#1042/1850 CFM「空中分解」
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真リレー>B 第12回『2人の危機』/光子
★内容
啓介と真紀の2人は群れの真ん中に連れていかれた。
「みんな目がおかしい、普通じゃないよこれは・・・」啓介は真紀に囁いた。
「そうね、きっと佐々木の魔術にかかっているんじゃないかしら。佐々木は過去に全日
本魔術大会で順優勝したほどの腕の持ち主だから・・」真紀も少し脅えていた。
「そういえば、昼に町で見掛けた人たちも、どうも虚ろな感じだった・・・」啓介は思
い出しながら言った。「で、そのとき優勝したのは?」
「バビル2世よ」
「何を喋くっておるのだ!」群れのリーダーらしき男が言った。上半身は裸で、頭はつ
るっ禿だ。「聞かせてもらおうか、何者だ?お前らは」
「た、ただの通りがかりです」啓介が上ずった声で言った。
「嘘をつけ!こんな夜中に山のてっぺんでなにが通りがかりだ」
「私たち、旅行にきてるだけなの」真紀が言った。「あなたたちとは関係ないでしょ。
このことは見なかったことにするから放して」
「馬鹿め、旅行者はみんな捕虜にしてあるわい。そっちがその気ならいいだろう。委員
長の所へ連れていってやろう」
男は指をパチンと鳴らした。さっきの銃を持った2人の男がやってきて、啓介と真紀
の背中に突き付けた。
「いくぞ」
林の中に入り、少し歩くと、それがあった。洞穴の入り口。4人は飲み込まれるよう
に、その中に入っていった。
中はどうやら、基地になっているようだった。突如、広い空間が表れた。大勢の人間
が何かを唱えている。儀式をしているようだ。その人々の前方には、祭壇があり、巨大
なドクロが置かれてある。そしてその横に一人の男が立っていた。佐々木洋介である。
啓介と真紀は、彼のもとへ連れていかれた。
「誰?この人たちは?」佐々木は不愉快な表情で言った。
「わかりやせん」ハゲの男が言った。「俺たちが集まっているところをこっそり覗きや
がったんで」
「何者なの?あんたたち」佐々木は啓介と真紀の前に立った。「まあ、かわいい」彼は
啓介の頬をなでなでした。
「委員長!」ハゲの男が叫んだ。
「あら・・ごめんなさい。場所を間違えたようね」佐々木は背筋を伸ばし、何度か2人
の前を往復した。「いいわ、あんたたちが言わないなら、言わせるまでよ」
佐々木は祭壇の横手にいる槍を持った男に目で合図した。
すぐに祭壇の袖から何人かの男が2つの椅子をかかえて持ってきた。
「お座んなさい」
禿の男がその椅子に座った。
「あんたに言ったんじゃないの!」佐々木は叫んだ。「まったく、トンマなんだから・
・・ほら、お前たちよ。さ、座りなさい」
啓介と真紀は銃を持った男に脅され、言われるままに座った。佐々木は椅子を持って
きた男にまた目で合図を送った。男はうなずき、2人の手足を椅子に錠で縛りつけた。
「何をする気?」真紀が言った。「こんなことをされる筋合いはないわ!」
「お黙んなさい」佐々木がきっぱりと言った。「あんたたちが本当のことを言わないか
ら悪いのよ。こうなったら喋るまで拷問の苦しみをたっぷり味わうといいわ」
「拷問だって?」啓介が言った。「待ってくれ。何もそこまでしなくても・・・」
佐々木は構わず次の合図を出すと、別の男が10人ほどやってきた。皆、手に板や擦
ガラスを持っている。
男たちは啓介と真紀を取り囲んだ。
「始めなさい」佐々木が冷たく言い放った。
男たちは板やガラスを2人の方に向けた。板だと思っていたそれは、小型の黒板だっ
た。男たちは耳栓をすると、やにわに腕を上げ、黒板やガラスの上に爪を立てた。そし
てゆっくりと手を動かした。
「ウワーーーーッ」啓介の悲鳴がこだました。真紀も耐えられずに悲鳴を上げる。
黒板と擦ガラスの出す悪魔の叫びが、容赦なく2人を襲った。
「言えば楽になるわよ」佐々木が言った。
「言うもんか!」啓介が歯を食い縛りながら言った。「そう簡単に言っては行数が稼げ
んじゃないか!言わないぞ!」
2人は、10分にも及ぶ苦痛に耐えた。最後には男たちが疲れ始めていた。
「もういいわ」佐々木は冷たい表情を崩さず言った。「やるわね、あんたたち。でも次
はどうかしらね」
男たちはひっこみ、また別の男が数人、入ってきた。そして2人を取り囲んだ。
「やめて!今度は何をする気よ!」真紀が叫ぶ。
「ほほほ、やめて欲しければ喋ることね」佐々木は男たちに合図を送った。
男たちは2人に近付いた。そして、ある者はわきの下、ある者はわき腹、また足の裏
などをこちょこちょとこそばし始めた。
「うわーーーーーっはっはっはっひっひっひっひいいいいい」啓介の笑い声がこだまし
た。真紀も耐えられずに笑いだす。「ぎゃあああっはあっはあっひいいいっひっひっ」
男たちは容赦なく責め続けた。2人は腹が捩れるほど笑った。
「もうだめだ!やめてくれええ、はあっはっはっはっ」
「言っちゃだめよ!ひっひっひっはっはっはっ」
2人はこれまた10分にも及ぶ責め苦に耐えた。
「こしゃくな」佐々木は不愉快そうに呟いた。「次!例の4人を連れてらっしゃい!」
彼は明らかにいらついているようだった。一方の啓介と真紀も、2つの拷問を経て、
へとへとに疲れていた。
佐々木に呼ばれ入ってきた4人は、みな汚らしく、いやらしそうな目つきをしていた
。
「始めなさい」佐々木がそう言うと、4人の男は2人づつに別れ、啓介と真紀に近付い
た。
男たちはぐったりとした啓介と真紀の顔に自分たちの顔を近付けた。そして口を開け
、ゆっくりと息を吐き出した。
「ギャアアアアアア!」今度は真紀の方が叫ぶのが早かった。しかし啓介もほどなくし
て悲鳴を上げた。
「ほほほほほ、今だかつてこれに耐えられた者はいないわ」佐々木は嘲笑いながら言っ
た。「彼らはこの20年間、歯も磨かず、うがいさえすることを拒んで口臭を鍛え上げ
たのよ。去年など、全日本口臭大会で優勝を争ったほどの強者ぞろいよ」
ハアアアアアア。男たちの出す地獄の口臭に、2人は身悶えた。
「分かった!喋るよ!だからやめてくれえ。お願いだから・・・」啓介が必死にそう言
った。真紀は失神寸前だった。
結局、正直な啓介は洗いざらい喋ってしまった。
(つづく)