#967/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (DGJ ) 88/ 4/10 19: 9 (100)
「R.N.S.」<プロローグ1> Fon.
★内容
「Rpg.Novel.Story.」<プロローグ1> by 尉崎 翻
「ふざけるんじゃ ないわよっ!!」
ドンッと、カウンターへ拳がたたきつけられた。
この町、レルブではわりと名の知られており、主に戦士系の人間が出入りして
いる酒場[M・バスター]。
旅街道、商街道など四本の有名道が通る町の酒場だけあって人種も様々である。
夕飯の時間をちょいと回った時刻で酒場は活気づいていた。
何処までが本当か判らないような自分の冒険談を自慢する戦士、仲間と陽気に
しゃべってる騎兵士。静かに一人でのむ闘士。片隅で天にとどかせるような美声
で歌う歌詩人。
と、そんななかで冒頭の怒鳴り声が響いたのである。
「なにが、『チームワークが乱れる』ですってぇ!? だれがいたおかげでいつ
もピンチを切り抜けてたと思ってんのよ!!」
ガチャーンと、カップの割れる音。
カウンターにいるこの娘。
年頃は20才弱。スラッとした体形であるがプロポーションはまあまあである。
女性にしては珍しい事に、戦士の格好をしており腰に長剣をつけている。
肌は南方出身らしく小麦色、キリッとした眼でなかなかの美貌であった。
さて、
この娘のいるカウンターの周りには被害から逃れるためか人がおらず、横には
空瓶が10本程無造作に置かれていた。中身はおそらくこの娘の体に収まったに
違いなかろう。
「・・・ったくもぉ。コップ、おかわりっ!」
カウンター内にいるこの酒場のバーテンらしき若い男に向いて叫ぶ。
バーテンはおどおどしながら、ゆったりとした口調でしゃべる。
「む・・娘さん、その位にしといたほうがよいのじゃ・・・」
「あんですってぇ?」
娘の言葉にバーテンはビクッと数cm飛び上がった。
「む・す・め・さん ですってぇ!?」
「え、いや・・その・・・・」
娘の眼は完全にすわっていた。
「そーよ、どうせあたしは女よ。女の戦士でなにが悪いっての!? だれがグル
ムやっつけたってのよ。 鎧だって特注しちゃ悪いっての!? なんで男用の武
器や防具ばっかり多くて女用のはないの!? 気にいらないわ、おもいっきり!
だいたいねぇ、あのチームは あたしがいたから持っていたもんじゃないの、あ
たしがいなかったら 1冒険だって出来やしないにきまってんだから、チームワ
ークも へったくれもあるもんじゃないわよ! 女だからって馬鹿にしちゃって
さ! そーよ、どうせあたしは女よ。(六行前にもどる)・・・」
脈絡のないセリフの洪水でバーテンは、おそるおそるその場を離れようとした。
「ちょっと、聞いてるのっ!?」
グイッと、逃げようとしたバーテンの首を娘がつかみ引き寄せた。
「は・・はいっ!」あわてて、バーテンが返事をする。
「あらっ?」寄せたバーテンの顔を娘はじっと見た。「あなた、だぁれ?」
完全完璧に娘は酔っていた。
「よぉ、ねーちゃん」
定石通り。パターン。先がよめる。平凡なストーリー。(なんとでも言え)
と、その時娘の肩に手を置く者がいた。娘が振り返ればそこには2メートル近
い男がつったっていた。ガッシリとした体で顔は天地がひっくりかえっても善人
には見えない、顔には都市の地下鉄路線図のごとく傷がある。
「なにそんなにあれてんだぃ。こっち来て一緒に飲まねぇかい」
いやらしい笑いかたで肩を引っ張る。その男の後ろには仲間らしきやつらが数
人たむろっていた。
一瞬、間が置かれた。
「消えな」
「なんだと?」
「消えろっていってんだよ」
「消えろだと?」
男の顔が変化する。
「なにをいってやがる。ねーちゃん・・・」
男がもう片方の腕を娘の肩へ伸ばしたとき、バシッと娘がその腕を手で弾き飛
ばした。それに乗じてバーテンは逃げ出した。
「もう一度だけいうわよ。消えな」
男は自分の手と娘の顔をジッと見た。みるみるうちに顔色が変わる。
「このアマっ、下手にでてりゃつけあがりやがって!」
男の右の拳が動いた。目標は娘のこめかみ。瞬間、娘の姿が男の視界から消え
去った。
下だ。左脚を曲げ右脚は既に男の膝に直撃させていた。
目標を失った男の右拳の勢いが体のバランスをあっけなく崩す。娘は体を半回
転させる。右肩が男の胸に当たり右手はミゾオチをヒットしている。
「ぐえっ・・・・」
男の喉から声が漏れた。娘はそのままの勢いで男をカウンターの向こうへ投げ
飛ばした。男は壁に叩きつけられ頭から床に落ちた。
一瞬のことに男の仲間はポケッとしていた。
「て、てめぇ!」
ようやく現在の事態を認識し仲間がグルリと娘をとり囲んだ。
「よくもやりやがったな!」
グルリとみわたす。人数は五人。
左右の二人が娘に襲いかかる。娘はヒラリとジャンプしそれをよけ、ふりむき
ざまにヒジで敵の後頭部を打った。同時に左脚をもう片方の男の顔面を直撃させ
る。
あと三人。
真後ろから迫った敵に右ヒジをミゾオチなヒットさせる。急所を少しも外さな
いそのテクニックは、並の戦士のそれではない。
あと二人。
ギロッと娘が二人をにらむ。
敵は二人ともたちすくんでいた。
「ふん」
むすめが微笑する。
「わかってるの? あなたたちはこのあたしに喧嘩を売ったのよ!この女戦士の
ティスタ・レグーストにね!」
と、そう叫びあげた時。グラッとティスタの体が傾いた。
腰砕けの如く床に崩れ落ちる。
「は、はれぇ・・・?」
グターっティスタは床にうつぶせになったまま意識が急に遠のいた。
未成年。
飲んだ酒10本以上。
飲酒後、大暴れ。
そのツケが脚から腰、そして全身に回った結果であった。
<つづく>