AWC ユミアウラ創生紀 第3話<炎の一族 カセイ> (6) 舞火


        
#1359/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (CGF     )  89/ 1/16  18: 9  ( 75)
ユミアウラ創生紀 第3話<炎の一族 カセイ> (6) 舞火
★内容

「やった」
 再びため息。
 右膝をつき、左手で毛に触れる。
 毛が針のように手で刺さる。鋼のような皮。
 これでは突いたっていうのは正解だったな。って思う。下手に斬ろうとしても斬れな
いかもしれない。
 脂ぎった皮は、それだけでも充分鎧になる。
 目と肩に刺さった二本の剣を引き抜く。一振りすると刃についた脂や血は飛び散り、
刃に一点の曇もない。剣の方は鞘に収め、紐剣は最初の鞭の状態に戻し、腰に戻した。
 立ち上がり大きな岩場によじ登る。そこは天然の展望台だった。向こうに方に村が見
える。村は悲しくなるほど小さく、それでも何か暖かな雰囲気を感じた。
 太陽が沈もうとしていた。
 あたしは岩場の上に座り込んだ。
 大きな大きな地球。緑と茶色の大地。青と白の海。湖。川。薄く淡い色の空、白い雲。何もかもが大きい中で村は果てしなく小さな存在だった。
 そんな中でも人は生きている。
 限りある命の中で精一杯生きている。
 地平線で、朱く大きく揺らぐ太陽。
『無茶をするな。と、いっておいた筈だ』
 突然、上から声が降って沸いた。
「ん?」
 後ろを見る。と、あ。
「アポローン!」
 太陽神光り輝くアポローンが立っていた。
『傷が開いている』
「え?」
 アポローンは膝をつき、あたしの左腕に手を充てた。
「くっ!」
 激痛が走った。振りほどこうする手を強く押さえられた。
『動くな』
 アポローンは苦もなく『聖なる石』の赤い服の袖を外した。知らない者にはぬがすこ
となぞできぬ。篭手と一体化しているから。それを簡単に。
 包帯が現われた。
 深紅に染まっている。
 アポローンはそれも外し、手当を始めた。
 あたしは、顔をそむけた。歯を喰い縛る。激痛が何度となく襲ってくる。
 長く、短い手当の終了と共に、あたしは無意識の内にアポローンにもたれかかってい
た。
 疲れてた。
 精神的にも肉体的にも。
 闘いはひどく疲れる。
 でなければ、神によりかかるなど。
 きらいな神にたよるなど、そんなこと。疲れてるからだ。そう思い、それでも、ぐっ
たりとよりかかっていた。
 アポローンの手があたしの髪をなでる。
 疲れ。苦痛。
 全てを取り除くように。
「無茶は承知の上だよ」
 ぼそりとつぶやいた。
「あたしは炎の一族。闘わねばならぬ。それが責務。戦闘と戦略,防衛があたしの役目」 全てを護る。魔と闘う仲間達、人間達を魔から護る、のが、炎の一族。
『何故』
「既に決定されたことだった」
 思い出すのはあの夢。
 繰り返し見るあの夢。
「アウラとガイアとイナミテがいた。ユミナニの存在が感じられてた。皆がいた。衝撃
があたしを襲う。その後はいつも現実。あの時が境だった……」
 決して戻れぬ安楽の日々。

『眠りなさい』
 アポローンの静かな声が脳裏に響いた。
『眠って、疲れをとりなさい。後のことはそれからです』
 まるで子守歌。優しく響く。
 あたしは、ゆっくりと。
 優しい眠りに導かれていった。

 神は嫌いだ……。
 優しかったのに、優しいのに……。
 何故、あたしをこんな目に合わせるの……。
 優しい、のに。
 厳しすぎるカセを与えた神。
 それでも、優しいから……嫌い……。

                                    <終>




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