AWC トゥウィンズ・2 一章 ( 5/ 6) ( 5/43)  あるてみす


        
#1210/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (VLE     )  88/10/29  14:17  ( 97)
トゥウィンズ・2 一章 ( 5/ 6) ( 5/43)  あるてみす
★内容
 ズルッ。あ、頭いた……。思わずコケてテーブルの上に突っ伏しそうにな
って、そのあと頭をかかえてしまう。
「なる程。よーく判りました。だけど、なんで中田さんが、そんな憎まれ役
を買う訳?」
「だってミコが、あ、ミコっていうのは美子のことなんですけど、この娘、
すごく内気で健司さんに告白することさえできないんです。で、あたしが話
をしようとしたら、たまたま中沢さんが一緒にいたもんだから、つい……。」
「なる程、そういうことか。」
 改めて、じっくりと見てみると、河野さんは、もの静かでおとなしい感じ
の娘だった。服装も落ち着いていて優雅な感じさえする。それにカラスの濡
れ羽色って感じの綺麗な髪を結構長く、しかもストレートに伸ばしていて、
とても上品な感じ。
「なんか、深窓の令嬢って感じだね。ミコちゃんは。あ、僕もミコちゃんっ
て呼んでいいよね。」
「ええ。」
 ミコちゃんは、かすかにうなずいて返事をする。
「こんな素敵な娘は健司には勿体ない感じもするけど、本人がいいってんだ
から、まあいいか。」
「あ、あの……。」
 中田さんは、話が判らなくなってきたらしく、ちょっと慌てている。
「えっと、中田さん。由香ちゃんって呼んでいい?」
「え、ええ。」
「由香ちゃんは本当に健司のことは、なんとも思ってないんだよね。」
「もちろんです。」
「じゃあ、頑張ってミコちゃんに告白させてあげてね。僕も応援するからさ。」
「あの、いいんですか?」
「なんだったらさ、今、健司を呼び出そうか?」
「あの、それは……。」
 ミコちゃんは顔を赤くしながらモジモジしている。と、由香ちゃんが、
「じゃあ、その辺のことは、また後で。ところで、ちょっと聞いていいです
か? 今の話とは全然関係ないんですけど。」
「なにかな?」
「中沢さん、なんで『僕』って言うんですか?」
「うーん……、単なる口癖だと思う。」
 とても、本当のことをまともに説明する気になんかなれない。
「そうなんですか。」
「ところでさ、由香ちゃんもミコちゃんも丁寧な話し方はやめない? 肩が
凝っちゃってさ。」
「ふふ、そうね。じゃあ、あたしも博美ちゃんって呼ばせてもらうね。」
 由香ちゃんの口調が、やっとくだけたものになる。
「できたらさ、完全に呼び捨てにしてくれないかなあ。ちゃん付けされるの
って慣れてないからさ、なんか変な感じがして。」
「博美って呼び捨てでいいの?」
「うん、そっちの方が気楽でいい。」
 ここで、ようやく紅茶が運ばれてくる。
「お砂糖は?」
「ありがと。でも、お砂糖はいらないんだ。」
 そう言って、そのまま紅茶をすする。もちろんミルクも入れずに。
「甘いものは、お嫌いなんですか?」
 ミコちゃんが、さっきの状態から立ち直って、聞いてくる。
「いや、甘いものは大好きなんだけど、紅茶の甘いのだけは、ちょっとね。」
「じゃあ、ケーキなんかいかがですか? あたくしがおごりますから。」
「え? いいよ、悪いから。」
「素直におごって貰いなさいよ。これでもミコはお嬢様なんだから。」
「へ? じゃあ、本当に深窓の令嬢だったりする訳?」
「そうなの。でも、『らしい』でしょ?」
「うん。確かに『らしい』感じだけど……。」
 確かに、それらしい雰囲気はあるんだよね。いかにも令嬢って感じの格好
じゃなくて、ごく普通に淡いピンクのセーターを着てチェックのスカートを
はいてるだけなんだけど、それでもなんとなく普通と違う落ち着いた雰囲気
を持ってるんだ。
「だからね、クラスの人は皆、お嬢さんって呼んでるわけよ。」
「あ、そういえば健司も、そう呼んでたっけ。」
「で、納得した?」
「うん。」
「じゃあ、ケーキ食べる?」
「うーん、由香ちゃんはどうするの?」
「もっちろん、食べるわよ。」
「じゃあ、僕も御馳走になろうかな。」
「やったね! で、ミコは何がいいの?」
「あたくしは、これ。」
 ミコちゃんは、メニューのアップルパイのところを指す。
「博美は?」
「チョコレートケーキ。」
「すいませーん。」
 由香ちゃんがウェイトレスさんを呼ぶ。
「はい、なんでしょうか。」
「注文の追加お願いします。アップルパイとチョコレートケーキとチーズケ
ーキを一つづつ。」
「はい、アップルパイとチョコレートケーキとチーズケーキを一つづつです
ね。」
 僕は、まだまだ熱い紅茶を少しすすって、ため息を一つつく。
「ふーん。しかし、本当にお嬢様って、いるもんなんだね。」
「えっ? ミコのこと?」
「うん、どう見たって、雰囲気がお嬢様だもんね。」
「でしょう? これで恥ずかしがり屋だったりしたら完璧でしょ。」
「まったくだ。」
「でね。ミコったら本当に恥ずかしがり屋なわけ。だから、どうしてもほっ
とけなくてね。」
「うん、よーく判る。僕だって、こんな娘が友達だったりしたら、きっとほ
っとけないよ。」
 ミコちゃんは、自分のことが話題になっているせいか、また恥ずかしそう
にうつ向いてしまう。
 由香ちゃんは、それに気が付いて、慌てて話題を変える。
「ところでさ、博美は、好きな人いないの?」

−−− まだあるよ −−−




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