#1237/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (VLE ) 88/11/ 9 20:27 ( 98)
トゥウィンズ・2 四章 ( 1/ 4) (24/43) あるてみす
★内容
四章 恋のライバル?
次の日はまたテニスをすることにした。
午前中は、康司と茂に再びコーチをしてもらって、打ち方の矯正をして、
ティータイムの後、また、勝ち抜き戦で交互に入れ替わってボールを打ち合
った。
慣れのせいか、それとも康司と茂のコーチのおかげか、ミコちゃんと由香
ちゃんのボールもだんだんと返せるようになり、少しづつ点が取れるように
なってきた。
そして、お昼を食べ終わって一休みしたあと、午後も交代でボールを打ち
合った。
やっぱりミコちゃんや由香ちゃんはキャリアがあるだけに強い。麻里ちゃ
んも一美も、そして僕も、1ポイントも取れないうちに交代させられてしま
うことがあった。
二人とも健司達と対等に打ち合うことができるくらいだから、相当なもの
なんだろう。
もっとも、健司達だって、それほど強くはないらしいけどね。
そして、由香ちゃんとミコちゃんが打ち合って、接戦の末にミコちゃんが
勝って、そのあとミコちゃん相手に麻里ちゃん、一美と続いて打ち合いをし
た。相も変わらず一方的な試合展開だ。
そして、僕の番になって、一美と同様、数ポイントは取ったものの、やは
り一方的な試合展開で、そろそろ終わりになるっていう頃、たまたま僕の打
ったボールが、ミコちゃんのコートに勢いよく飛んでった。それもミコちゃ
んのいた所とは反対の方に。
ミコちゃんは当然、必死に追いかけて、体勢を崩してボールを拾おうとし
たんだけど間に合わず、ボールはみごとにコートに突き刺さっていた。
「やったね!」
思わず麻里ちゃんと一美に向かってVサイン。
ところが、ミコちゃんが体勢を崩して倒れたまま、ピクリとも動かない。
「あれ? ミコちゃん、どうしたの? 大丈夫?」
呼びかけても返事がない。
「ちょっと、ミコちゃん!」
慌ててネットを飛び越えて駆け寄ろうとして、
「あたっ!」
ネットに足を引っかけて、思いきりコケてしまった。顔面から地面に落ち
なかっただけでも幸いだったと言える。
「おい、お嬢さん! どうしたんだよ!」
皆もミコちゃんの様子がおかしいのに気付いて、駆け寄ってくる。
僕もコケた痛みをこらえながら駆け寄って、
「ミコちゃん!」
なんて声をかけたんだけど、ミコちゃんは完全に意識がないらしい。
「おい、一体どうなったんだ?」
健司が少し強い調子で聞いてくる。僕はミコちゃんが倒れるまでの状況を
克明に話す。
その間に、吉野さんがミコちゃんの手当をしようと出てきた。吉野さんが
ミコちゃんの様子をみたあと、康司と真琴がミコちゃんを部屋まで運び、ベ
ッドに寝かせる。
そして、吉野さんは急いで医者を呼んだ。でも、医者の都合もあって、来
れるのは一時間くらいあとになるそうだ。
皆、心配してミコちゃんの枕元に集まっていた。
それから一時間くらいして、やっと医者が来てくれた。
そして、診察のため、皆、部屋から出される。仕方がないので部屋に戻っ
て、それぞれに診察の結果を待っていた。
しばらく待っていたら、吉野さんが皆を呼びにきた。ミコちゃんが目を覚
ましたんだそうだ。
ミコちゃんの部屋に行くと診察も終わって、医者が帰り支度をしていると
ころだった。
「本当にごめんなさいね。折角、楽しんでたところなのに、変なことになっ
てしまって。」
ミコちゃんが心底すまなそうな顔で皆に謝る。でも、その顔色は今一つ良
くない。
「何言ってんだよ。そんなことよりさ、どうなんだ? 大丈夫なのか?」
心配そうに健司がたずねる。
「ええ、なんでも過労が原因なんですって。あたくしは、そんなに疲れるよ
うなことした覚えないんですけどね。でも、二、三日は静かに寝ていなけれ
ばいけないそうなんです。」
ミコちゃんは残念そうだ。
「でも、単に疲れただけのようですから、皆さんはテニスを続けて下さいね。」
「何言ってんだよ。お嬢さん抜きでテニスなんかできるかよ。」
その間に医者は部屋を出て、こっそりと吉野さんを呼んで廊下で何か話を
「本当にごめんなさい。」
ミコちゃんが、そう言ったところで吉野さんが入ってきて、
「お嬢様、もう話はしない方がいいですよ。静かに寝てるように言われまし
たでしょ? 絶対安静でいて下さい。」
そして、皆に向かって、
「そんなわけですので、すみませんけど皆さん、夕食ができたらお呼びしま
すから、それまで適当に過ごして下さい。」
だけど、今更テニスを再会する気にもなれず、仕方なく、皆、ネットを片
づけて部屋に戻った。
何をするでもなく、そのまま数時間を過ごし、重苦しい雰囲気のまま夕食
の時間になってしまった。吉野さんが皆を呼んで、ミコちゃん抜きの寂しい
食事。
なんとなく皆、食が進まない。食事そのものはいつもの通り美味しいんだ
けど、でもミコちゃんのことが気になって仕方がない。
「皆さん、どうしたんですか。食べ盛り育ち盛りの年代なんでしょ? ほら、
遠慮しないで。」
そう言う吉野さんの表情が妙に明るい。なんか明る過ぎるような感じさえ
そんな吉野さんの言葉と表情につられてか、皆も少しは食が進み、結局き
れいにたいらげてしまった。
それでも、ミコちゃんのことが気にかかって、その晩は、なかなか寝つか
れなかった。
目が覚めて、朝のさわやかな感じに心が弾む。今日から八月。夏休みも残
すところ、あと一月、なんて普通はあまり言わないかな。
普段なら、月は変わったけど、まだあと一月もある、とか言って安心して
る頃だろう。
−−− まだあるよ −−−