#1119/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (XMF ) 88/ 8/16 21: 4 ( 89)
夏休み>【ブルー・ネットワーク】(2)コスモパンダ
★内容
(1)イルカと少年
<#ーーーッ?>
<$!>
<&&&===@>
<(((¥)))>
「アッハハハハ……」
「なんだい、ケン、また来てたのか」
「やあ、リー。ハハハ……」
「何がおかしいんだよ」
「だってさ、イーの奴、小魚が喉につっかえたって、騒いでたんだ。そしたらさ、ロ
ーがでんぐり返りすればいいって、言ったもんだから。イーの奴、さっきから水から
飛び上がっちゃ、宙返りしてたんだけど、目を回してやんの。ほらっ」
二人の目の前の水面を、ほっそりした鎌状の背ビレが蛇行していた。
海水パンツ姿の二人の少年達は、ひょうたん型のプールの丁度括れた辺りにいた。
一人はまだ、小学生くらい。もう一人は中学生か高校生。ノッポとチビの二人だが、
真っ黒に日焼けしている。昨日、今日、海岸で焼いたという程度のギャル達とは訳が
違う。地黒といった方が確かだ。裏表が分からない。
ケンと呼ばれた年下らしい少年は、プールサイドに腰掛けて足を水につけていた。
彼の膝の上には、最近発売された薄型で防水のラップトップパソコンがチョコンと
乗っていた。そのラップトップには、短いアンテナが付いていた。
「ケン。イーとローに言ってくれ。今からプールの掃除をするから、暫く沖で遊んで
来いって」
ヒョロ長いリーが、ラップトップの大型表示器を覗き込みながら言った。
「オーケー」ケンは防水キーを軽快に叩く。
<C=W,P.LW>
<??+!>
得体の知れない文字の列が表示器に現れた。
<L.P.T.W.M?>
<!!>
<(((¥)))>
スーッと、背ビレが足を水につけているケンの所までやってきた。彼は、ラップト
ップを隣にしゃがみこんでいたリーに渡すと、水の中に飛び込み、背ビレが生えた濃
いグレーの身体に飛びついた。
ケンは背ビレに掴まったまま、かなりのスピードでプールから海に出ていった。
クワァ・クワァ・クワァハハハハ……。
リーの目の前の水面に一頭のハンドウイルカが頭を出していた。
「駄目だよ、イー。仕事なんだ。ケンと遊んでおいで。掃除が終わったら遊ぼう」
イルカは、ケケケケケケ……という笑い声のような鳴き声を上げて、リーを誘おう
と頭を何度も上下させた。仕方なしにリーはラップトップのキーを叩いた。
<#*=!+A+q>
クワァハハハハ……。
イルカは、ようやく諦めて沖に向かって泳ぎ出した。
途中、イルカは海面から高く飛び上がった。
水飛沫が上がった。空中を舞う水滴は燦々と降り注ぐ太陽の日差しを受け、キラキ
ラと輝いた。
真っ青な空と、エメラルドグリーンの海は、水平線の彼方で溶け合っていた。
ローに乗ったケンは、もうかなり沖に出ていた。
★ ★ ★
海洋研究センターの屋上からは、ひょうたんプール、亜熱帯植物の繁茂するミニジ
ャングル、熱帯魚のいる水族館、大型の海洋動物達の餌となる小魚のイケス、などが
見渡せた。
「マッカートニー博士、リーは働いてるかね?」
振り向いた彼女のサングラスに、麻のスーツの上下に身を固めた男が写った。
白いワンピースの水着の上に羽織った黄色いヨットパーカーから、小麦色を通り越
して真っ黒に焼けた肌が、はみ出していた。スラリと伸びた手足、高く突き出した胸
からヒップにかけてのラインは、蜂のように細いウエストで括れていた。
「西田所長、『博士』って呼ばないでってお願いしませんでしたっけ?」
「おっと、いかんいかん、そうだった。ヒトミさんだった」
「さん付けで呼ぶ必要はありませんわ。ヒトミで結構です」
ヒトミ・マッカートニーはひょうたんプールの周りを掃除している少年に視線を戻
した。
「ええ、彼は真面目ですよ。それに頼りになります。アルバイトじゃなく、正規に職
員として採用なさったら如何でしょう?」
「私にはそんな権限はないよ」
「でも、あなたは、このナハ海洋パークの所長じゃありません?」
「人事権は本社にある。私は単なるイケスの番人だよ」
「でも、ここのイケスは大きいですわ。このひょうたんプールは太平洋とつながって
るんですもの」
ヒトミはサングラスを外し、頭に乗せた。
彼女のブルーの瞳が、西田をまともに見つめた。彼は少し戸惑ったような表情をし
た。若い女性の前に出た時の中年男のはにかみだった。
「イルカは元気になったかね?」
「イーとローですか? ええ、もう元気一杯ですわ。傷ついたローに付き添っている
イーを見つけて、ここに連れて来て、もう半年になりますもの」
「どこかに行ってしまわないのかな?」
「あの二頭は群れからはぐれたんでしょう。あるいはここが気に入ったんでしょうね。
どこかに行く素振りは全然見せません。ケン君のいい遊び相手ですわ」
「まったく、イーとローが来てから、あいつはここに入りびたりだ。夏休みの宿題は
済んだのかな?」
「子供のことを知らないようじゃ、いいおとうさんとは言えませんね」
「まったく、面目ない」
「所長の口癖は『まったく』ですのね」
「まったく…」
西田は頭を掻いた。
ひょうたんプールでは、リー一人が柄付タワシでプールサイドを磨いていた。
−−−−−−−−−−−(TO BE CONTINUED)−−−−−−−−−−