AWC 夏休み>【ブルー・ネットワーク】(1)コスモパンダ


        
#1118/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (XMF     )  88/ 8/15  20:21  ( 99)
夏休み>【ブルー・ネットワーク】(1)コスモパンダ
★内容
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☆            【ブルー・ネットワーク】            ☆
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☆    「この物語を海に消えた全ての人々に送る」   by  コスモパンダ
☆                                    ☆
☆ MAIN THEME    ”MAJESTIC” from "MAJESTIC" NAOAYA MATSUOKA
☆                      1988 WARNER-PIONEER CORPORATION (CD 32XL285)   ☆
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                 プロローグ

 太陽が真上から燦々と降り注いでいる。午後二時を少し廻った頃である。
 大海原に一隻のキャビンクルーザーが浮かんでいる。投錨しているようだ。
 金を掛けられるだけ掛けたクルーザーだった。
 全長15・28メートル、全幅4・19メートルの純白の船体。フライブリッジ後
方には、無線アンテナやフラッグポール、風向、風力計の付いた特徴のあるウイング
が突き出ている。
 別名「海のロールスロイス」と呼ばれる、リーバ50HP・スーパーアメリカであ
る。
 エンジンは大型タンカーのエンジンで実績のあるMAN社の510psディーゼル
を二基搭載しており、最高速度は三十一ノットを出す。
 リーバのキャビンクルーザーは、単に高速性やシャープな回転性といった基本性能
だけでなく、トータルな走行フィーリングを目指して設計されている。
 と同時に、その徹底したオリジナル指向が根強いファンを持つ秘密でもある。
 凝りに凝った調度品は、選び抜かれたものばかりであり、ギャレーに備えられてい
るグラスからナイフといった小物まで、リーバ・オリジナルである。
 船体後部のトランサムにはクレーンが付いており、ピレリー社製の純白のインフレ
ータブルボートがセットされていた。
 また、キャビンは一部改造されており、スキューバダイビング用のエアボンベを約
五十本積み込めるようになっている。
 華麗でエレガントな船体に、数々のオプションを装備したこのクルーザーのオーナ
ーの格が知れるというものである。
 このクルーザーの価格は二億五千万円、オプションを含めると約三億円である。
 そして、オーナーの収入も判るというものである。
 しかし、オーナーの人格とか徳といったものを想像するのは、このクルーザーから
は難しい。
                ★ ★ ★
「加藤、倉田と橋本はどうした。まだ戻らんか?」
 フライブリッジでバックトウバックシートにふん反り返っている腹のでかい中年男
が、トランサムで作業をしているクルーに尋ねた。
「野村さん、そうせかさないでください。水中作業は大変なんですよ」
「ふんっ、分からんぞ。やつら、お宝を見つけても知りませんと報告しようと、企ん
でるんじゃないか?」
「ダーリン、少しはクルーを信用したら?」
 甘ったるい猫なで声で、そのでかい腹の上に顔を擦り寄せている女がいる。
 黒地にピンクのワンポイントをあしらったハイレグのパスタスイマーに身を纏った
身体は小麦色に焼け、素晴らしいプロポーションの持ち主だった。
「麗子、そう言ってもな。わしは、なかなか人を信じないたちでな」
「あらっ! じゃあ、あたしも信じないの?」
「お前は別じゃよ」
 野村は、麗子の頭を撫でた。
「嬉しい」
 あほらしくてやってられない話だが、クルーザーの船体で一番高いフライブリッジ
の光景は誰にも見えない。
                ★ ★ ★
 クルーザーの停泊している海面下二十メートルでは、二人のダイバーがいた。
 贅沢にも水中無線を装備したスキューバセットを持っている。
「この辺りのテーブル珊瑚は、なかなか上物だな。直径十メートルは軽くある」
「いいのかな、持ってっても。ここらは、珊瑚の保護海域なんだろう?」
「いいんじゃないの。こんなに繁殖してるんだ。ほんの少し分け前を貰っても怒る奴
はいないさ」
「とっとっと、おいっ、これはなんだ?」
「どうした?」
 二人のダイバーは海底の一部の極端に違う風景に声も出なかった。
 その辺り一帯の海底の珊瑚がある筈の所が、何かに抉られたようになっていた。
「ドロップオフか?」
 ドロップオフとは、海底で急に切り立った崖のようになった部分や、珊瑚や岩にポ
ッカリと開いた垂直な縦穴のことを言う。しかし、これは明らかに違う。
 相当な広範囲に渡って、海底の珊瑚が無かった。それだけではない。海底に降り積
もっている筈のマリンスノーもなく、海底の岩肌が見える。どうもその辺りだけ、海
底の砂や岩ごと、ごっそりとパワーシャベルで削り取ってしまったようだった。
 珊瑚が群生している海底と比べると、深さ五メートル以上も海底が沈下していると
いうか、抉られたようになっていた。
「違う、こいつは今まで埋まってた何かを掘り出したような跡だ」
「掘り出した? 一辺五十メートルの菱形で、厚さが五メートルもあるものが、この
海底に埋まってたって言うのか?」
「そうだ」
「誰が掘り出したんだ? 俺たちより派手に珊瑚を持っていく奴がいるのか?」
 突然、海底が暗くなった。日が陰ったのだろうか?
「おっ、おいっ! あっあれは何だ!?」
 二人のダイバーが海底から見上げると、今までクルーザーの船底が見えていた頭上
の部分が真っ暗になっていた。急に天井ができたようだった。
 同じ頃、クルーザーの上でも同じ騒ぎをしていた。
「野、野村さん、大変だ!」
 クルーの加藤が騒いでいた。フライブリッジで麗子といいことをしていた野村は、
気分を害した。麗子も白けたようだった。裸の胸を隠そうともせずに、長い髪の毛を
両手ですいていた。
「馬鹿野郎ーっ。何だ。ガタガタ騒ぐな。倉田と橋本が戻ったのか?」
「海、海を見てください!」
 野村は海水パンツを履いて立ち上がると、フライブリッジの手すりに近寄った。
 野村は絶句した。
 クルーザーを中心に直径五十メートルの範囲の海が真っ黒になっていた。その円の
外は、エメラルドグリーンのままだった。
「海が黒い」
 野村が呟いた瞬間、十トンのクルーザーは物凄い力で空中に投げ出された。

−−−−−−−−−−−(TO BE CONTINUED)−−−−−−−−−−




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