#1232/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (VLE ) 88/11/ 6 11:35 (101)
トゥウィンズ・2 三章 ( 2/ 6) (19/43) あるてみす
★内容
車は駅を出てからだいぶ走り、街の家並はとっくに消えてしまっていた。
所々に何軒かの家が見えるんだけど、どうやらそれは別荘群らしい。
しまいには、時々見かけた別荘群もなくなり、完全に山奥に入り込んだ。
それからまた、かなりの距離を走って、いい加減に車に乗っているのも飽
きてきた。
「随分、走ってるけど、まだ着かないのかなあ。」
茂は完全に退屈しきっているようだ。
「じきに着きますよ。」
運転手さんが答えてくれる。
また、しばらくの間、三台の車は疾走していく。
と、前のスポーツカーが、突然路地に入り込んだ。タクシー二台も続いて
曲がる。と、かなり上の方に少し大きめの家が一軒あって、車はその家に向
かっているようだ。
どうやらその家が目的地だったらしく、スポーツカーがその家の門を抜け
て玄関脇に滑り込む。あとに続く二台のタクシーは、その門の前で止まる。
その別荘は二階建てだった。そして、立ってる場所が山の中腹のため見晴
らしも良く、二階から見る景色は最高にいいということだった。
僕達がタクシーから降りると、吉野さんは、それぞれの運転手に運賃を渡
していた。
二台のタクシーは、門のところでUターンして、そのまま、今来た道を引
き返していった。
「さあ、皆さん。どうぞ、お入り下さい。」
吉野さんに導かれるまま玄関を入る。と、そこは吹き抜けの広いホールに
なっていた。
「うわあ、広いなあ。」
思わず、ため息をついてしまう。
「さあ、こちらですよ。」
おっと、ここで呆然としたちゃいけないな。
慌てて吉野さんについていって階段を上る。二階には洋室が数部屋あった。
洋室とは言っても、単に六畳とか八畳とかいう程度のものじゃない。ちゃん
と小型のバス・トイレ付きで、普通のホテルの部屋なんかよりはるかに広い。
ちなみに、一階には和室がいくつかあるそうだ。
「皆さん、お好きな部屋をお使い下さいね。一部屋には四人まで泊まれるよ
うになっていますけど、一人で使っても一向に構いませんし、誰と一緒に泊
まっても構いません。自由にして下さって結構です。あ、でも、一つだけ。
男性と女性が一緒の部屋に泊まるのだけは止めて下さいね。これだけは、皆
さんの御両親や奥様との約束ですから。」
吉野さんは、そう言って微笑んだあと、
「それじゃ、下でお茶を用意していますから、落ち着いたら、食堂の方にど
うぞ。」
と言って、階段を降りて行った。
聞くところによると、ミコちゃんだけは一階に自分の部屋を持っているの
で、二階には泊まらないんだそうだ。だから、男四人と女四人で二階の部屋
を自由に使えるってこと。
で、麻里ちゃんと一美、由香ちゃんと僕、茂と健司、真琴と康司が、それ
ぞれペアになって全部で四つの部屋を使うことにして、荷物を運び込んだ。
しかし、本当に広い。吉野さんは一部屋で四人まで、なんて言ってたけど、
貧乏性の僕にしてみれば、四人でも贅沢。六人から八人くらいは余裕で泊ま
れるんじゃなかろうかと思う。
その後、皆で食堂に集まって、その外にあるテラスで、吉野さんが用意し
てくれた紅茶とケーキを、じっくりと味わいながら、涼しい風と爽やかな日
差しで気持ちの良い時を過ごした。
そして、すぐ下に二面あるテニスコートを見おろしながら、皆でテニスを
したいなっていう話になった。
と、そのテニスコートもミコちゃんちの所有だから使うのは自由だと言わ
れ、これ幸いとばかりにテニスをすることに決定。
で、今日は、すがすがしい空気を満喫しながらゆっくりと休むことにして、
明日は皆でテニスをしようということになった。
一休みのあと、ミコちゃんに案内してもらって、別荘の周りにある白樺林
の中を回ってみた。
ミコちゃんが言うには、所有している広大な土地の中に白樺林があって、
その中には散歩道が作ってあるんだそうだ。そしてそれは雑木林の中に続い
ていて、その中は夏の暑い時期のよく晴れた日などでも涼しいし木漏れ日は
綺麗だし最高だとか。
それを聞いて皆でその林の散歩道を皆で散策してみた。
実際に回ってみると、確かにミコちゃんの言った通りで、今日のように晴
れていると木漏れ日は綺麗で、しかも涼しく、多分、デートコースなんかに
もいいんだろうな、なんて思ってしまった。
なにしろ個人の土地だから人通りは絶対にないし、静かな林の中、小鳥達
のさえずりを聞きながら一休みするっていうのは、最高のことだろうからね。
事実、康司と一美なんか、僕達の目なんか気にならないのか、既に二人の
世界だし、麻里ちゃんなんかもため息をつきながら周りを見渡してる。もっ
とも、麻里ちゃんの場合、周りの景色に見とれながらも、それとなく健司に
近づこうとするのは忘れなかったようで、健司の腕を取ろうとして虎視眈々
と狙っていたみたいだった。
で、一通り回ってみたんだけど、途中で道が何度か別れたり合流したりし
てるし、それに距離も結構あるから、数日の間ずっといても飽きることはな
さそうだった。
その晩、吉野さんが出してくれた夕食の豪華さと品数の多さに皆で驚いて
いた。
「皆さん、育ち盛りなんですから、たくさん食べて下さいね。」
なんて言う吉野さんの言葉が聞こえているのかいないのか、男どもは皆、
先を争うようにして食べてるし、僕達とて似たようなものだった。とはいっ
てもそこは女の子。さすがに男どものように先を争うような感じでは食べな
いけど、でも、この御馳走を目の前にしたときから、遠慮なんて言葉は頭の
中から消え去っていた。多分、吉野さんの言葉がなくても、遠慮なんかしな
かったに違いない。
結局、皆、食べるだけ食べて、完全に満足して一休み。
吉野さんは、その様子をニコニコしながら見ていたが、食事が済んだのを
見計らってあと片付けを始めた。
ミコちゃんを除く僕達四人の女の子は、それを見て慌てて片付けを手伝お
うとした。
「あ、皆さんは片付けなんてしなくて結構ですよ。」
吉野さんは僕達の様子を見て、慌てて止めようとする。
「でも、吉野さん一人にあと片付けをさせるっていうの、すごく嫌なんです。
どうせ、あたし達は遊びに来てるんだし、このくらいのことはしないと。」
麻里ちゃんが、ミコちゃんを除く四人の気持ちを代表して言ってくれる。
−−− まだあるよ −−−