#987/1850 CFM「空中分解」
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コンピューター嫌いのかあちゃん教育体験記 <とうちやん>
★内容
コンピューター嫌いのかあちゃん教育体験記 EQH67563 <とうちゃん>
おじゃまします。かあちゃんに離婚されたくないと思っている「とうちゃん」です。
ここは、アマチュアライターズクラブということですので、どうしたら将来、かあち
ゃんに離婚されずにすむか、みなさんの貴重なご意見を伺いたいと思っておじゃまし
ました。こう云う話は他人の意見を拝聴するのが最善と考えますのでよろしくお願い
致します。SIGOPの方に、不適当と判断されましたら、早々に退散致します。お
手やわらかにお願いします。話をするにも糸口がなければなりませんので、今回は、
コンピューターを通じてのとうちゃんとかあちゃんのかかわり合いをご紹介したいと
思います。
酒と女性と飯とおなじ位にコンピューターが好きなとうちゃんは、かねてから、かあ
ちゃんのコンピューター教育の機会を窺い続けておりました。
とうちゃんの1日は、毎朝寝床の中で目が覚めると同時に天に向かって叫ぶ、「今日
も元気にコンピューターしよう!!」という言葉から始まります。
ところが、例えば日本舞踊といった様な散文的な趣味を持っているかあちゃんは、「
恐ろしい」の一点張りでコンピューターを全然受け付けようとはしませんでした。
ところで、とうちゃんの家の近所に「○○産業○○支店」があります。この会社の本
社は九州にあり、従業員は若い夫婦だけというこじんまりとした支店なのです。
奥さんは、女優の「東 照美」に非常に良く似たなかなかの美人です。
最近のOA化の波はこの零細な支店にも容赦なく押し寄せてきました。ある日のこと
、とうちゃんは支店長(といっても彼女のご主人)からワープロの文書を打つよう依
頼を受けたのです。手書き文字では、出入りしている会社に対して新製品の宣伝がし
にくいというのがその理由でした。
「チャンス到来!」と、とうちゃんは思いました。とうちゃんは、この奥さんをだし
にして、かあちゃんのコンピューター教育を思いつくと同時に、この美人の奥さんの
顔を間近に見、その色香に酔いしれながらご教授申し上げる自分の姿を思い描いてい
たのです。ちなみにとうちゃんのデスクトップ型コンピューターはベッドルームにあ
るのです。
とうちゃんは支店長に「あなたの奥さんにわが家のコンピューターでワープロ教育を
致しましょう」と教育を買ってでたのです。もちろんとうちゃんは心の中では、彼女
と仲が良いかあちゃんも一緒に教育しようと決心していました。
まず、とうちゃんは、週末に2日かかりで第一次教育を行いました。2人は「せい」
とインプットして、「性」とCRTに出た文字を見ながら、たのしそうにおしゃべり
をしていました。とうちゃんは、2人に練習問題を与え、次の週のウィークデーは自
習させました。もちろん夜はとうちゃんが質問を受けました。また次の週末にレベル
アップ教育を行い、その後1カ月程、連載物の新聞記事を打たせました。
ところが嫌いなものは、やはり続かないもので、2人共いつの間にか止めてしまいま
した。とうちゃんがコンピューターの話をしても、ただ「オホホ、オホホ」と笑って
いるだけなのです。
その時、とうちゃんは天を仰いで嘆いたものです。「おお、神様、助けて賜え!!」
これが1昨年の夏のことでした。
しかしながら、酒と女性と飯とおなじ位にコンピューターが好きなとうちゃんは、決
してかあちゃん教育をあきらめたわけではなく、次の機会を虎視耽々と狙っていたの
です。
去年の12月、「毛筆わーぷろ」が発売され、とうちゃんはこれに飛びつきました。
とうちゃんは、毛筆関連のソフトには以前から興味があったのですが、字体がいまひ
とつという感じで、それまでは使う気にはなれなかったのです。毛筆わーぷろの行書
体を見たとき、とうちゃんは、「これだ!」と思ってすぐに購入しました。
そして、日本舞踊の先生に胡麻を摺って、いずれ名取になろうと思っているかあちゃ
んに、「日本舞踊の発表会」のプログラムの構成・編集を、とうちゃんが無料奉仕で
請け負うことを買って出たのです。この発表会には先生がとても力を入れていました
。
とうちゃんの思惑通り、それは招待状、ポスター、会場内(市民会館)の貼紙、来賓
の方々へのお礼状にまでエスカレートしていったのです。
先生が発表会の1カ月程前に来賓の方々に招待状を配り始めた頃から、反応が現れは
じめました。
毛筆で自分の宛名が書かれている立派な招待状を見た来賓の方々から、絶賛の言葉を
聞かされた先生は、大満悦でした。議員さんや諸先生方の挨拶を盛り込んだプログラ
ムも毛筆わーぷろの原稿を写真製版した後、製本をしたものとし、22頁にわたる立
派なものになりました。それでいやが上にもこの発表会の格が上がったのです。
先生にしてみれば数多の競争相手に打ち勝つためには、これは非常に重大なことでし
た。
そこで、かあちゃんの低い鼻が、鼻高々となりました。隆々と盛り上がってくる様を
、とうちゃんはまざまざと見たのです。!
この瞬間をとうちゃんは待っていたのです!!
発表会が近づくにつれてとうちゃんのワープロ作業が忙しくなりました。しかし、帰
りが遅いウィークデーは、とうちゃんは毛筆わーぷろ作業が出来ません。
そこで、とうちゃんは、かあちゃんにおもむろに申し渡したのです。「私は今、1年
中で1番仕事が忙しい時期で、ストレスで身体の具合いも悪くなってきたし、風邪気
味だし、これからは、おまえを頼りにせんとあかん。私が今から毛筆わーぷろを教え
るから、おまえは早く覚えて先生の期待に応えないかん。」
かあちゃんにとっては、亭主はいかにあろうと、先生の期待に応えられないといった
最悪の事態はなんとしても避けねばなりません。常日頃、かあちゃんはTVのCMよ
ろしく「タンスにゴン、タンスにゴン、亭主丈夫で留守がいい。早く名取になりたい
な」と歌っているのです。それからの彼女は必死でした。阿修羅のごとく、またたく
間に毛筆わーぷろをマスターし、発表会は大成功でした。
発表会当日は、とうちゃんも客として招かれましたが、とうちゃんは連日の疲れが出
たのか風邪でダウンして、出席できませんでした。かあちゃんが会場に出かけた後、
寝床の中で光熱のために、うんうん云いながら、天に向かって「かあちゃんも元気で
コンピューターしよう!!」と叫んでいました。
時は、まさに、1988年3月5日のことでした。