AWC APPLE COMPLEX 【青き魂の讃歌】(13)コスモパンダ


        
#1400/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (XMF     )  89/ 2/ 4   9: 4  ( 98)
APPLE COMPLEX 【青き魂の讃歌】(13)コスモパンダ
★内容
              (13)下手な戦闘
 カズとノバァが非常階段に出た途端、重機関銃の発射音が聞こえてきた。
「始まった!」
「気にすんじゃないよ。あたし達の捜し物は別なんだから」
「捜すって、どこ捜すんだい?」
「上!」
 言うが早いか、ノバァは屋上に向かった。
 と言っても、ルル・ピークが収容されているのは、病院別館の最上階である。屋上
に行くのは造作もない。
「何だ! お前達は!」
 屋上に上った途端、ノバァとカズは鼻先に銃を突きつけられた。
 それもレーザーライフルである。不可視光の強力なレーザービームを発射できる。
 有効射程距離三千メートル、ビーム先端温度は数万度に達すると言われている。
「答えろ。何者だ」
 その兵士は融通が効きそうなタイプでは無かった。
「あーら、御免なさい。外があんまり騒がしいから、ちょっと様子を見ようと思った
んだけど。お邪魔だったかしら?」
「なっ、なんだと?」
 ノバァが間の抜けた返事をした。銃を突きつけた相手が女性だったことに、その兵
士は少々驚いていた。
「ねえ、兵隊さん。いいでしょ。見たってさ。減るもんじゃなし」
 気がつくと、ノバァはレーザーライフルの銃を構える兵士の肩に擦り寄っていた。
「馬鹿者! さっさと下りろ!」
 ノバァは手だけではなく、足まで相手に絡ませていた。
「あーら、怖い。でも好きよ、男の人の怒った顔。もっとはっきり見せて」
 カズはそれを呆れて見ていた。ノバァは、完全に螺子が一本外れた女性を演じてい
るのだ。
「なっ、何をする」
 ノバァは兵士の首に手を回した。その途端、兵士は糸の切れたマリオネットのよう
に崩れた。
「すげーっ、ノバァの毒気に当たった・・・」
「馬鹿! これよ、これっ」
 ノバァがカズに、指に挟んだ小さなカプセルを見せた。
 それは肌に押しつけると、先端から高圧ガスの力で、内部の薬が皮膚に注入される
カプセルだった。一時的に意識と記憶を失う薬品だ。屋上で寝そべっている兵士は、
意識が戻った時に、ノバァとカズに逢ったことすら、忘れているだろう。
 屋上のその一角には、兵士は一人しかいなかったようだ。
 シェンが車で行動しているのと、十才の子供が屋上から進入して来るとは思ってい
ないのだろう。屋上の警戒は無いに等しかった。
 カズとノバァは、屋上の端に向かって走った。
 地上二十階は、メガストラクチャー(巨大建築物)の多いパシィフィック・クイー
ンにあっては、非常に低い建物だ。病院の建物のため、高層化が許されていないのだ。
 しかし、やはり高いことには変わりない。古い言い回しで申し訳ないが、地上の車
は玩具のミニチュアカーよりも小さく見える。人にいたっては蟻同然だ。
 病院の周囲は、第一級都市管理区域に指定されているため、数百階建ての高層ビル
もなく、見渡しが効く。
 病院の周囲を固めているポリスとアーミーの車両や人員配置が一目で分かる。
 そして、病院の裏手のゲートで、ブルーの車が走り回っていた。
「あれだ! 派手に暴れてる」
 ノバァが指差した。
 ゲート付近のロボット装甲車が、走り回っているツー・シーターの青い車に、威嚇
射撃をしていた。しかし、青い車は警官隊の中を逃げ回るため、ロボット装甲車の発
射する流れ弾を、警官達が浴びていた。
「あ〜あ、ありゃ、可愛そうだ。とんだ、とばっちりじゃないか」とカズ。
「連中、防護服、着てんだろ。危険手当ても貰ってるよ。それに生命保険に、遺族年
金があるしね。殉職でもしたら、長官賞に市民栄誉賞が貰えるんだから」
「いいなあ〜。うちの事務所なんか、なんの手当ても付かない・・・」
「なんか言ったかい、カズ?」
 ノバァの笑顔がカズには不気味だった。
「あっ!」カズが声を上げた。
 ブルーの車が火を噴いていた。ロボット装甲車の弾が燃料にでも引火したのか?
 車体前部のボンネットが、ボンッ! と爆ぜて火を噴いた。
 猛烈な炎を噴きながら、車はクルクルと時計回りに回転した。遠目にしか見えない
が、何人もの警官が弾き飛ばされたり、轢かれたりしているようだ。
「遺族年金を支払う羽目になんなきゃ、いいけど・・・」
 さすがにノバァも声を落としていた。
 二人はシェンを捜すことなど忘れたように、高見の見物と洒落ていた。
 炎に包まれた車は、そのまま、戦闘モービルの方に走って行った。
「あっ、駄目!」
 戦闘モービルの車体後部に白い煙が棚引いた。ミサイルの発射煙だ。
 走り回っていた車が、巨大な槍に射抜かれたように、一瞬停止した。
 そして、物凄い火柱を上げた。
 高さ、十メートルはありそうな火柱が上がり、爆発の煙が膨れ上がっていった。
「馬鹿だね。あんな近距離でミサイルを撃つなんて・・・」
 ノバァが呟いた。
 グワッ・・・・ンンン・・・。
 漸く、その頃になって、爆音が聞こえてきた。
 しかし、それだけではなかった。
 飛び散った車の破片は、近くに停車していたパトカーと、ロボット装甲車を貫いた
のだ。
 再び、さっきの数倍の大きな火の玉が膨れ上がっていった。
 ドガッーーーンンンンン・・・・・・・・・・・・・・・・。
「大変だ」カズが叫んだ。
「ろくに戦闘訓練もできてない連中を掻き集めたって、所詮あんなもんだよ」
 病院の周囲は地上も空も蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。
 路面に直径十メートルの穴が開いた爆発現場に、パトカーがサイレンを鳴らして、
急行しているのが見える。
 空中を飛行していたエアロダインも、まだ炎と黒煙を上げている現場の上空に飛ん
で行った。空から消火弾でも投下するんだろう。
 カズとノバァのいる屋上にも、キィーンというエアロダインの飛行音が次第に大き
くなってきた。
 その音に空を見上げた二人は、一機の大型エアロダインが腹を見せ、降下してくる
のを認めた。
 大型エアロダインは「スカイクレーン」という大型輸送機だった。その腹の下に目
の覚めるようなブルーの六人乗りキャデラックを抱いていた。
 それが、コンピューター・カー「ブルー」と、二人の初めての出会いだった。

−−−−−−−−−−−(TO BE CONTINUED)−−−−−−−−−−




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