AWC トゥウィンズ・2 五章 ( 1/ 3) (28/43)  あるてみす


        
#1242/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (VLE     )  88/11/13  12:45  ( 99)
トゥウィンズ・2 五章 ( 1/ 3) (28/43)  あるてみす
★内容
五章  ここは何処?

「おい、博美、しっかりしろよ。おい、博美、博美ってば。」
「ちょっと博美、しっかりしてよ。」
 遠くで、誰かが何やら呼んでいるのが聞こえる。
 うーん、うるさいなあ。頭が痛いんだから、静かにしてよ。そう思って、
手を動かす。と、それらの声が急に大きくなった。
「うっ……。」
 頭の痛みに耐えかねて顔をしかめると、ふいに意識が戻って目が覚めた。
「博美、博美、大丈夫?」
 耳元で女の子が人の手を握りながら心配そうにしている。その後ろには同
じような顔をした二人の男の子が立っていて、やはり心配そうな表情をして
いた。
 その二人は完全に瓜二つの顔。あ、もしかして双子なのかな?
 それとは別に、女の子二人と男の子二人がそばにいた。全部で七人。
「ねえ、博美、大丈夫?」
 別の女の子が、やはり心配そうに聞いてくる。
 何がどうなったんだろう。この部屋、私は全然知らないし、こんなふうに
ベッドに寝かされてる理由も判らない。そこで、部屋を見回そうと思って、
がばっと起き上がったら、あた! 思わず頭を抱えてしまう。頭がズキズキ
して割れるような感じ。
「ちょっと博美ったら、脳震盪起こしたんだから安静にしてなきゃ駄目じゃない。」
 それまで枕元で手を握ったまま離さなかった女の子が、そっと横にしてく
れる。
 そういえば、さっきから彼らは博美、博美って連発してるけど、一体誰の
ことなのかな? なんか、雰囲気からすると私のことみたいなんだけど。
 あれ? そういえば、私、いったい誰なんだろう。それに、ここは何処な
んだろう。
 いくら考えても判らないし、自分の記憶も全然助けにならなかったので、
仕方なく聞いてみる。
「あの……、ここは何処なんでしょうか?」
 途端に驚きの表情を見せる枕元の女の子。
「やだ、博美ったら、なに言ってんのよ。」
「博美って、それが私の名前なんですか?」
 その時、そこにいた人達の表情ときたら……。
 皆、申し合わせたように、キョトンとした表情を作って、そのあと、ほぼ
同時に息を呑み込んだ。
「ちょっと、嘘でしょ。やだもう、博美ったら、からかわないでよね。」
 そういう女の子は泣き笑いのような不思議な表情をしていた。
 私が、わけも判らず部屋の中を見回していたら、その女の子はとうとう泣
きだしてしまった。
「嘘よー。博美、なんでー?」
 そして、私に抱きついてくる。
「一美……。」
 その女の子の後ろに立っていた同じ顔の二人の男の子のうちの一人が、悲
痛な表情を浮かべたまま、その子の肩を軽く叩いて、その子が振り向いたと
ころで優しく抱きしめる。
 その子は、その男の子の胸に顔を埋めてひたすら泣いている。
「なあ、本当に自分が誰だか判らないのか?」
 同じ顔のもう一人の方が、人の肩に手を置いて、確認するように聞いてき
た。
 なんか、慣れ慣れしいやっちゃな、こいつは。
 いきなり、そう思ったんだけど、それは態度に出さないようにして、
「ええ、なんか、そのようなんですよね。ところで、私、本当に博美ってい
うんですか?」
 そう答えながら、私ったら自分が誰だか判らないのにパニックも起こさず
に、よく平然としてられるなあ、なんて考えてた。
 そして、そんな私の答えを聞いた男の子は本当に暗いというか沈痛という
か、とにかく悲惨な表情になった。

 早速、病院に連れて行かれて診察を受けたんだけど、頭部強打による記憶
喪失としか診断されなかった。それに、精密検査による結果でも特に異常は
見つからなかったし、頭蓋骨骨折や脳内出血等も見られなかった。
 お医者様が言うには、特に入院の必要はないし、記憶喪失の方も病院にい
たから治るというものでもないから、そのまま帰ってもいいということだっ
た。ただ、打ったところが頭なので、いまのところは異常がないようだけど、
もしあとで何か変になったらすぐに病院へ行くようにということも言われた。
 で、また河野さんの別荘に戻り、自宅へ電話をしてもらって、すぐに帰る
ことになった。
 どうやら、私は友人である河野さん(私はミコちゃんと呼んでいたそうだ)
の別荘に遊びにきていたところだったらしくて、とりあえず自分の家に帰る
ことになったっていうわけね。
 もっとも、最初は自分の家とか言われてもピンとこなくて、仕方ないから、
枕元で手を握っていた女の子にいろいろと教えてもらって、初めてこのこと
を知ったんだけど。
 で、どうやら、その子は私と双子の姉妹で一美というらしい。それを聞い
て鏡で自分の顔を見て、本当にびっくりしたくらいだから、それはたぶん事
実なんだろう。

「なあ、健司。博美のやつ、どういう状況で落ちたんだ?」
 康司さんとかいう、一美さんの彼氏が、健司さんに聶いてるのが聞こえる。
 なにしろ、私の隣に一美さんがいて、向いに健司さん、その隣、つまり私
の斜め向いに康司さんが座っているから、康司さんと健司さんのヒソヒソ話
も一美さんと私には聞こえてしまうのだ。
「実はさ。俺、博美に告白してさ、つい、博美にキスしちまったんだ。そし
た……。」
「なに、いつ言うかと思ってたら、とうとう告白したのか。」
 康司さんが驚いたように、健司さんの言葉を切る。
 それは、軽井沢の駅で上野行きの電車に乗ってすぐのことだった。
「ああ、そしたらさ、博美の奴、驚いて走り去ろうとして、そのとき何かに
つまづいたらしいんだ。それで、いきなり転んでさ、たまたまそこがガケに
なってたってわけ。でも、こんなことになるんだったら、言わない方が良か
ったって思うんだ。」
 健司さんが頭を抱えながら、ヒソヒソ話が続く。
「お前さ、博美が転んだとき、支えてやれなかったのか?」
「ああ、間に合わなかったんだよ。くそ!」
 そして、健司さんは、そのままふさぎ込んでしまう。

−−− まだあるよ −−−




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