#1015/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (BMD ) 88/ 5/17 7:35 ( 80)
真リレーB>第3回 そして啓介は走る COLOR
★内容
「あぁ・・・こんなことだったら会社に泊まり込んでおけば良かった!」
神田川博士に無理矢理軽トラックに積み込まれた啓介は助手席の大男と神田川博士
に聞こえるような声で愚痴をこぼしていた。しかし返事の変わりに帰ってきたのは博
士の咳である。
啓介の合っているかわからない腕時計の針はそろそろ7時20分に差し掛かろうと
していた。これは本格的にヤバいではないか!!
正確な時間を知りたくなった軽介は目の前にあるラジオのスイッチを押した。
『繙繝K繝K繙繝Kガ縺x
軽介はダイヤルを調節しようと試みるが一向に雑音しか入ってこない。
「博士、このラジオ壊れてますよ?」
「ゴホッゴホッ、バカ者めが、東京タワーなんざ真っ先に消えていったわい、ゴホッ」
「あれれ? だってさっきTVに出てませんでした?」
「ゴホッ、親父に似ておかしな事をいう子じゃのぉ。電気が止まっとるというのにT
Vが観れる筈がないではないか」
「それもそうだ」
軽介は余計な事を考えるのをやめた。そして肝心な今すべき事を思い出すように軽
く目を閉じ………目を閉‥‥‥ZzZzZz・・・!!!
徹夜の後遺症のためにウトウトしかけた啓介はハっと目を開けた。なんだか夢まで
見たような気がする。
慌てて啓介は靴下の匂いを嗅ぎ脳味噌に程好い刺激を与える事に成功した。そして
決して悪くは無い刺激を与えられた脳味噌で状況を判断しにかかる。
「「「俺がいくらあがいたってこの事態を収拾できる筈もない。そうだ、俺にとって
大切なのは給料明細のケタが多いか少ないか、それだけなんだ。
啓介は半分寝ている全身の細胞を執念で叩き起こし、気合いを入れた。そして大男
めがけてダイブ・・・いるつもりではあったが、取り押さえられそうなので神田川博
士の方向の開いている窓に掛声も高らかに飛び込んだ。
「減給なんてどわいっきらいだぁ〜〜〜〜〜っ!!!」
イマイチ方向が狂ったが、啓介はなんとか窓から飛び下りた。
「よぉし、タイムカードONっ、タイムカードONっ!」
啓介は自分に掛声を掛けると会社のある方向・・・東に向かって走り出した。
もちろん後ろでハンドルを取られた軽トラックが電柱にぶつかっていようと、それは
さしたる事ではない。あ、またビルが弾けたか。
啓介は山手線の線路を見つけると線路沿いに歩き始めた。歩くこと以外にすること
もないためか再び妄想に浸っていった。
うんうん、きっと課長の奴め驚くぞ。そうしたら黒のタイムカードをさり気無く課
長のデスクの上に置いといてやろう。ふふふっ。
で、早くついたらちょっと掃除なんかして、遅くきたOLどもの目を覚ましてやろ
う。「あたし以前から露木さんて、他の社員の人達とは一味違うと思っていたのよ。
お昼一緒して頂けません?」「あら、私が先よ・・・ねっ」「え〜〜〜ズルいわ」
そーしたら俺は言ってやるんだ。「フっ、君たちもっと自分を大切にしたまえ」
なんてなっ!!へへへ 照れちまうぜ。
隣でマンションが消えているというのにまったくいい御身分である。
思い出し笑いしながら駅を通過したので、駅員に詰め寄っていた乗客達が一瞬静まり
かえったなどという事さえも、彼は気にも止めていなかった。いやひょっとしたら単
に気がつかなかっただけかもしれない。もしかしたら先程の靴下臭の副作用なのかも
しれない。皆様は決して真似しないようにね。
ピッピ、ピピピーーーーーーッ
耳元で鳴らされた笛の音で我にかえった啓介はそこが自分の会社近くの駅だという
事を悟った。もし笛がならなかったら通り過ぎていたかもしれない。
啓介はお礼を言おうとしたが、その男・・・警察官はキッと啓介を睨み啓介の口を
封じるとこう言った。
「ここより先は最重要国家機密により立ち入り禁止だ」
なるほど周りを眺めると自衛隊やら、警官やら、機動隊やら、内閣調査室やら、C
IAやらKGBやら・・・もっとも徹夜明けの啓介の目にはそう映っただけであって
本当にCAIやKGBなのかはわからないが、異人さんか゜混じっているのは間違い
ないようであった。そして更に右を見ると記憶の隅にあるような軽トラックが停車し
ていた。
啓介は野次馬根性で顔を上げ立ち入り禁止の先を眺めてみると・・・なんと我社の
ビルが無傷でそびえたっていた。
それを見るなり啓介は反射的に
「俺は会社に行くんだぁっ!!!」
と絶叫し群がる警官隊に突入した。そして見事突破すると一路愛すべきタイムレコ
ーダの待つ我社へと自衛隊、警官隊等を引き連れ疾走していった。
残り時間は後5分弱・・・
<つ・づ・く>