AWC とらぶるビーチ(1) おうざきあかん


        
#1273/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (UCB     )  88/11/27   8:26  ( 83)
とらぶるビーチ(1) おうざきあかん
★内容
  ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
  ◎       おうざきあかん 復帰第一作!!!       ◎
  ◎激動のうちに過ぎた1988年の夏をしめくくる驚異の異色問題作◎
  ◎          ここに堂々完成!!!          ◎
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           と ら ぶ る  ビ ー チ
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 フェスタ・ブルーに輝く夏の空が、透明なBGMとなってふりそそぎます。ま
ぶしい肢体を乏しい面積の布に包んだ女の子たちのきゃあきゃあという音とあい
まって、それは、海にきらめく季節がやってきた事を象徴しているのです。
 ざざん、ざん。かしましい女の子たちから逃げ出した緑色のビーチボールが、
波にむりやり押し戻されます。
 それを両手で拾った女の子。仮にゆうこさんと呼びましょう。歳の頃は十のな
かば、出てきたばかりの二次性徴がうれし恥ずかしい。
 女が生涯のうちでもっとも美しいのは十四、五歳と言われます。ゆうこさんを
見る限り、その言葉はまことにごもっとも、と言えましょう。
 前にまわせば、胸まで届く長い髪。それを後ろできゅっと結んだポニーテール
が、男の子の目を集めます。
「あたし、泳いで来るね!」
 明るい声が響きます。ゆうこさんは、はじけるような動きで、海にかけこんで
いきました。

 夏になると人口が二倍になる、そんな町。そこに、通称「博士」と呼ばれる男
の人が住んでいます。それはあながち嘘ではありません。博士は大学で先生をし
ていますから。そして、発明が趣味だから。
「おじさん、こんにちは! おひさしぶりです!」
 おじさんと呼ぶのは酷かも知れません。だって、おじさんはまだ二十八。二十
の前半と言っても通用する容姿を持っているのです。
「いらっしゃい、えりなちゃん。あい変わらず、かわいくて元気だね」
 そう答えたのは、えりなちゃんのおじさんではなく、おじさんの作った表札で
す。それは、「博士」の家にある数々の仕掛の一つなのです。見ての通り、大し
た物ではないですが。
 えりなちゃんの故郷の町には海がありません。海に遊びに行く時は博士のお家
にお世話になるのが、えりなちゃんが物心ついてから十年近くの習慣です。

「きゃあ!?」
 自動ドアが開いたと見る間に、博士の手がにゅっとのびてきて、えりなちゃん
を捕まえました。そして、あろう事か、えりなちゃんを脱がせ始めたではありま
せんか。
「いやん! 何すんのよ!」「黙って脱げ!」
 機先を制されて抵抗も功を奏せず、十四歳のえりなちゃんはスッポンポン。い
ったい何が始まろうというのでしょう。
 ……しかしおぞましい想像は想像に終わり、えりなちゃんはかすり傷ひとつ負
わず、シャワールームに放り込まれたのです。
 水のようで水でない、得体の知れない液体を浴びた後、ドアの外から博士の声。
「カナズチの君にプレゼントだ。体が乾いた時、君は水に浮けるようになってい
るからね」
 たいがいムチャクチャな設定です。歯歯歯。

「すっごい!」
 水を得た魚とはこの事でしょうか。先ほどまでの恥らいを蹴とばして、きゃい
きゃいとはしゃぎながら、ショートカットの髪を踊らせて、海岸に向かって駆け
だすえりなちゃん。細い目になった博士は結局何も言わず、えりなちゃんを見送
りました。子供のくせにビキニなんぞ着けおって、とでも言いたかったのでしょ
うか。
 浮く薬の力によって絶対に水に沈まない体になったえりなちゃんは、同姓異性
の別なく注目の的になりました。もちろん、薬の事は秘中の秘。
 その気になれば海の上に立つ事すらできそうですが、滑べるように泳ぐだけに
とどめたいところです。

 背丈の五割増しほどの深さの所を、ゆうこさんが泳いでいます。その姿はさな
がら人魚のようです。黒い髪が濡れて白く光ります。今、ゆうこさんは、水をき
って泳ぎ、自然と一つになる喜びをかみしめているのでしょうね。
 そろそろ引き返そうとした時、水の底に何かが光りました。
「まあ、貝殻だわ。きれい……」
 体をひるがえすようにして、ゆうこさん、水に潜ります。そして貝殻に向かっ
て手を伸ばしたその瞬間、足の内側にするどい痛みが走ったのです!

「あ……ああっ!!」
 ガボガボガボガボバゴバゴッッ!!!
 足が棒のように固まって動きません。無理に曲げたら、めりめりと音を立てそ
うに思われました。滑らかな肌の内側にある筋肉がつって、不気味な形になって
います。
 準備体操をするんだった。準備体操をするんだった。準備体操を…………。
 後悔が言葉になって、ゆうこさんの頭を回ります。水面を求めて、ゆうこさん
の腕がゆらゆらと踊ります。
 足を戻さなきゃ。力を抜かなきゃ……。
 タンタンタン……心臓の音が、やけに体内に響きます。目の前を何かの影がよ
ぎったようです。でも、それが最後で何も分からなくなったゆうこさん。
                               <つづく>




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