#1492/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (NQC ) 89/ 3/21 18:12 ( 47)
中型倒錯小説 渇きの海(6)【刑】・・・・・・・・天津飯
★内容
「ギルティ」裁判長の乾いた合成声がして判決はくだされた
トラジディのマザコン ENIACの告発により
私は宇宙航行中の近親相姦の罪により倫理法廷にかけられた
倫理法廷の裁判長が私に与えた罰は1万年落下の刑だった
驚いたことに地球に帰還してみると司法はすべてコンピューターに委ねられていた
彼等の中には法律は勿論のこと判例や人間による裁判によって引き起こされた
誤審の数々がDATAとしてインプットされ 罪刑は数量化されていた
自分達だけは誤謬を犯さないと信じて疑うことを知らない冷たい怪物め
やめてくれ コンピューターに人間の何が分かるというのだ
コンピューターが知っているのはDATAだけだ
DATA、DATA、DATA・・・ DATAで肥大したシリコンの化物め
絶対零度の暗黒に浮かび何十年と旅をする
人間の気持ちが おまえら機械に分かるというのか
どんな間抜けでもいいから せめて人間が裁いてくれ
少しでも孤独の痛みを知るものが裁いてくれ
その上で有罪というなら しかたがない いかなる刑罰といえども私は従う
だが コンピューターに裁かれるのだけはいやだ やめてくれ
いくら叫んだところで無駄だった
判決が下されると 早速 刑吏ロボットは処刑に取り掛かり
私を裁判所の屋上に連れていった
林立する高層ビルの間は深く刻まれた谷のようになっていた
覗きこんだ私の目に地上は遥かかなたに ひとつの点になって消えていた
その地上に落ちてゆくまで私は1万年落ち続けなければならないのだ
刑吏ロボットは無造作に私の両腋に手を入れると
まるで月曜と木曜に出す生ゴミのポリバケツを捨てるように
屋上から私を放りだした
それから私は落ち続けた 昼と夜が幾度 繰り返されたのだろう
建物の窓に沿って落ち続ける私は
落ちながら建物の窓の中を観察するようになった
朝になると現れ夕闇が迫る頃 居なくなる窓の中の人々
不思議な事に どの窓にも同じ女が居た どこかで見た女だ
次第に落下の感覚はマヒしてしまい
窓の中の世界は映像のように目に映った
時々その女が窓越しに私を見た 女は悲しげな目で私を見ていた
すぐに餓死が訪れ たちまち腐敗し白骨となり
バラバラに砕かれ 風化し粉になり 風になった
それでも私の意識だけは いつまでも 女を追っていた
女は齢をとることがなかった
1万年が経過して ようやく地上への落下が果たされる日がやってきた
やがて私の落ちていく所に何か小さい四角いものが見えてきた
近ずいてみると それはベッドだった
見覚えのあるトラジディの船室にあったベッドだ
ベッドに落ちた瞬間 私は目覚めた
これが最初に見た悪夢だった
つづく
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