AWC APPLE COMPLEX 【青き魂の讃歌】(11)コスモパンダ


        
#1351/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (XMF     )  89/ 1/14   0:11  ( 97)
APPLE COMPLEX 【青き魂の讃歌】(11)コスモパンダ
★内容
               (11)燐 光
 パシィフィック・クイーン大学病院の周りは、とんでもない喧騒だった。
 シティ・ポリスの検問が病院へ通じる全ての道路を閉鎖していた。パトカーだけで
なく、ロボット装甲車まで動員されていた。
 各検問には最低十名の警官が詰めている。その警官達は、簡易プロテクターを身に
付け、強力なマシンガンで武装していた。
 更に病院の救急外来を含めた全ての入口、玄関には、シティ・ポリスを支援する形
でシティ・アーミーの戦闘モービルがいた。
 戦闘モービルは、小型のミサイルを装備し、二十ミリ機関砲、二十ミリバレンタイ
ンレーザー砲を装備していた。
 アーミーの兵士達も第一戦闘装備、即ち対防弾対レーザー戦闘スーツに、〇・二ミ
リ・バレンタインレーザー・ライフルを装備していたのだ。そんな兵士が、病院の敷
地内だけで五十人はいる。
 フレスコ執事のピーク家のIDが無かったら、カズとノバァだけでは病院の玄関に
は到底辿り着けなかったに違いない。
「なんて騒ぎだい。まったく戦争でも始めようってのかい」
 レーザーライフルを肩にした兵士達を眺めて、ノバァが呆れたように呟いた。
「こいつは異常だな。ノバァ、どえらいことが起ころうとしているんじゃないか?」
 運転しながらカズも呟いた。
「これは、・・・。これは、おぼっちゃまを・・・捕らえるため・・・」
 フレスコ執事は途切れ途切れに呟いた。
「都合よく、ルルちゃんが危篤になるかな。ルルちゃんの容体は本当に危険なのかな
あ。僕と同じことを考えた奴がいるんじゃないか? ルルちゃんの容体悪化を餌にシ
ェンを誘き寄せようとしてるんじゃないかな」
「そんなことをやる奴は決まってるよ。ルドンコ少佐よ。あいつに違いないわ」
 ノバァが苦々しげに言った。
 車は地下駐車場に入ったが、そこもポリスとアーミーのオンパレードだった。
 三人は、ルル・ピークが運び込まれた集中治療室に向かった。
 ルルは大学病院の別館に収容されていた。しかし、その別館は人通りも少なく、カ
ズ達が通り過ぎた通路の病室は全て空室だった。
 通路の角々には、武装警官が立っていたが、医師や看護婦の姿は皆無だった。
「どうやら、この建屋の病室の患者は全部、別の所に移されたらしいわね」
 ノバァの台詞にカズはぞっとした。
 法治都市国家としての秩序を保つためには、不穏分子の排除は欠かせない。
 権力は、シェンを危険因子と見なしたのだ。ポリスとアーミーは共同で、シェンを
ここで捕らえるつもりなのだ。どんな犠牲を払っても・・・。
 別館の二十階、最上階にみんなの乗ったエレベータは着いた。
 そこで待っていた看護婦が、三人をルルの病室に案内した。
 ノバァは、何が気に入らないのか、その看護婦の後ろ姿をじっと見つめていた。
 二人の武装警官が「集中治療室」と書かれた扉を押し開け、四人を通した。
 そこは待合室になっており、十人程の武装警官と、医師や看護婦を含めた十名程度
の男女がいた。四人が入って行くと、全員の視線が集中した。
「フレスコ!」
 一人の身なりのいい女性が、フレスコ執事を見た途端、驚きの声を上げた。
「奥様、一体どうなさったのです」
 フレスコ執事は、その女性に歩み寄った。
 その女性の肌は透き通るように白かった。いや、青白いと言った方がいいだろう。
 ノバァも背は高い方だが、その女性も負けてはいなかった。
 スポーツで鍛えた引き締まった肉体美のノバァと比べると、その女性は手足が小枝
のようで、胸や尻も肉がなく、鳥殻のようなスタイルで、線の細い感じがした。
 それが、スーザン・ピーク婦人だった。
 ノバァの方がずっと抱きごたえがあるなと、カズは心の中で不謹慎な言葉を呟いて
いた。
 フレスコ執事が側によると、彼女は抱きついて、彼の肩を借りて、咽び泣き始めた。
「こんな、こんな酷いことが・・・」
 フレスコ執事が尋ねたが、スーザンは泣きじゃくるばかりだった。
 その二人の様子に周りの警官や医師、看護婦が気を取られている間に、ノバァは待
合室から次の部屋へ続くドアをそっと押し開けた。
「!」
 彼女は茫然と立ち竦んだまま、両の拳を口元に押し当てていた。
「ノバァ、どうしたんだい?」
 驚いたカズがノバァに近づくと、背中の傷に触らないように、そっと肩を抱いた。
 ノバァはカズに身を任せたが、いつもの彼女なら、そんなことは絶対にしない。
 だが、そんな彼女の行為に首を捻る間もなく、カズは部屋の中の光景を見て、叫ん
でいた。
「うわっ!」
 部屋の中は様々な治療装置が所狭しと置かれていた。その上、メディコン(医療コ
ンピュータ)の端末に繋がるケーブルが床の上を這い廻り、足の踏み場も無かった。
 中央に置かれたベッドの上には、五才くらいの少女が一人眠っていた。
 少女は、夥しい数のチューブやコードに全身を包まれており、まるで蚕の蛹のよう
だった。
 最低レベルに落とされた照明が、その少女を暗闇の中に浮かび上がらせていたが、
その照明は必要ないように思えた。
 コード類に覆われた少女の体は、青白い燐光に覆われていたからである。
「こ、これは、どうしたということだ・・・」
 立ったまま抱き合ったカズとノバァの横に、フレスコ執事も立ち竦んでいた。
 三人の側に、一人の医師が近寄って来た。
「この病室に運び込んだ時から、あのような光に包まれた。現在分析中だが、一種の
静電気のようなものかもしれない」
「なぜ、あんなことに?」ノバァが掠れた声で尋ねた。
「分からんね。原因は不明だ」
「あんた達、何かやったんじゃないのかい?」
 ノバァの肩を抱いたままのカズは、その医師を睨んだ。
 その医師は、頭を振って制服姿のアーミーの男を、顎で指し示した。
 無髪の男の首は太く逞しかった。
「ルドンコ!」ノバァが呻いた。
 ルドンコ少佐はゆっくりと振り返った。
「あばずれめ。怪我でおとなしくしているかと思ったが、ここまでやって来たか」
 如何にも面倒臭いといった口調で少佐は話した。
「少佐、お嬢様に何をされたのです?」
 フレスコ執事が尋ねた。
「おとなしく、来て貰うために、少し眠って貰った」
「あんたって人は!」
 怒りに燃えたノバァが、少佐に向かって駆け出そうとしたが、カズは彼女を抱いた
まま放さなかった。

−−−−−−−−−−−−TO BE CONTINUED−−−−−−−−−−−




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