に間違いないんだ。その古
髟ィ商は、五円玉を集めるのを趣味の一つにしていたんだ、ご縁がありますよう
にとね。その五円玉は、すべて旧字体の物なのだよ。1958年までの五円とそれ
以後の物とは、違うという事は知っているだろう?それで、現場に落ちていた
五円玉は、新字体の方だった。これで、犯人の遺留品と決まったんだ。先程、
迷宮入りしかけているみたいなことを言ったけど、容疑者の目星はすぐについ
たんだ。事件発生(発見)当日の内に、現場近くをうろついていた者で、怪し
いのが一人、見つかったのだ。近くで拳法道場を開いている老人なのだが、古
物にも興味があってね。色々と、被害者の店で購入していたようだ。ところが、
紛い物を掴まされ、烈火のごとく怒った。信用して、書類等はいっさい残さな
くなっていたので、証拠もない。で、恨みがあったらしいんだ。だが、その老
人を身体検査しても、凶器らしき物は、身につけていなかった。大量の小銭は
持っていたが。あ、言い忘れていたが、被害者は、棍棒状の物で撲殺されてい
たんだ。時間的に、老人が自宅に凶器を持ち帰るヒマはない。どこかに捨てた
のでは、と言うことで、路上なんかも捜索されたが、見つからなかった。被害
者の自宅にも、凶器に使われたような物はなかった。そりゃ、鈍器ならいくら
でもあったが、ルミノール反応が出なかったから、凶器でないのは明らかだっ
た・・・。

 「どうだい?この事件の真犯人が分かるかい?」
 「簡単じゃないか。その老人だよ、犯人は。」
 「え?それなら、凶器はどこに?」
 「君の目は節穴かね。目の前にあるのにねえ。」


−−−さて、凶器はいったい何で、どう処分したのでしょうか?もし、分から
   なかった人は読み進む前に、少し考えてみてください。−−−


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(真面目な話、感想がどんどん減ってますね。座布団賞が衰退しない内に、改
 善?案を。いちいち、ちゃんとした感想を書くのは、大変ですから、ここら
 で、単なる投票制にしてはどうでしょう。一人につき、三票分権利があって、
  その月の末日に投票を開始して、一週間で締め切るとか。三票は、どの様に
 割り振っても構わないし、無理に投票しなくてもいいことにして。但し、自
 作には投じないということにして。)

<解答>
 「いったい、凶器は何だい?」
驕@「老人は、拳法道場を開いてるんだろう?きっと、ヌンチャクも使えよう。
老人は、五円硬貨や五十円硬貨のような穴の開いた硬貨を、一本の紐に通して、
特製ヌンチャクを作ったのだ。それで、古物商を殴り殺した・・・。現場に落
ちていた五円硬貨は、凶器を分解している最中にうっかり、落としてしまった
んだろうよ。老人が犯行後も現場近くをうろついていたのは、恐らく、自分が
凶器を持っていないことを示したかったからだ。」
 「なるほど。早速、警察に知らせてこよう。」
私はそう言って、外へ飛び出した。だが、警察には行かなかった。何故って、
この事件はつくり物なのだ。彼を楽しませてやろうと、私が必死になって考え
た事件なのだ。それだと言うのに、あいつ、こうも簡単に解いてしまって・・
・。しょうがない、また、考えるか。

−終わり−




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