#1437/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (XKG ) 89/ 2/26 1:31 (109)
タキオン通信 2085
★内容
これはあなたのいる現在よりほんの少し未来の事実であるが、
今となっては確かめるすべがない。
世界はまるで何事もなかったかのように平和であるし、
例えば学校でこのことが生徒達に教えられることもないだろう。
私は数少ない元日本人として、やむにやまれぬ気持ちから
決死の覚悟でこの事実を過去、すなわちあなたのいる現在に
送信するものである。(過去への情報の送信は極めて危険なこと
として第1級犯罪にランクされている)
このMSGは通常のものではなく、タキオンビームを媒介として
私のいる未来からPC-VANに送信されている。
1980年代後期より世界中の富が極東の小国日本に集中した。
丁度あなたの生きている現在がそうだろう。
この富はしかし国家の主人公である国民には殆ど行き渡らず、
企業及び金融資本により株式や土地に投資され吸収された。
その結果、東京を中心に土地の価格が急騰した。
だが、現在あなたが生きている時代では日本の社会体制固有の
システムが作り出した恐ろしい事態のほんの前ぶれが見られるだけ
だろう。
富が社会資本、道路、住宅などの整備に向かわず、土地に吸い込
まれてしまい、或は株券に化けてしまうという仕組みに誰かが異を
唱えるべきなのだ、今。
2000年を過ぎて間もなく、日本の地価の総額は全世界の地価
の
半分に達した。
東京、銀座では1平方メートルが数十億円に評価され、地主の中
には
金の延べ棒を土地の上に並べて悦に入る者もいた。
反面、一般勤労者は遥か都心から離れた山岳地帯に居住し、必死
の思い
で通勤するか、都心部の飯場のような安アパートで単身生活するこ
とを
強いられていた。通勤電車はときたま過激派サラリーマンによって
爆破
され、或はささいな喧嘩から始まる暴動によって通勤不能になり、
庶民は
そのフラストレーションを紛らしていた。
さらに10数年が過ぎると、日本の地価総額は全世界の地価と同
等に
なった。日本の社会は少数の土地所有者階級とそれに奉仕するサラ
リー
マン階級に完全に分化し、土地所有者階級の金力をバックにした文
化芸術
の爛熟期となった。
一方では、東京を始め主要都市に政府や自治体により設置された
住宅
難民のためのキャンプが広がっていった。
そしてついに日本の地価は全世界を2回買えるまでに跳ね上がっ
た。
以前から世界のめぼしい土地を既に買い占めていた日本の金融資
本は
ここにきて一挙に世界の土地全てを土地を担保にした資金調達によ
り
買収にかかった。世界中の人々の足元、生活の根幹が日本の所有と
なり、
日本は実質的に世界を支配したかに見えた。
日本政府は世界を管理するために、地形の相似関係により北海道
を
アメリカ管理州とし、札幌をネオニューヨークと改名した。
また、本州はアジア管理州とし、大阪をネオローマ、名古屋をネ
オ
デリー、仙台をネオペキンと改名した。
そして、四国はオーストラリア管理州とし、高知をネオメルボル
刀@
と改名した。九州はアフリカ管理州とし、福岡をネオカイロと改名
した。
各国は日本への忠誠を表すため、そのように設置された日本の各
管理州
における自国と対応する土地に代表部を設置することを義務づけら
れた。
大国はまだいいとしても、小国は住む地域が限定されてしまうの
で
気の毒であった。例えば、イギリス代表部は対馬に設置されたし、
北
イエメン代表部は潮岬に設置された。
これは、まさしく江戸時代の全国支配の方式と瓜二つであり、た
だ
を全世界相手に実行しただけなのであった。日本の社会構造がいか
に
封建時代そのままであったかがこれからもわかることだろう。
こうして、日本の全世界に対する経済支配はかっての徳川幕府の
ように半永久的に続くかと思われた。が....
2050年代の或日、米ソの秘密ホットラインで一つの合意がな
された。
そして数分後、無数の核ミサイルが日本に向けて発射された。
*@中性子爆弾がきれいさっぱり生物を消去し、東京の銀座では持主
を
失った金塊がそれより遥かに価値をもっていた土地の上で虚しく風
に
吹かれていた。
世界の土地の所有者は消滅し、世界は再び自由を取り戻した。
過去に未来の情報を伝え、過去に影響を与えようとすることは、
先に述べたように時空の安定状態を破壊する極めて危険な行為とし
て
許されていない。
しかし、私は敢えてその危険を犯しても未来の哀しむべき事実を
あなたに伝えあわよくば別の未来にあなた方が進んでくれる
ことを祈るものである。
この通信文書は時空工学研究所の厳重な警備をかいくぐってオン
ライン
通信で書かれている。文章の乱れ、文脈のまずさをお許し願いたい。
それでは....うわ!ら。いぇJFヴぁうHVどぺFK.........
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