AWC 有限宇宙(1) アンゴラ


        
#1311/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (QDA     )  88/12/14  17: 4  ( 65)
有限宇宙(1) アンゴラ
★内容


 苦しみの中、ただ受け身のみの生を生きるのなら。生き長らえるだけの時を、
蓄積するのみならば。人は滅びた方がよいのだ。
 その道にやがて滅亡をみいだすことになればこそ。

☆☆
『A.D.2080。恒星間長期航行システムが開発・運用され、惑星間の距離
が縮まった年。その年に、地球連邦政府は確立した。略して、WGU。やがて、
その時までに発見されていた、20数個の惑星は、WGUの統治下に置かれるこ
とになる。ただ一つの惑星、Σを除いては。
 惑星Σ。おおいぬ座シリウスから、10.9光年の距離にある惑星であり、比
較的地球から近距離に位置する。資源に乏しく、2050年代に始まった惑星進
になったのが、A.D.2069のことで、今から26年前の出来事である。
 その惑星Σは、後進開発星であるが故に、危険分子介入の可能性無し、と見な
して自治惑星となった。その政府の形態は非常に珍しく、宰相は巫の支持を仰い
で政府を行なう。これは、地球のアフリカ大陸を追われたとある民族が、この惑
星の総人口の98%を占める為である。……』
  耳障りな、音声が、否応なしに耳に飛び込む。
 特等席だよ、僕の席はさ。いちばん前の、先生の目の前。悪趣味に光る、金属
製の教卓があって。
 嫌いだね。
 嫌いだね。
 学校なんか。
 だって、ここには、あの子がいない……
 だから、わざとらしく窓の方を見る。砂漠、広がる……はず。ここからじゃ、
遠すぎて見えないけど。
「こおら、李下っ」
 社会の、諸井センセが怒りだした。年輩なんで、腹がせり出してて、ものすご
くみっともない。
 汚いね。
 大人は。
 汚いね。
 汚れ(けがれ)を糾弾出来ない社会は。
「聞いてんのか?やる気ゼロって顔してるがな」
「聞いてるわけねーじゃん。かったるいぜ、あんたの授業」
「な……っ」
 みるみるうちに、諸井の顔が紅潮してきた。テキスト持つ手が、わなわな震え
てる。でも、手は出さない。絶対に。弱者に手を出したら、そいつは、裁判なん
かすっとばして辺境惑星Σ行き。おかげで、僕らは好き放題してる。大人が考え
た、弱者を護る法律を盾にしてるから。
「なんだよ、文句あったらはっきり言えよ。え?」
 諸井がなんにも言わないんで、クラスのみんながドッと笑った。
 大人なんて、所詮そんなもん。
 力なんか無いくせに、空威張りしてるだけ。
  僕ら子供たちの方が、よっぽど人生有意義に過ごしてる事実、馬鹿みたいだぜ。
  あくせく働く大人になりたくて、みんな勉強してるのにさ。
 少なくとも、僕とあの子だけは例外だけど。
 金色の瞳の、優しいあの子は。
「出てけ。邪魔する奴は、みんな出てけ!」
 諸井が、怒鳴り散らした。大人、のくせにさ。大人はもっと、物わかりがいいと思ってたよ。
 大人と子どもの間に、ラインを引くつもりはない。だけど。引かざるをえない。
この大人たちがいる限り。
「は〜い」
 ぞろぞろ、後ろのドアから生徒がでてく。教室には、誰も残ろうとしない。
「あ、こらっ……」
 いつものシチュエイション。
 残像に縋るのだ、大人たちは。
 今はもう居ない、前時代の子どもたちの……
 おとなしかった、脆弱だった記憶に……

                                                  (なんと、続くのだ!)
                                                               アンゴラ





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