AWC 四角い部屋 ひすい岳舟


        
#1399/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (FEC     )  89/ 2/ 2  16:42  ( 79)
四角い部屋                            ひすい岳舟
★内容

  最近の女性は活発的である。いや、本来あったそういったものを取り戻したというべ
きか。数千年に及ぶ亭主関白性社会によって作り出された女性という概念にはめられて
いた彼女らが一気にそれを打ちやぶったかのようだ。しかしながら、現在はそのエネル
ギーをどの方向にもってゆくべきなのか摸索の段階であり、それゆえに悲劇も生まれた。  女性という概念にはめられる以前の年齢は昔にもいた。その最終段階である頃は完成
された体と早熟の魂、どん欲な感性などが同居し、エネルギーに満ち々々ている。不幸
かな、人間体の絶頂期と魂の絶頂期は一致しないのだ。青年期に体はピークに達するが、魂の方は大抵何十年も遅れる。もっともこれでいいのかもしれない。もし絶頂期が同時
にやってきたならば、衰退期を同時に迎えなければならないからだ。
  今でいうと大学生あたりの年齢がそれにあたるであろうか。
  ある山に4人の女子大生が入っていた。彼女らは本格的でもなかったが、決して入門
者程度では無かった。ザックの色や持物からはどちらかといったら素朴な感じさえ受け
た。夏休みを利用してやってきたのだろう。ザックには使い慣れた登山道具が、乙女の
胸のうちには輝ける期待が一杯詰まっていることは確かだった。
  彼女らはその日、山荘に泊まることにした。もう少しいったところには非難小屋があ
りまだ日も天中近かったが、早めに切り上げた。ピークハンターでもなければ、山岳部
のように鍛えようというわけでもなかったからである。ゆっくりと、楽しめればいい。
彼女らの目的はそれだった。行程もさして難しくないようにつくられていたのもそのた
めだった。
  もっとも非常時の為にテントは持ってきてはいたが。
  山荘の周りには少しばかりの土地があり、そこにここの主人がこしらえたのであろう
ベンチとテーブルがおいてあった。女達はそこへまずは腰を下ろした。日差しが強い為
にふつふつと水滴が額に出ているのを拭って、峰から吹き降ろしてくる快い風に歓声を
  山荘からちょっと離れた岩場に柵があり展望台になっているらしかった。それとは反
て小屋に貫いていた。トイレなのだろう、うまく考えて配置してある。そして小屋自体
だが、これは2階建てで大きく見えるが1回部分はほとんど土間であるから対して広く
もないだろう。これらを取り巻くように生き々々とした樹木群があった。
  山荘に行った女が戻ってきた。人がやってくるピークが抜けたので4人で1室借りら
れるという素晴らしい情報を持った彼女は、仲間に歓迎された。再び自分達愛用のザッ
クを背負うと、パーティは山荘へと入っていった。
  あてがわれたのは2階の奥の部屋だった。6畳よりもちょっと広いそこには2方向に
窓があった。ひとつはトイレ方向、ひとつは先程の広場方向だった。彼女らは角に一人
陣取った。ザックがさながら城のようなものである。ある程度荷をばらすと、外で遊ぼ
うという話になり、それは実行された。

  ここの山荘は食事の世話はしない為、1階の土間で自ら作らねばならない。しかし苦
ではなかった。山で人に作って貰う方が特別なことなのだから。それに建物の中で出来
る炊事ほど楽なものはない。彼女達は日がかたむき始める前に引き上げてきて炊事をし
出した。
  鍋をとりまいてつつくのは楽しいものである。ましてや、旅の中である。そして気が
知れた仲間達。最高のシチュエーションの中でメニューは最高級品へと変化する。そし
て快い疲労感を持っている体を、楽しい話題と共に治癒するのである。
  登山の楽しみのひとつである食事を終えて部屋に引き上げる。寝袋を敷く為に荷をば
らすとそこは一種の修羅場のようになった。寝袋はザックの最下層に入れるため、パッ
キングを崩さねばならない。出すと、その他の品を取り合えずザックにぶち込む。パッ
キングを朝如に早く終わらせるかというのも登山者の腕の見せどころなのだが今は関係
なかった。
  窓からは外は見えなかった。内部は裸電球によって明るく照らさせているが外は真っ
暗であり、その為に鏡の状態になっていた。よく刑事物なんかででてくるマジックミラ−もこれを応用させたものである。
  まだ寝るには時間が早過ぎたし、彼女達もそれを嫌がった。口からは今日の冒険談か
ら平地の出来事までありとあらゆる話が溢れ出た。話の勢いが爆発的なものから一定の
ペースまで落ち着くと、今度は手が動き出す。トランプのような万国共通のものから始
まり、雑誌などにのっている怪しげな呪文などに移ってゆく。そうかと思えば古風の“
あっちむいてホイ”が隆起したり………。
  それが終わると、体全体を使ったゲームになってゆく。もっとも山荘なのでそんなに
烈しいものは出来ないし、彼女達もそんな気はさらさらなかったのだが。
  誰が言い出したか、あるひとつのゲームをやることになった。4人が一人ずつコーナ
に立つ。1番目の人が2番目の立っているコーナーに向かって壁を蔦って行って肩をポ
ンと叩く。1番目の人は2番目のコーナーに留まり、叩かれた2番目の人はそこを出発
して3番目のひとの肩を叩き、3番目のコーナーに移動する。これを目をつぶって右廻
りに行おうというのである。慣れてきたらどんどん速度を上げてゆき、コケたりした者
に罰ゲームを与えることにして、彼女達はコーナーに散り、各の目が閉じられた。
  ゲームはスタートした。最初クスクス笑いながらゆっくりししたペースで開始されて
いった。そして慣れてくるにつれてコンスタントに回るようになってゆき、ミスをしな
いようにみんな熱を帯びていた。ゲームの展開は互角であり、なかなか勝負はつきそう
もなかった。
  だが、あるその中の一人がこの現象の真の意味に気付き恐怖の悲鳴を上げたことによ
って楽しいゲームは終演を迎えたのだ。

  何故なら、4人でこのゲームを1サイクル以上続けるには3角形の部屋でなければな
らず、4角い部屋において実行することは絶対に不可能なのだからだ。
  本当に彼女達4人しかいなかったならばの話だが………

                                      END

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