AWC トゥウィンズ・2 一章 ( 3/ 6) ( 3/43)  あるてみす


        
#1208/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (VLE     )  88/10/29  14: 5  (100)
トゥウィンズ・2 一章 ( 3/ 6) ( 3/43)  あるてみす
★内容
「先生。じゃあ、あたしも背が伸びるかなあ。」
 一美が心配そうに質問する。一美もまだまだ身長がないからね。やはり心
配なんだと思う。もちろん、僕もだけどね。
「ああ、今は食べ物がいいからな。今の身長のまま大人になる奴なんて、ま
ずいないだろう。心配はいらないと思うよ。」
 と、そのときクラスの何人かが一美の隣の僕に気付いて、あれ? ってな
顔をする。
「おっと。慌ただしくて済まないけどさ、ヤボ用があるんで、ちょっと失礼
させてもらうよ。後でまた顔を見せるからさ、それまで適当にやっててくれ
や。」
 そう言って、山下先生がいなくなる。
 同時に、僕に気付いた数人がやってきて、
「うそっ! ちょっと、なんで一美が二人もいるの?」
 なんて、とんでもない声を上げる。その声にクラスのほぼ全員が振り向く。
 そして、皆が一美と僕に気付いて、急にザワザワし始める。
「ちょ、ちょっと、落ち着いてよ。今、訳を話すから。」
 一美が慌てて制したけど、時すでに遅し。クラスの大半が周りに集まって
きてしまった。
 そして、それからが大変だった。まあ、大騒ぎになるだろうことは半ば予
想してたから、驚きはしなかったけど、でもやっぱりこういう騒ぎの渦中に
巻き込まれるのは、あまりいいもんじゃないし、その騒ぎの中心になるのは、
もっといやだ。
 で、一美が説明して、僕が博美だってことが判ってもらえて、しばらく喧
噪状態が続いたあと、それも飽和して少し静まってきたころになって、よう
やく騒ぎから抜け出せそうな雰囲気ができてきたので、トイレに行くふりを
して抜け出した。
「ふう、勘弁して欲しいぜ。まったく。」
 とりあえず、形だけでもトイレに行って、そのあと、皆から外れて座って
た健司と康司の隣の席に座って、机に突っ伏しながら、ため息をついた。
「お疲れさん。でもまあ、仕方ねえだろうな。皆、初めて知ったんだからさ。」
 そこへ一美も来て、
「やっぱり、大騒ぎになったわね。」
 と、一息ついた。
 その頃には皆、いくつかのグループに分かれて話を始めていた。
「おい、健司、何やってんだよ。」
 そんな声に誘われて健司が、そして康司も一美も、それぞれのグループに
混じって騒ぎ始めた。
 僕は、そのまま机に突っ伏して、ため息をついた。もう、あんな大騒ぎは
いやだ。
 と、そこへ、沢田がやってきて、
「なあ、一美、ちょっと、外で話がしたいんだけどさ、いいかな。」
「一美なら、そっちだよ。」
 机に顔を伏せたまま、手だけ動かして指し示してやる。
「あ、なんだ博美か。なあ、悪いんだけどさ、博美からも言ってくれないか
な。」
 ……なかなか未練がましい奴だな。こいつは。
「残念ながら、ご期待には添えないと思うよ。一美の方は完全に気持ちの区
切りをつけちまったみたいだからね。それに、恋人もできたことだし。」
 一応起きて、沢田の方に向き直って、やんわりとお断りしてやる。
「なんだって? おい、本当か? その相手って誰なんだよ。」
 沢田は、僕の言葉が予想外だったらしく、僕の肩を激しく掴んで問いただ
す。
「いてっ。ちょ、ちょっと離せよ。いてえじゃねえか。」
 いきなり肩を掴まれて、沢田の激しい態度にちょっとあせった。と、それ
に気付いた一美が、
「ちょっと、博美をどうしようっての?」
「あ、一美、ちょうどいいや。ちょっと、外で話がしたいんだけどさ。」
「呼び捨てはやめてって言ったでしょ。それに、あたしの方は何も話したい
ことなんかないわよ。」
「おい、恋人がいるって本当か?」
「ええ、本当よ。でも、もう関係ないでしょ。」
「誰なんだ? そいつは。」
「誰だっていいじゃない。」
 そのやり取りが聞こえたらしく、康司もやってきて、
「おい、どうしたんだ?」
 なんて聞いてくる。沢田は、
「康司、お前には関係ないんだ。引っ込んでてくれ。」
 なんて言ってるけど、実は大いに関係があったりする訳だ、これが。
「ちょっと、こういう話をするには場所が良くないな。一美ちゃん、ちょっ
と外に出ようか。」
「うん。」
「ほれ、沢田。お前も一緒に来な。」
 そして、康司と一美と沢田の三人が外に出て行った。心配なので僕も後か
らついて行く。
「さてと、ここらでいいかな。おい、沢田。一美ちゃんに何の用だ?」
 校舎の裏手の人気の無いところで、康司が向き直る。
「康司、お前には関係ない筈だ。ちょっと引っ込んでてくれ。」
「そうはいかない。俺も自分の彼女くらいは守ってやりたいからな。」
「なに? じゃあ、一美の恋人って……。」
「そう、康司のことなんだ。だから言っただろ。ご期待には添えないと思うってさ。」
 康司の代わりに僕が答えてやる。
「博美。お前、判ってんなら、なんで言わないんだよ。」
「あのなあ、沢田。いきなり肩を掴んで痛い思いさせといて、そんな状態で
何を喋れってんだ?」
「てめえ、俺をからかう気かよ。」
 沢田の奴、半ばヤケになって僕にからんでくる。
「いや、博美は事実を述べたまでだ。最初に一美ちゃんに悲しい思いをさせ
た、お前が悪い。」
 突然、健司の登場。どうやら、様子が変なのに気付いて、後を追ってきた
らしい。
「うっ、健司まで。くそっ!」
 どうやら、分が悪いと思ったらしい沢田の奴は、逃げ出すようにして教室
に戻っていく。
「康司くん、ありがと。」
「まあ、俺にも関係あることだしな。それに、一美ちゃんのためならね。」
「もうやだあ、康司くんたらあ。」
 一美、康司にじゃれつく。こういう場面って、見てる方は恥ずかしいんだ
よね。

−−− まだあるよ −−−




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