#1442/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (NQC ) 89/ 2/28 7:30 ( 44)
中型SF小説 渇きの海(2)【事故】・・・・・・・天津飯
★内容
事故はまず貨物室の積荷の漏洩を知らせるランプが点灯し
不気味な警報フザーの断続的な響きによって知らされた
気密服に身を固めたクルーが巨大な船内に網の目のように張り巡らされた
チューブの中を音速で走るカプセルに乗り込み現場に急行した
漏れた積荷は なにか複雑な先端技術の集まりによって保護されていたが
まだまだ未熟だったらしくシステムの一部がパンクしていた
積荷の本体は小さなボンベの集まりで
危険という文字とドクロの絵が書かれただけで内容物の種別の所には
なにも記載されていなかった
幸い故障箇所の修理は成功したが
小さいボンベの内の1本は完全に空になっていた
積荷が何であるかはマザーコンピューターに聞いても
機密事項というばかりで知ることが出来なかった
何か危険な物が船内に漏れ出したことだけは確かだった
超光速で航行する宇宙船は船外と連絡を取ることは不可能だった
乗組員の間に不安が広がってゆき
そうこうするうちに一人また一人と死者が出るようになった
13名の乗員のうち船長を含む11名が死んだ
死因は全て自殺だった 船内は事故から1週間も経たない内に
自殺の見本市のような有様だった
リストカッテイングから始まり 服毒 感電自殺 古典派の首吊り
前衛派は たまたまブラックホールに航路がさしかかったとき
カプセルで投身自殺した
カプセルはブラックホールの強大な潮汐力を受けて
数Kmの一本の針金のように引き伸ばされ闇の中に消えていった
不思議なことに そんな中でメリーだけが まったく平気な様子だった
私は何かめいふくしがたい深い悲しみに捉えられて
発狂寸前の状態だったが
メリーの平気な顔を見ていると多少私の気分も落ち着き
それがメリーを除く乗組員のなかで私が
最後まで生き残れた原因かも知れなかった
とうとう船内に私とメリーの二人だけが残されたとき
深い悲しみの発作に襲われた私は 狂ったようにメリーを襲った
得体の知れない凶暴な力がメリーの身に纏った黒衣を荒々しく引き裂き
まるでムンクの絵に出てくる裸の少女のような細く弱々しい身体を組敷いた
彼女の悲鳴が細く長く続き
やがて我に返ったとき私は宇宙船の自爆装置の4本のボルトを抜いていた
最後の一本に取り掛かったとき 私の背後に立ったメリーが
レザーガンの照準を私の後頭部に当てて静かに引金をひいた
部屋の中に肉の焼ける匂いがして
私の脳は灼かれ昏倒した
つづく
======================================================================