AWC 『リブルの翼  第4回』  甲斐石太


        
#1080/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (LYF     )  88/ 7/ 9  23:43  ( 85)
『リブルの翼  第4回』  甲斐石太
★内容
 しばらくの沈黙ののち、ステリアが口を開いた。
 「そう言えば、こんな話が家に伝わっているの……」

 その話とは…
  昔、まだラムラウス王国が建国されていなかった頃。人々の頂点に立つのは、神の
 声を聞き、神の力を授かることのできる巫女たちであった。が、戦いと知性をつかさ
 どる神である龍神が、そういった巫女のひとりに恋心を抱き、人間に姿を変え、巫女
 に近づいていった。が、ふとしたことでそれが発覚し、龍神は神々から追放され、そ
 の巫女もまた、一介の魔道師となり行方をくらませたという。龍は神の座を追われた
 ことで怒り狂い、地上に降りて暴れ始めた。そんな時、一人の若者が神より授かった
 緑色の宝石のような剣を手に、龍を倒した。実はその若者は罪深き龍と巫女の間の子
 であり、地上で悪い限りを尽くす父を、自らの手にかけたのであった。人々は彼を英
 雄と呼び、この地を治めて欲しいと言ったが、彼は
  「またいつの日かこの地に災いがもたらされる時、我が血を引く者がこの剣をとり
 災悪を打ち払うであろう」
  そう言い残し、姿を消してしまった。彼が残した剣は音もなく崩れ去り、柄の部分
 だけが残った。時がその剣を必要とする時剣は形となり、勇者の血を引く者の手に渡
 るであろう、 そう言い伝えられた。

 「私の家は、その巫女の血を引いてるんだって」
 そうステリアは結んだ。
 「じゃぁ、リブルがその龍の血を引く者ってことか?」
 「でも、それじゃ、リブラルタ=フロル=ラムラウスはいったいどこにいるの?私の
家が龍の血を引いているなんて、聞いたこともないわ。家系図だって見たことあるも
の。…もしかしたら、あの噂… 本当だったのかしら」
 その噂とは、例の、リブラルタは王家の本当の娘ではないというものである。
 「さあ、それは何とも言えないわ。でも、今はそんなこと気にしている時じゃないは
ずよ。私たちにはするべきことがあるわ」
 ステリアはいつになく冷たい感じで言った。
 「わかった。とにかく、先へ進みましょ。こんな所で時間を潰している暇はないわ」
 リブルは無理に明るい表情をつくって、言った。
 とにかく、一行はさらに洞窟の奥へと入っていった。かなりの時が過ぎ、相当深い所
まで来た時、目の前が明るくなった。そこは巨大な広間になっており、その奥で何かが
光を発していた。それはまるで祭壇のようであった。近づいてみると、それは緑色の大
きなクリスタルであった。
 「何か書いてあるぞ… この地にその者復活せし時、我が血を引く者のみこれに触れ
るべし…… 何だこりゃ? いったい誰のことだか、さっぱりわからん。」
 「いいえ、わかるわ」
 ステリアが思い当たったように言う。
 「その者…… これは龍の地を引く者、つまりリブルよ。そして我の血を引きし者…
これを書いたのは、あの巫女に違いないわ」
 そう言うと、ステリアはクリスタルに手を伸ばした。その手が触れた瞬間、閃光が
放たれ、三人は気を失った……

 ステリアはその声を聞いた。それは、どこからともなく響いてくる、女の声だった。
 『よく来てくれました。あなたは神の子と力をともにし、悪を倒すのです。今、私は
あなたに私の力をすべて託しましょう』
 「リブルは… リブラルタは本当に、龍神とあなたの子孫なのですか」
 『その通り、だから、あなたと神の子とは血でつながっているのです。二人の力が
ひとつとなった時、何かが起こるでしょう……』
 その声は、徐々に遠のいていった。そしてステリアはそれとともに意識を取り戻し
た。

 気がつくと、三人は洞窟の外にいた。すでに嵐はやみ、日の光があたりを照らしてい
た。
 「いったい、何が起こったんだ……」
 ラックスはまだ目が覚めきらぬように言った。
 「とにかく、先を急ぎましょう。これ以上の長居は無用よ。」
 リブルはそう言って歩き出し、二人もそれに続いた。
 半日ばかり歩いただろうか。三人はとある村に着いた。もう夜も近いため、宿を
求めようとあたりを見渡すと、一軒の家が何やら騒がしい。ちょうど通りかかった村人
に尋ねると、そこは村の長の家で、そこの一人娘が不治の病を得、床に臥しているらし
い。
 「とにかく行ってみよう、何か力になれるかも知れない」
 そう言ってリブルたちは家を訪ねた。
 わらにもすがる気持ちでいた長は、早速わけを話した。何でもその病というのは、い
かなる薬をもってしても治ることなく、しかも病人はすぐには死なず、永い間苦しみぬ
かねばならないという、まさに悪魔の病であった。
 「実は、ただひとつ方法があるのですが……」
 長の言うその方法とは、ドラゴンのうろこをすりつぶして飲ませればよいというもの
であった。
 「ドラゴンか… それなら、すぐに治してみせましょう」
 「ちょっと、リブル、まさかあなた…」
 「やってみる」
 リブルはそう言って、剣を抜くと天に高く掲げた。剣が一閃したかと思うと、天から
一条の光が伸び、リブルにふりそそいだ。その時、リブル自身光と化し……成功した。
そこにあるのはリブルの姿ではなく、美しく澄んだ赤色のドラゴンであった。
 「おお…… これは… 古き言い伝えのとおりじゃ、神の子がこの世に復活したの
じゃ………」




 つづく………





前のメッセージ 次のメッセージ 
「CFM「空中分解」」一覧 山下の作品
修正・削除する         


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE