AWC お題>「傘」 クエスト


        
#1537/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (AWC     )  89/ 4/18  22:21  ( 59)
お題>「傘」 クエスト
★内容
 九重素人がアージ星で勤務することになったのは他でもない、
宇宙開発庁での堅苦しい勤務に馴染めず酒と女とギャンブルの日々に
あけくれたためであった。
 アージ星は最近宇宙でも有数のリゾート開発地として脚光を浴びつつ
あるが、なんのことはない素人が行ってみると宇宙空港も小さく、道は
狭い、交通マナーは悪い、カがやたら多い、飲みやは安でのスタンドば
かり、パチンコはさっぱりもうからんといった所であった。
 しかも職場ではなにやら様々な対立が渦巻き冷やかな空気が漂っている。
現場を仕切っているのはアージ星現地採用からたたき上げた主任開発官で
あるが、これが素人の上司であり地球から単身赴任している支局長とすこ
ぶる仲が悪く、素人もその煽りを食ったのか主任及びその部下とはハナから
対立的状況に追い込まれてしまった。
 しかし、現場のことを良く知っている彼らと無暗に争うのは職務の遂行上
望ましくなく、少々のことは腹に収めねばならなかった。

「どっしゃーーーーーー」
 仕事から帰った素人はベッドに仰向けになるとため息をついた。今日も
連中から冷たくあしらわれ意気がそがれたのであった。
 しかも腹立ち紛れについ寄ってしまったパチンコで4400ギルダもすって
しまったのである。
 赴任にともなう引越し代も馬鹿にならず、素人は経済的にも逼迫していた。
息抜きの一つであるパソコン宇宙通信でもAPのあるトーシマ星までの通信
費を気にしてOFFLINEで処理する始末。

 素人はしばらく死んだようにベッドに横たわっていたが、やがて起き上が
るとまだろくに片付いていない荷物のなかから何か取り出した。
 それは一本の傘であった。
 女性用のそれは素人が無頼な生活を送る中、唯一心を許したミーナのもの
であった。ミーナは裕福な商人の娘で宇宙開発庁にアルバイトにきていたの
であるが、時がたつ内に素人と仲良くなったのである。
 ミーナは気まぐれでわがままなところもあったが明るく美しく輝いていた。
傘はそのミーナが素人のマンションを訪れた時忘れて行ったものである。
 パソコン宇宙通信をして見せると目を輝かせて面白がったミーナ。
素人が意を決して抱き締めようとする前にあっさり帰ってしまったミーナ。
(アホちゃうか)
 素人はそんなミーナのことを思い浮かべながらしばらく傘を見つめていた。

「これなんやー、よーわからんなー」
「え?傘、それなに?」
「へー、地球では水が空から降るん?」
「それでこれで濡れるのを防ぐんでっかー。おもろいなー」
「それにしても素朴というか、原始的やね。地球人、よーこんなもんつこと
るねー」
「え?私にくれる?いやー、悪いはそれは、いやそうかーすんませんねー」
 素人がプレゼントした傘を中心にアージ人の輪ができていた。
アージ星では雨が降らない。傘を見るのは彼らには初めてであった。
 素人はアージ人の笑顔を見ながら心の中でミーナに語りかけた。
「ミーナ、君の忘れ物のせいでちょっと助かったよ。これで君をアージ星に
呼べるような気がするよ」

 その夜素人は勇んでパソコン宇宙通信でミーナを呼び出した。
ディスプレイにミーナからの送信が写し出された。
「やーい、左遷左遷、島流しぃーーーー」
「いやーーーー、ミーナちゃん、そんなこといわんと僕とセックスしよーー」
「ずえったーーーーいにいや!ガチャ」

 まだまだ救いからは遠い素人であった。

                      完




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