AWC わいでも首相になれる クエスト


        
#1575/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (AWC     )  89/ 5/27   1:46  (124)
わいでも首相になれる クエスト
★内容
 チャッチャララーーチャチャチャチャーーーー
「やた!」
 ついに待ちに待ったフィーバーである。2万円も注ぎ込んで地すべり的
大敗目前だっただけにこいつは嬉しい。
 俺は勢いよくランプのスイッチを入れて店員にトロ箱を貰うとゆっくりと
タバコの火をつけた。
「九重さんですね」パチンコ店の凄まじい騒音をかき分けて誰かが俺に怒鳴
るように言った。
「えっ?」振り向くとびしっとしたスーツの男が二人いた。
「ちょっとよろしいですか」
「なんや、モルモン教か、今忙しいんや」
「ちっ、違います。私達はこういう者です」
「け、警察!?、私なんにもしてません!人違いです!」
「よく見てください、そうじゃないんです」
「内閣官房調査.....?どういうことですか、あ!フィーバーが切れた!
ほんまにもう!弁償してくださいよ。あんたらが邪魔するさかい...」
「どうもすいません。でも緊急の用でしたので。実は九重さん、あなたが
次期首相に選ばれたのです」
「えーーーーーー!」

 1989年にリクルート汚染が蔓延し、時の首相竹下氏は退陣を余儀なく
された。そして汚染の心配のない人物を次に選ぼうとした。
 しかし、その試みはことごとく失敗してしまった。なんらかの形で汚染
されていない政治家などいなかったのである。
 そのうち首相のポストはとんでもない貧乏クジであるという認識が広がり、
だれもが話をもちかけられると飛んで逃げるようになってしまった。
 しかたなく政治家だけでなく広く財界だとか学会からも人材を物色したが
やはり引き受けるお人好しはいなかった。
 そのため竹下政権は異例の長期政権となってしまった。任期が終っても
誰も代ってくれないのである。しかしこのままでは一生首相を勤めねばなら
ないし、仮にXデイとなっても息子にでも首相の職を継がせる、世襲としな
ければならないのではないか、これでは象徴である、それはまずい。
 このような焦りが竹下首相及び側近を衝き動かした。そして結局次期首相
は選挙権のある国民からくじ引きで当てることとなったのであった。
 さっそく法律が改正されマスコミを通じてそのことが知らされると、
国民は我先にと様々な犯罪、病気そのほか首相としての欠格事項をマスター
すべく必死で取り組んだのであった。
 なぜなら、首相となって末代まで恥をさらすことを思えば少々罪を犯す
などは全然たいしたことがなかったからである。
 それで、結局、そういう目はしの利かない人間、何にも考えていない人間
が必然的に首相として当てられることになった...

「ちょっと、それだけは御免や、堪忍してーな、大体私が首相になってどな
いするんですか、私の特技いうたらパチンコだけや、それも結局負けること
が多いんや、貿易赤字....」
「いやいや、大丈夫です。はっきり言ってそういう人畜無害な人になって
貰った方がいいんです。できる人はついうまいことやってしまう、結局ス
キャンダル、もーいやそんな人のおもりは!九重さん、あなた、なって貰い
ますよ。欠格事項なし、あなたはもう逃げられません!」

 俺を無理やり乗せた公用車は猛スピードで高速道路を飛ばし、あっと言う
間に東京に着くと首相官邸に滑べり込んだ。まるで折角貧乏クジを引かした
人間を逃してなるものかといった具合である。
 ガチャ
 首相私室とかいう部屋に俺はほうり込まれ、鍵がかけられてしまった。
窓には格子がはまっている。呈のいい独房である。
 俺は仕方なく隅にあったテレビをつけた。
「パチンコの理論で国を動かせるやろか...」俺はぼんやりとそんなことを
考えていた。NC9の時間のよううだ。
「今日、おめでたく首相に選ばれました大阪の九重素人さんは、外出先の
パチンコホールロンドンでフィバーに夢中になっている所を発見され、つい
先程東京へ拉致され、失礼しました、到着し首相官邸入りしました」
 女性のニュースキャスターがにこにこしながら話している。
「それでは現首相の秋山さんにインタビューしてみました。どうぞ」
「歯歯歯、逃しません!首相交替まで東京は戒厳令です!歯歯歯」
「それでは学識経験者に聞いてみましょう。大型大学文学部教授のいんば
さんです、どうぞ」
「たぬきの皆勤賞とでも言いますか、やはり熊に襲われた時には担架に寝
ながら走って逃げるというこういった手腕をですね、次期首相には期待
したいと....」
 俺は頭が痛くなってきた。
「ということのようですっぱだかの田村正和....失礼しました、とにかく
これで日本も安心だ、そういう声が全国に満ち溢れています。おめでとう
ございます」
「なめとんかい」
 俺は頭にきてスイッチを切るとベッドに横になった。わけのわからない
ままに睡魔が襲ってきた。

「首相、おはようございます」
「ああ」どうもまともに挨拶されたりするのが久しぶりなので言葉が出ない。
それにまだ朝の7時である。こんなことになる前は風来坊の俺は昼まで寝る
という幸せな生活を送っていたのだが...
「就任されてからもう1ヶ月、いよいよ来週から米国訪問でございますね、
首相」
「ひえーー、そんなーーーー、僕嫌だーーーー、行きたくなーーーい」
「おやおや、わがまま言っちゃだめよーーーー、九重君、ほーーーら
朝ご飯なしよーーー」
 俺の秘書官は東大卒の保育所上がりというとんでもないキャリアを持った
女である。
「プッシュ大統領って押しが強いんだってねー。僕、馬鹿にされそう...」
「あーーーら、そんなことないわよーーー、九重君。私がついてるしぃ、
それに優秀な官僚がスタッフで随行するしぃ、大丈夫よーーーん」
「そうだったね、連中ホメホメ隊とか言って、僕をよいしょしてくれるん
だってね。前の首相が作ったってねーーー」
「そうですわ、たとえ首相がどーーーーーんなに馬鹿にされようと、それは
国民の楽しみ、いえ、日本の経済力と官僚がカバーしますわ」
「そうかなー、わかった。それじゃ」
「どうしました?首相」
「うんこ」

 とうとうアメリカへ来てしまった。まったく以前観光旅行でふらふらした
ことはあるものの、日本国を代表してシビアな交渉をしにくるというのは
たまらん、助けて、僕いやだの世界である。
「やっぱり帰る...」
 ホワイトハウスで大統領を待ちながら俺は秘書官に言った。
「あーーら、だめよーーー、すぐ終るからねーーー、はい、いい子にしよう
ねーーー、終ったらお姉さんが遊んであげるからねーーー」
 実は俺とこの秘書官はいい仲になっていたのである。四六時中一緒にいれ
ばそうなるのは当然である。少々馬鹿にされているようにも思えるが...
「大統領がこられましたぁーーーー」
 ドアが開くとプッシュ大統領が現れた。
「ヘーーーーイ、ミスターQ、待たせたなーーーー」
 何とプッシュ大統領は派手な原色のシャツをルーズにはおり、ヘッドホン
でガンガンにロックをかけながら身をくねらせて近付いてきた。
「こ、こりゃ....」
「そうよ、この人もくじで選ばれたの。そういう時代なのよねーーーー。
よかったわね、九重君、いいお友達ができて...それじゃお姉さんはあっち
でお仕事してるからねーーー、仲よくするのよーーー」
 というわけで俺達は大統領執務室で大人しく遊び、日米の関係はますます
強化されたのであった。

                 FIN.

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