#1089/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (DRH ) 88/ 7/11 23:54 (128)
「Final Dream」 Tink
★内容
空はいつものようにネズミ色のどんよりとした雲に覆われている。
太陽がまえに顔を出したのはいつのことだろうか…?、地上は酸の
雨が毎日ふりそそいでいた。
町並みを見ると建物という建物には酸での腐植防止の為の、特別
な塗料が塗られている。
また川や海などをみてみてもそうだが、魚などはとうの昔に死滅
している。そして色などはほとんど黒に近い緑で、臭いは腐廃臭が
漂っている。
これら全ては人類が生活排水や、工業排水などを川や海にたれ流
したりして、地球を汚染してしまったからである。
これは、この世界に住む一人暮らしをしている理菜と言う少女の
物語である……。
☆
理菜は窓から外の景色を眺めていた。窓からはどんよりとした流れて
行く雲と、道を行く人々が見えるのである。
理菜は心臓をわずらっているのでろくに外出も出来ない、だから窓か
ら道を流れてゆく活気ある人々を見るのが好きであった。
町を見上げるると色々な色のネオンサインが見える。きれいな、それ
でもって冷たい雰囲気の町、しかし理菜はこんな町の雰囲気が嫌いであ
った。
(そろそろ彼が来る……。)
理菜は唯一の友達の……病院で知り合った雄一を待っていた。
雄一はそのとき怪我で病院に来ていたそうである、そして病院で理菜
をみるとニッコリと微笑んで話しかけてくれたのである。
『こんにちわ、俺、来島雄一って言うんだ、怪我で病院に来たんだけ
ど君はどうしたの……?』
『え……?、あの……、私水上理菜、心臓の病気でここに通っているの』
『理菜さんか、よろしく!』
『ええ……。』
そんな感じで知り合ってから雄一は、理菜の世話を色々としてくれた。
熱を出したりしたら看病しにきてくれたり、理菜の食事を作ったりと。
そんなことを考えているとドアのベルがなった。
「はぁ〜い」
理菜は玄関に行き、扉を開けた。
扉は小さくきしんで開いた。
「理菜さん、起きてて大丈夫なの?」
「ええ、どんな薬よりもあなたの顔をみてる方がよっぽどいいわよ」
「あはは、でも僕の顔なんかみてて、心臓発作でもおこしたらどうする
んだい?」
「うふふ、それならそれでもいいわよ、あなたの顔を見ながら死ねるも
の」
「おいおい、あんまり縁起の悪いこと言わないでくれよ、」
「とにかく上がって、散らかっているけど」
☆
へやに上がると雄一は、紙袋の中の本を取り出して理菜に渡した。
「これは…?」
「この本は旧時代のことについて色々書いているんだよ、是非とも理菜
さんに読んでもらいたくて持ってきたんだよ。」
「有難う」
理菜はにっこりと微笑みながらそう言った。
雄一はほかに料理の為の色々な材料を出して料理にとりかかると言っ
た。
理菜はそんな彼の後ろ姿を見るのも好きだった。
そして小さくつぶやいた。
「あたし今幸せよ。」
「ん……?、なんか言った?」
「うんん、なんでも無いの」
(そう、今時が止まってくれれば本当にいいのに……)
☆
雄一が帰ると早速その本を読みだした。その本には世界大戦以前の、
色々なことが載っていた。
それは、緑の有る山や、澄んだ川や海、青い空や白い雲……、それ
は今では一切考えられないことばかりであった。
そして理菜は、一度でいいからそんな世界へ彼と行きたいと願った。
青い空の下の海辺で彼と走りまわれたらどれほど幸せであろうか?
しかし理菜はそんな所へ行くばかりか走りまわることも出来ないと
分かっていた。
☆
理菜の心臓は限界であった。そして治療するにも、もう手遅れであ
ろう。理菜はもう分かっていた。自分が助からないと言うことが。自
分にはもう時間が無いことが……。
(もうすぐ彼が来る……、それまで……、せめてそれまで生きさし
て!)
理菜は絶対神に願った。せめて死ぬのなら彼の顔を見て死にたいと。
そして雄一が来た。雄一はドアを開け、そして青ざめた。床に倒れ
ている理菜を見付けたのだ。それから雄一は理菜を起こした。
「大丈夫か!?」
「あたし……、もう駄目と思う、自分のからだのことくらい自分でも
わかるもん……。」
「いいから……、しゃべるんじゃない」
「あたし、本当に幸せだったわよ、だって、あなたと知り合うことが
できたもん……」
「とにかく薬を、」
「おねがい、ここにいて、あなたの顔を見ながら死ねるならあたし…
本当に幸せだもん」
「理菜……、おれはお前になにもしてあげられなかった」
「うんん、そんなこと無い……、あなたはあたしに優しさをくれたで
しょ……?、そう、一人で暮らしている私には本当に嬉しかったもの」
「理菜……」
「あたしたち生まれかわってからもずっと一緒……よ……ね………」
「理菜ァ〜っ!!」
それが理菜の聞いた最後の言葉であった。
そして理菜の意識は次第に遠のいて行った。そして理菜は遠のいて行
く意識の中で夢を見ていた。
☆
理菜と、雄一は太陽の下で、砂浜で、河原で、森で……、楽しく、
走りまわり、澄んだ空気を胸一杯に吸い込み、そして心臓の為に何も
出来なかった分……、このような時代に生まれてしまった分、理菜は
雄一と心いくまで遊んでいた。
理菜はそして微笑みながら雄一の前で息を引き取った……。
End
一応前に書いた物語の焼き直番です。といっても大分話が違います
が、それにしても暗いはなしですね、我ながら困ったものです。
これの元になった(前に書いた)物語の題が「ゆめ」なんですよね、
これでこの話を「夢 −Dream−」ってやると、ドひんしゅくを
かうだろうなぁ〜と、書いているときに思ったのでした。
それにしてもテスト中に勉強もしないでこんなことばっかりしてて
良いのだろうか……?
とにかく明日でテストが終わるので「闇 -Darkness-」の続きを書
こうと思っています。
また、よろしければ是非とも御感想を聞かせて下さいね。
では、
DRH58031 Tink