#1129/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (XMF ) 88/ 8/28 0:30 (100)
夏休み>【ブルー・ネットワーク】(9)コスモパンダ
★内容
(8) 黒 い 海
この海域全体が異次元にでも放り込まれたようだった。
そんな台詞がぴったりとくる光景だった。
さっきまで、積乱雲を運んでいた洋上の風がピタッと止まった。
大洋の大きな波も、ほとんど見えない。海流が止まったかのようだ。
真っ青な空に積乱雲がもくもくと高く、横に広がり、海を覆い尽くした。
太陽の光は暗雲に遮られ、夜が訪れた。
エメラルドグリーンの海はどす黒いブルーに変わっていた。
耳をすますと、耳が痛くなる。
騒音で痛くなるのではない。無音なのだ。風も波もない。空を飛ぶ鳥もいない。
★ ★ ★
無音の海域で唯一音を立てているのは、西田達の乗った沿岸警備隊のヘリだった。
イルカ達が立てる白い水飛沫の範囲が小さくなっていく。
「何が起こってるんだ?」後藤がわめく。
「イルカが密集している。陣形を固めているんだろう」と西田。
「何をだって!?」
「陣形だ。知らんか? 合戦の時の兵や武器の配置」
「イルカが槍や鉄砲でも持ってるって言うのか? 壇の浦の合戦でもやるのか?」
「隊長。ブルー202です」
副操縦士が、後藤と西田の会話に割り込んだ。
見ると、白い海と黒い海の狭間の五十メートル上空に、白い機体にブルーのストラ
イプが水平に二本入ったヘリが浮かんでいた。
「父さん、僕だよ。ケンだよ」
無線からは思いもかけない声が飛び出した。
「ケン! お前か。無事だったか。怪我は?」
「大丈夫だよ。元気。リーとヒトミさんも一緒だよ」
「マッカートニー博士、聞こえてますか?」
西田はできるだけ冷静にと声を抑えた。
「はい、所長。聞こえます。黙って飛び出してすみません。事情を説明している暇が
無かったんです。それにリー君まで引っ張り出して、すみません。ご心配かけました。
どのような処罰でも受けます。だから二人は叱らないでください」
雷を落とそうとしていた西田だが、ヒトミの言葉に先を制せられた。
「た、大変だ! 海が、海が……」後藤はそのあと、声が出なかった。
黒い海が、山が隆起するように盛り上がってきたのだ。
それは、一辺五十メートルの菱形で、厚みは五メートルはあった。厚みと言ったの
は、それが空飛ぶ小島のように完全に海から飛び上がっていたからだ。
その四辺からは海水が滝のように周囲に落ちていた。
菱形の先端に、縦二メートル、横五メートル程の黒い穴が開いた。その穴の中には
無数の鋭い牙が並んでいた。
その口の先には、ヒトミ達が乗ったヘリがいた。
ヘリは蛇に睨まれた蛙のように動きがぎこちなかった。
猛烈なエネルギーがヘリを襲っていたのだ。
★ ★ ★
それは強烈な怒り、怒り、怒り………。
怒りが、陽炎のように大気の中を漂っていた。所々、局所的に怒りの波動が強い塊
が生まれた。形の無い筈の怒りにぼんやりと形が具わり、やがて手で触れられるほど
になった。それはピクピクと蠢く肉塊だった。
肉塊が大きくビクンと痙攣した途端、それは青黒い肉汁を飛び散らして四散し、中
から数百匹の魍鬼達が次々と飛び出してきた。
魍鬼の身体は嫌らしい赤と緑のブチで、蚊トンボのように細長い手足と、やたら膨
れ上がった腹、異様に大きい瞳の無い三つ目がへしゃげた頭に付いていた。
魍鬼達の吐き出す息は紫色のガスとなって空中を帯状に漂う。
ヘリを怒りの熱波が襲う。顔面を恐ろしい熱で焼かれ、操縦士の男は両手で顔を覆
った。その顔の皮がズルッと剥け、ぼろ切れのように垂れ下がる。
次第に紫色のガスの輪郭がはっきりしてくる。ガスは鋭い刺が無数に付いた赤黒い
肉色の蔦になった。その蔦が男の全身を締めつける。
たちまち、服は裂け、裂け目から覗く素肌に刺がギリギリと食い込む。無数の赤い
水玉が肌に浮かび上がる。
刺のある蔦は蛇のように、ますます強く激しく全身を締めつける。
その一本一本の刺が、赤い血を吸い、蔦は蠕動し、捩じくれながら成長する。
刺は細く細く伸び、皮膚を裂き、皮下脂肪を貫き、肉を抉りながら肋骨を抜け、内
蔵に達する。
肺を貫いた刺は、ドクドクと動く心臓をも貫く。刺に貫かれたままの心臓は断末魔
の痙攣をしながらも、全身に血を送り出す。
針ネズミのようになった身体を仰け反らせ、喉に込み上げてきたものを吐き出す。
真っ赤な泡を吐き出す口から、血でてらてらと光る数本の蔦が蠢きながら現れる。
その男の陰茎を魍鬼がかじっていた。
それでも犠牲者は死ねない。大気を震わす怒りは、肉体だけでなく、魂までも磨り
潰し焼き尽くさずにはおれないのだ。
裸の若い女が、凌辱されていた。
無数の蔦に全身を締めつけられ、蔦に絡まれた両足は左右に大きく広げられていた。
女の股間には一際太い、子供の腕ほどもある蔦が入り込んでいた。刺のかわりに松
の根のような瘤が表面を覆ったその蔦が、ヌチャヌチャという音を立てて激しく女の
身体を出入りする。肉質の蔦が抜挿される度に、女体は夥しい愛液を溢れさたチPノ:0ョH(,恫垈=詰蝋.6v'震わせ、頭を激しく反り返らせていた。
もう一本の太い瘤のある蔦が、女の背後からもう一つの狭い間隙に強引に押し入っ
てきた。その激痛に「うっ!」と呻いた女の口をこじ開け、コーラ瓶のように太い三
本目の蔦が喉の奥までゾロリとめり込んだ。
豊かな二つの胸の脹らみは刺の付いた蔦に絞り上げられていた。ずるっずるっと蔦
が激しく強く白い肌を締めつける。ワイヤーソーのような刺が皮膚を切り裂き、柔ら
かい脂肪層を断ち切っていく。鮮血が傷口から溢れ、女の胸を真紅に染めた。極限ま
で締め上げられていた乳房は、熟した瓜が落ちるようにボトッと、女の胸板から千切
れ落ちた。
その肉片に魍鬼が群がる。クチャクチャと生肉を咀嚼する音が、犠牲者達の魂の叫
び声と一緒になって聞こえる。
更に魍鬼が真っ赤な口を開け、新しい犠牲者達に襲い掛かる。
子供は生きたまま魍鬼に頭からかぶりつかれていた。右手は既になく、左手は別の
一匹が二の腕をかじっていた。更にもう一匹が腸を掴み出しては口に運んでいる。
犠牲者の身体から流れ出す夥しい量の血やリンパ液、体液が川のように流れ、半開
きになったヘリの扉からドクドクと溢れていた。
犠牲者の体液は下で待ち受ける巨大な口に注がれ、黒い海は一層黒さを増した。
ねっとりと絡みつく赤い大気の中で無数の魑魅魍魎が蠢いていた。
女の股間から太い蔦が勢いよく引き出された。いつの間にか蔦の瘤は刺に変わり、
女のそこは裂けて、血と愛液で汚れ、見るも無残になっていた。
刺は膣をズタズタに切り刻み、柔らかい襞を抉り、引き千切りながら出てくる。真
っ赤に濡れた蔦は、最後に握り拳ほどの肉塊を掴み出した。
それが、自分の子宮であることに気付いた時、ヒトミは喉が裂け、血が飛び散るほ
ど絶叫した。
−−−−−−−−−−−(TO BE CONTINUED)−−−−−−−−−−