AWC 真リレーB>第5回 ドアの向こう・・・   SOPHIA


        
#1018/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (WYJ     )  88/ 5/19  23: 0  ( 55)
真リレーB>第5回 ドアの向こう・・・   SOPHIA
★内容
「やめろ、どこへ行く。無駄だ!」
 後方に涌きあがる罵声と警備陣を残しつつ、啓介はビルに向かって一直線に駆け
出した。
「あいつを、捕まえろ!」
(ふざけんじゃねぇ、無駄なもんか、絶対に間に合ってやるぞぉ〜っ)
 掴みかかる手や、降り下ろされる警棒、威嚇の銃弾をかいくぐり、足元にかかる
タックルをかわして啓介は走った。

 ただ目標のビルだけが、啓介の視界にあった。
 足元には既に消えてしまったビルの中から飛び散ったのであろうロッカーや机、
書類等の瓦れきがどこまでも続いている。
 その中にノッポなビルが一本だけそびえ立っているのだ、その様子はかなり異様
な雰囲気をかもし出している。
 啓介は、ただただレコーダーを目指して、それらを乗り越えていった。

 しかし、どうした訳なのだろう。
 さっきから、走っても走っても目指すビルに近付いているような気がしない。
 夕べからの無理のせいで意識が薄れてでも来たのだろうか、ビルがぼんやりと遠
ざかって行くような気すらする。

 5分、あと5分なんだぞ・・・いや、もう5分はない!
「ちくしょーーぉっ・・・」
 うめいた拍子に足をとられ、啓介はもんどりうって転んでしまった。
 追っ手が気になり、慌てて後ろを振り返る。すると・・・

「げっ!」
 何もない、見渡す限りの・・・瓦れきの地平線・・・「荒野」?
 追っ手の姿も、ざわめく群衆も、車も駅も・・・後ろには何も無かった。
 しかし、前を見るとビルはある。
しかし・・・見つめるビルは、やはりドンドン遠ざかってゆくようだ・・・。
 さすがの啓介もこの異様な光景にすっかり毒気を抜かれてしまった。
「俺のタイム・レコーダー・・・」
 全力疾走で乱れた息を整えながらボソっとつぶやくと、啓介は力の抜けた手足を
大の字に放りだした。
 だが諦めきれず起きあがってビルを見る。

 ふと啓介は遠くのぞむ本社ビルの窓から、明るく蛍光灯の光がもれているよう
だと気付いた。
 あのビルには電気まで通っている?・・・すなわち、タイム・レコーダーも刻
々と時を刻んでいるという事だ。
 そうだ、あの中ではタイム・レコーダーがにっこり微笑んで啓介を待っている
のだ。
「きょ、今日こそは・・・黒々とした印字で俺のカードを飾ってやるんだ・・・
諦めるもんか・・・ふ・・・ふっふっふ・・・ふふ。」
 不気味な笑いを浮かべながら、やっとの思いで膝を立て、啓介は立ち上がった。
目を閉じて精神力を振りしぼり、力なく精一杯の一歩を踏みだす。

−−−−− ゴンッ !
「あ・・・あれ?」
 そのトタン、啓介は何か冷たいものでしたたか顔を打った。

 いつの間にか啓介の鼻の先には大きな、ガラスのドアがあった・・・。
見覚えのある・・・これは・・・本社ビルの・・・
「正面玄関!?」
                            《つづく》




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