#1221/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (VLE ) 88/11/ 3 12:51 (100)
トゥウィンズ・2 二章 ( 4/11) (10/43) あるてみす
★内容
結局、既に日に焼けてしまってたからか、それとも本当に塩水で効き目が
無くなったのか、その辺はよく判らないけど、とにかく、その夜のお風呂は、
皆で地獄を見た。
ついでに言うと、健司達は僕達よりも長く炎天下にいたため日焼けもひど
く、さらに酷い地獄を見たそうだ。
夕食後、こっそり由香ちゃんと打ち合わせをして、僕は健司を、由香ちゃ
んはミコちゃんを、それぞれ誘い出した。場所は判りやすいように、昼間使
った海の家の前。
最初、
「ちょっと話があるんだけど、皆には内緒の話だから、海の家の前で待って
る。」
なんて言ったら、健司の奴、変な顔してたけど、それでもなんとか約束を
取り付けるとこまでは成功した。
約束の時間に少し遅れて、由香ちゃん、ミコちゃんと三人で待ち合わせ場
所に行く。
しかし、さすがに街灯なんてものはないし、街のネオンなんてのも縁遠い
ところだから、あたりは真っ暗。健司を探すのにも難儀した。ようやくそれ
らしい人影を見つけて近づく。と、
「よう、博美。遅かったじゃないか。ところで、話って……。」
なんて言いかけたところで、健司は、相手が僕一人じゃないことに気付い
た。
「あれ? 博美、内緒の話があるって言ってなかったっけ?」
「うん、他の皆には内緒の話なんだ。実はね……。」
そこで、せーの、っていうかけ声とともに、由香ちゃんと二人で軽くミコ
ちゃんの背中を押してやった。もちろん、健司にぶつかるように。そして、
「ミコ、頑張ってね。ちゃんと打ち明けるのよ。」
「ま、そういうことなんだ。健司、後はよろしく。」
っていう言葉を残して、走って宿に戻った。ミコちゃんが押されて上げた、
「きゃあ。」
っていう悲鳴と、健司が慌てふためいて言った、
「お、おい、博美。ちょっと待てよ。これ、どういうことだよ。」
っていう言葉を一切無視して。
由香ちゃんと二人で宿に戻ると、麻里ちゃんが、
「ねえ、博美。健司くん、どこにいるか知らない?」
なんて聞いてきた。一瞬、ギクッとする。
「な、なんでさ。」
「うん、ちょっとね。」
麻里ちゃんは、そう言いながら由香ちゃんを気にしていたので、
「悪いけど、先に部屋に戻ってて。」
由香ちゃんに、そう声をかけて、先に部屋へ帰らせる。と、
「ねえ、博美は健司くんとは恋人じゃないって言ってたよね。」
「うん。だけど、なんで?」
「う、うん。実はさ……。」
そして、しばらくモジモジしたあと、小さな声で、
「健司くんのこと、なんとなくいいなあ、なんて思っちゃったわけ。でさ、
夕食が終わったあとで少しお話でもしたいな、なんて思ってたら、健司くん
いなくなっちゃったから。」
な、なんだってえ?
「……でね、健司くん探してたんだけど、どこ行ったか判らないの。博美、
知らないかなあ。」
そりゃあさ、一応知ってはいるけど、でも今はちょっとまずいんでないか
い?
「いや、知らない。」
そう言って麻里ちゃんと別れ、心の中で仕方無く嘘ついたことを麻里ちゃ
んにあやまりながら、部屋に戻る。
部屋には由香ちゃんだけしかいなかった。一美は康司とデートだし、ミコ
ちゃんは健司と一緒だし、麻里ちゃんは健司を探してたから、当然といえば
当然なんだけどね。
「あーあ、まいったなあ。」
そう言って、ため息をつくと、さっきの麻里ちゃんの様子が気になってい
たらしい由香ちゃんは、
「ねえ、麻里ちゃん、どうかしたの?」
なんて聞いてくる。
「いや、たいしたことじゃない。なんでもないよ。」
なんとか適当にごまかして、また、ため息をつく。そして、
「ちょっと散歩してくるね。」
そう言い残して、また外に出る。あーあ、それにしても頭が痛い。
少し夜風にでも当たんないと、頭痛で寝られなくなりそうな気がする。
しかし、ミコちゃんだけかと思ったら、麻里ちゃんもだってえ? まった
くもう。
健司って、結構モテるんだな。
そんなこと考えながら海辺まで歩く。もちろん、健司とミコちゃんに出会
わないよう注意して。
ほとんど真っ暗な中で監視塔を見つけて、その支柱に寄っかかりながら、
ため息を一つ。
そして、何気なく空を見上げて、
「うっわあ。」
思わず声を上げてしまう。だって、都内じゃ、こんなにたくさんの星は見
えないもんね。それにしても、すごい数だ。
えっと、夏空だからカシオペアとか北斗七星、白鳥座なんかが見える筈だ
な。そう思って探してみると、なんとなくそれらしい星座が見えることは見
えるんだけど、その他の星も多いから、よく判らなくなっている。でも、さ
すがに一等星や二等星ってのは目立つもんだね。
……あれが、カシオペア、こちらが白鳥座。ポツリポツリと僕が指さす……。
ふと、健司の家で何度か聞いたことのある、さだまさしの『線香花火』の
歌詞を思い出す。
あの歌、何度聞いても、ちょっとせつない感じなんだよね。
そんなことを考えながら、また、ため息をつく。
それでも、雄大な星空を眺めていると、なんか、この地上で起こっている
問題とか、自分の存在そのものが、ちっぽけに思えてくる。そして、時間の
経つのも忘れてしまいそうだ。
星空の中に今にも吸い込まれそうな感じさえする。
えーっと、あれがカシオペアで、あれが白鳥座で……。
『線香花火』の歌詞通り、星座を探してみる。ついでに、その近くにある
はずの北斗七星も探す。
え? あれ? えーっと、あれがひしゃくだから、柄の部分が……と。
−−− まだあるよ −−−