AWC トゥウィンズ・2 八章 ( 3/ 5) (41/43)  あるてみす


        
#1261/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (VLE     )  88/11/19   1: 0  ( 98)
トゥウィンズ・2 八章 ( 3/ 5) (41/43)  あるてみす
★内容
「ほんと、気を付けないとねえ。砂を掘るんだったら、シャベルを使わない
と危ないんだよ。」
 そう言いながら、宿のおばさんが由香ちゃんの指先に包帯を巻いてくれて
いる。
「さ、もう大丈夫だ。あんたのガールフレンドも大した怪我じゃなかったん
だから、そんなに青い顔しなさんな。」
「はあ、すみません。」
 茂のやつ、どういうつもりなんだか、顔が青かったりする。
「どうも、ありがとうございました。」
 由香ちゃんとともに出てきた茂は、ようやく顔色が元に戻った。
「おい、茂。お前、いきなりどうしたんだ?」
「由香の怪我、思ったより深くてさ、なかなか血が止まんなくて、ビビッち
まった。」
「しかし、お前でも、そんなマジな顔、することあるんだな。」
 健司のやつ、徹底的に茂をからかう体勢のようだ。
「ああ、たまにはな。しかし、本当にアセッちまったぜ。」
 そして、由香ちゃんの方に向き直って、
「なあ、本当に大丈夫か?」
「大丈夫だって言ってんでしょ? 本当にどうしたのよ。いつもの茂らしく
ないわよ。」
「俺も、そう思うよ。ただ、急に心配になっちまってさ。」
「それ、怪我したのが由香ちゃんだからでしょ?」
 今朝、茂にからかわれた僕も、意趣返しとばかりにからかってやる。
「な、何言ってんだよ。そんなこと……。」
「やっぱり、茂と由香ちゃんって、いいコンビだもんね。」
 茂の言葉をぶった切って、さらにしつこくからかってやると、
「もう、前から言ってるでしょ! あたしを、こんなのと一緒にしないでよ
ね!」
 由香ちゃんが怒ったように、後ろからヘッドロックをかけてくる。まった
く、怪我してるってのに、なんて元気なんだろう。傷口は痛くないのかね?
 一方、茂は、ちょっとショックを受けたような感じでシリアスな顔をして
立ちすくんでいる。
 それを見た僕は、由香ちゃんの攻撃を避けながら、茂のとこに行って、
「やっぱり本当は由香ちゃんのこと好きなんだね。」
 って聞いたら、
「なんて言われたって、あたしは茂なんか嫌いだかんね。」
 由香ちゃんが、そう言いながら僕の後ろから首を締める。
「わ、判ったから、ちょっと、離してってば。」
 慌てて由香ちゃんの腕を押さえて、何とか僕の首を締めていた手をはずす。
 茂は、その間に後ろを向いて、海辺へと歩き出していた。
 その後、海でも、なんとなくギクシャクしたような感じままに時間が過ぎ、
やがて夕食を終えて夜になった。

 夜、おかしなムードが続き、そのせいで互いの部屋に行く気になれず、健
司達と僕達は、それぞれの部屋でかたまっていた。
 僕が、たまたまトイレに行き、出てきたところで健司とすれ違った。
「なあ、博美。お前さ、由香のこと、どうにかできねえかな。」
「何で?」
「茂のやつがさ、すっかり沈んじまってな。今までは冗談半分で生きてたみ
たいなやつだけどさ。さっき、それとなく聞いたら、由香に対しては真剣な
気持ちだったらしいんだ。それだけに、由香の言葉がショックだったらしい。」
「でも、由香ちゃんが本当はどう思ってるのか判らないし……。だけど、確
かに昼間の由香ちゃんの言い方はちょっとキツかったもんね。せめて、あや
まるようには言ってみるけど。」
「ああ、頼むな。」
 健司はトイレに入り、僕は部屋に戻った。
 そして、うまくタイミングを見計らって、そっと由香ちゃんの脇へ行く。
「ねえ、由香ちゃんさ、昼間の茂に対する言い方って、ちょっとキツかった
んじゃない?」
「うん……あたしもね、今はそう思ってるんだ。ちょっとキツい言い方だっ
たかなあって。」
「それで、さっきから考え込んでるのか。」
「なんか、沈んでる茂って、今まで見たことなかったから、調子が出なくて。
昼間は、あんなこと言っちゃったけど、本当は茂のこと嫌いじゃないのよね。
だけど、今までは、あんな調子でやってきてたでしょう。好きとか嫌いとか
って意識したことないのよ。」
「じゃあさ、とにかくあやまってきたら? それで、明日からまたいつもの
調子に戻ればいいよ。そのあとは茂の問題だからさ。今のままじゃ、ずっと
ギクシャクしたままで終わっちゃうよ。」
「うん、そうね。そうする。」
 そこで、由香ちゃんを引き連れて健司達の部屋へ行き、由香ちゃんを、そ
こへ放り込んで、
「とにかく、お邪魔虫のいないところでさ、二人だけで話でもして、ゆっく
りしてなよ。」
 と言って、健司、康司、真琴の三人を引き連れて僕達の部屋に戻った。
 康司は一美の隣に、そして、なんとなく恥ずかしかったけど、健司は僕の
隣に来て座った。
 必然的にアブレ者同士になってしまった真琴と麻里ちゃんが一緒になって、
お喋りをして笑い転げたり、ゲームをしたりしているうちに、夜は更けてい
った。

「ふわぁ……。」
 欠伸をして、思いっきり伸びをする。
「おはよ。よく眠れた? 金縛りは起きなかったみたいね。」
「そういえば、すっかり忘れてた。」
「ま、いろいろと起きてくれたもんね。」
「まったく。そっちに気を取られてて、金縛りの割り込む余地なんかなかっ
たのかもね。」
「あら、二人の間に割り込む余地がなかったんじゃないの?」
 そう言いながら、一美はクスクス笑う。
 ったくもう。朝っぱらからからかうなよ。
 一美の冗談にブツクサ言ってると、
「昨日はごめんね。」
 由香ちゃんが、それだけ言って、さっさと顔を洗いにいってしまった。
 夕べ、茂と一緒にいた由香ちゃんが部屋に戻ってきたのをきっかけにして
健司達三人は部屋に戻った。そのあと、すぐに僕達も寝てしまったってわけ。

−−− まだあるよ −−−




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