#1489/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (DGJ ) 89/ 3/17 8:22 (101)
『闇の迷宮』 −05− Fon.
★内容
by 尉崎 翻
「一口にトラップといっても多種多用。人の数だけ種類はあるんだ」
先程の扉の前。
ダグが扉の前でしゃがみ込み再び作業に入っている。
この扉。どうやら何重ものトラップが仕組まれているらしい。
「それをより安全に解除する...と、口で言うのは簡単だが実際にやるってのは
相当のテクニックがいるんだぜ」
いかにも自分はスゴイ事をやっているんだというような口調でふんぞりかえる。
「ダグ、能書きはいい。はやく解除しろ」
リクトが、たまりかねたようにせかす。
いつの間にかどこからともなく出した煙草を口にくわえていた。
「レナ、火をくれ」
「いつも言ってるけどねぇ、わたしは火打ち石じゃないわよ」
と、いいつつも人さし指をたててリクトに向ける。
ソラ豆位の火球が指先から飛び出しリクトの煙草の先端に命中、ボワッと発火す
る。同時にリクトはスゥーっと息を吸い込み、うまそうにフゥーっと煙を吹いた。
「おい、リクト。人が懸命になってトラップを解除してる横で、よく呑気に煙草な
んぞ吸っていられるなぁ」
ダグが横目でジーッと、後ろを見て軽くにらむ。
「ダグ、そういうセリフは人並みの仕事が出来るようになってからいうものだ」
気取った口調。
煙草の灰をトントンと落として再び口にくわえる。
「あー、そうかい、そうかい」
ダグがつまらなそうに答えて作業を続行した。
ブワーーーッ
扉の所から大きな音が鳴り響いた。
「あれっ?」
ダグが拍子の抜けた声をあげる。
「『あれっ?』、じゃないっ!! ダグ、このブザーまさか」
ティスタがダグに飛びかかった。
「うーむ。どーやら、モンスターを呼び寄せるトラップに引っ掛かったらしい」
ダグが力無くアハハと笑う。と、その前にティスタの右ストレートがダグの左頬
に炸裂するのが先であった。
「みりゃ、わかるわよ」
レナがため息まじりに腕をまくりながら後方をゆびさす。
迷宮の闇の中から、数体の人間型生物がこちらへヒタヒタという足音と供に向か
ってくるのが視界で確認できた。
☆
「今度はちゃんと開くんでしょうねぇ」
足元には数体のモンスターの死体が転がっている。たいした強さではなかった為
にこちらは無傷で退治出来た。
「安心しろ。同じ失敗は二度としないのが俺の主義だ」
ブワーーーッ
ティスタの噛みつきそうな視線がダグを直撃した。
「猿も木から落ちる!」
☆
モンスターの死体から湯気が出ている。
レナが一気に魔法で全滅させたのだ、ギロッとダグをにらむ。
「ダグ。あなた本当に解除しようとしてるんでしょうね」
「あ、あったりまぇじゃんかー、やだなー。まぁ、まっかせなさい」
ダグがおもいっきし明るく振る舞うがそれは場をよけいしらけさせるだけに過ぎ
なかった。
「つべこべ言わずに早くやれっ!」
リクトが剣を突きつける。
ブワーーーッ
「二度あることは三度あるっ!」
☆
「ダァァァァァァァァグゥゥゥゥゥゥゥゥ」
地獄がら聞こえてくるような声が迷宮に響いた。
「わっ!わっ!ティス、待てっ!早まるな目が尋常じゃないぞっ!!」
ダグが悲痛の声を出す。ティスタが切り捨てたモンスターの体液がまだ乾いてい
ないままの長剣を振りかざして、一歩一歩ダグに近付いて行く。
「ティスタ。まぁ、あわてるな」
リクトがティスタの腕を押さえた」
「放してよリクト。このドジを殺さないかぎりあたしらは、ぜーったい外へ出ら
れないんだから!」
「ティスタ。そりゃたしかに...」
リクトがチラッとダグの方を向く。
「こいつはドジでアホで、知識もあんまり持ってなくて、妙なプライドだけもって
いて自分の事しか考えてないやつだがなぁ」
ひと呼吸おく。
「だがなぁ、女好きで、金にうるさく、無能でいいかげんで...やっぱり殺した
「こらこらこら! リクトてめぇ人をおちょくっとんのか!」
「不思議だ。きさまの良い所を言おうと思ったが、一つもみつからん。ま、どーに
せよトラップが外せるのはきさまだけなのだからな。早く解除しないときさまの
身体がモンスターの死体の山へまぎれる事となる」
「わかってるよ。まぁ、今度こそまかせとけって」
ダグは再度扉の前に座り込んだ。いつも持ち歩いているトラップ解除の道具を手
にする。道具を扉の隙間から差し込みゆっくりと動かしながらトラップを解除して
いく。まさに指先の微妙な感覚が生死を握る作業だ。
トラップの仕組みはもう殆ど判っていた、あとは解除の方法を慎重に行なわなけ
ればならない。目を閉じ、全ての感覚を指先へと集める1mmでも指先が震えれば
即刻トラップは発動してしまうのだ。それゆえに、トラップ解除に関してはそれ相
応の訓練を受けた者でなくてはならない。この扉は単純なトラップではない。いく
つかのトラップが微妙にかみあっており、一つのトラップを解除する方向に持って
行くと別のトラップに引っ掛かるように構成されている。ゆえに、その寸前で作業
を止め別のトラップも同時に解除せねばならない。
刻々と時間が過ぎてゆく、ダグの指先がピタッと止まった。
「ふっふっふ。どんなもんだ、解除したぜ」
ダグがスクッと立ちあがり、わっはっはと笑いVサインを出した。
「まー、こーんな ややこしいトラップを解除できるなんて やつはそーざらには
いないよなー」
ウンウンと、自分自信で諾いていたりする。
「あれだけ引っ掛かりゃだれだって解除できるわよ」
レナがだれにともなくつぶやく。
「まぁ、とにかく開いたんだから。いままでのことは無しとして、とにかく先に」
ダグが扉のノブに手をあけた。
ブワーーーッ!
無情なる音が迷宮に鳴り響いた。 (RNS.#1)<つづく>