AWC お題>傘  / Tink


        
#1528/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (DRH     )  89/ 4/ 9   2: 1  ( 94)
お題>傘  / Tink
★内容

 パラパラパラパラ....。
 空から小粒の雨が降ってきた。
 あたしはそんな雨たちを、恨めしく思いながら、駅へと足を急いだ。
 傘....、大体傘を持ってきてたら問題は、なかったのよね。
 でも、朝見た天気予報では、降水確率10%くらいだから、大丈夫だと思っていた
のに!、もう!、だから天気予報って、いまいち信用できないのよね!
 大体、雨が降ると分かってたら、なにもこんなとこまで本を買いに来ることも無か
ったのに....。
 まあ、なってしまったものは仕方が無い!、雨足が強まるようならどっかで雨宿り
すればいいのよね?
 でも、こんなとき、ヒールってこまるのよね、まあ、今日は低いパンプスだから、
まだましなんだけど。
 そんなことをぼんやりと考えながら歩いていると、いよいよ、本格的に降り始めた
ようだ。
 あちゃー、もー、どうしよ?、適当にお店でも入って、時間つぶそうかな?、本も
濡れそうだし....。
 キョロキョロ
 あたしは、周りになにかお店が無いか、探した。
 すると、小さな、あまり目立たないような所に、『傘、あります』と言う看板を見
つけた。
 しかたがないので、あたしは傘を買おうか....と思い、看板の影になっているドア
をガラガラガラと、あけると中へと入って行った。
「いらっしゃいませ」
 中にはもう、80をとっくに超えているような、老婆が座っていた。
「あの....、傘、ありますか?」
 すると、一瞬老婆の顔がくしゃっと、多分笑ったのかな?、のように見えたのは、
あたしの目の錯覚だろうか?
「おお....傘かえ?、ほれ、そこにたぁんとあるでな....」
 老婆は奥の方の傘縦のようなものを指さしている。
 なるほど、その傘立てには大小さまざま....小さいものは手のひらサイズから、大
きな物になると、それこそあたしの身長くらいはあるんではないだろうか?と、思う
位の傘が並べられていた。
 しかし、小さな傘はアクセサリーとして、つかえるから良いとして、大きな傘なん
か、どうすれば良いのだろうか?、思わず悩んでしまう....。
 あたしはとにかく、小さな、それこそ飾り物みたいな傘をてにした。
「わっ、可愛い!」
 その傘は、白とブルーの水玉で、かなり精巧に作られていた。
 こんな物を作れる人がいるのだろうか?
 あたしは、とにかく飾り物でなく、今すぐつかえる傘が欲しいのを思い出して、惜
しみながらもその小さな傘を置こうとした....、が、傘はまるで接着剤で手の平にく
っつけたように離れない。
「な....何?」
 すると、老婆は顔をくしゃくしゃにして、笑い、ゆっくりと、傘の呪いのことを話
した。
「その傘はじゃな、呪われておって、手にしたものの精気を吸い取り、大きくなって
いくのじゃ....そして、ある一定の大きさになると、傘たちは小さな傘に分裂するの
じゃ....」
 え....?、そんな....。
 確かに手の中にある傘は、だんだんと大きくなってきてる見たい。
 逆に、あたしの傘を持っている....右手はだんだんと青ざめて、つめてくなってき
ていた。
「なに....そんなに時間はかからんじゃろ....ほんの5分もあらば、おぬしの身
精気はなくなり、しんでしまうじゃろうて....」
「そんな....」
 死ぬ....?、このあたしが?、嘘....!、何故?
 そんな考えがあたまの中をぐるぐるとまわり出す。
 目が霞む....力が入らない....本当にしんじゃうのかな....?、あたし。
 段々と目がかすんで行き....意識が遠退いて行く。
 そんな時にドアの隙間から差し込む虹のようにな物をみたような気がした。
 そして、あたしは気を失ってしまった....。

          ☆

 誰かがあたしを呼んでいる。
 誰....?、懐かしい声....。
 ゆっくりと闇の中を流されていく、しかし、不思議と恐怖感は無い。
 そして、目の前に小さな光の点が見えたかと思うと、その点は急速に大きくなって、
あたしの身体を包んだ「「。
「....美....博美!」
 おかあさん?、どうして....?
「ん....?、ここは?」
「良かった!、気がついたのね!」
 ここは....自分の家では無いみたいね....たぶん病院の病室....?
「良かったって、何が....?」
 おかあさんは、年甲斐もなく、瞳に涙をためながら、あたしを見ている。
「あなた、5日前に道で倒れているのを発見されてから、ずっと気を失ったままだっ
たのよ....でも、良かった」
 5日間も気を失って立って....?、そういえば、あの傘屋、一体何だったのだろう
か....?
 それより、あの傘はなんだったのだろうか?、あたしは元気になってから、また、
あの傘屋を見に行こうと思った....。


★後日談

 あたしは、もう一度、あの場所にいってみたのだが、あるのは狭い空き地だけ....
 空き地には、傘の骨組みがばらばらになって散っているのが見える。
 もし、すべてのものに、魂があるとするのならば、傘にも魂があるのなら、あれは、
本当に傘の呪い....傘の怨念だったのかも知れない。
 そう、物を粗末にしていると、いつかあなたにも、なにかの呪いがかかるかもしれ
ませんよ。

                                    Fin




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