AWC トゥウィンズ・1 十章 (3/5) (32/34)


        
#906/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (VLE     )  88/ 3/11  21:53  ( 98)
トゥウィンズ・1 十章  (3/5)  (32/34)
★内容
「一美ちゃんも康司も、そこにいるよ。」
 目だけ下に動かすと、二人共、椅子に座ったまま僕のベッドにもたれかかり、
うつ伏せになって眠っているのが見えた。
「二人とも大丈夫なのかな?」
「少なくとも、お前よりは症状が軽いからな。今は疲れて眠ってるだけだろう。」
「あ、そうそう、マース侯の軍勢はどうなったんだ?」
 これにはマイア姫が答えてくれた。
「皆さんのお陰で全員捕らえることができました。今は皆、牢獄につないであり
ます。」
「そういうことだ。ま、しばらく休めや。体力が回復しないことには何もできな
いだろ。」
「ああ、そうだな。」
 どっちにしても身動きが取れない状態なので、そのまま、また眠ってしまった。

 次の日、一美と康司は、すっかり元気になって、健司と共に僕の枕元で話をし
ていた。
 僕も上半身だけはなんとか動かせるようになっていて、ベッドの上に座ったま
まで話をすることくらいはできるようになっていた。
 なんとか朝食も終えて、四人でいろいろと話してたら、またマイア姫が息を弾
ませながら部屋に駆け込んできた。
「一体、どうしたんですか?」
 いつもと違って、ただひたすら慌てまくっているマイア姫を見て、ちょっと不
吉な予感がした。
「あ、す、すいません……。また、大変なことが……。」
 マイア姫は激しく息をしながら、なんとか言葉を絞り出す。
「えっ? また? こんどは一体どうしたんですか?」
「あ、あの……。また、反乱です。」
 なに? 昨日マース侯が攻めてきたばかりなのに、また反乱だって?
「えーっ? またあ? 今度は誰よお。」
 一美が、思わず叫ぶ。無理もない。僕も気持ちは同じだ。
「マース侯に味方する貴族の連合軍を中心にして一般の人達が集まってきている
んですが、どうしようもない状態なんです。」
「どうしようもないって、マース侯の軍勢よりも強力なんですか?」
「いえ、おそらく戦力としては昨日より劣っていると思います。ただ、一般の人
達も一緒なので、下手に手出しができないんです。」
「そんなの蹴散らせば済むことじゃないのか?」
 健司が、ちょっと苛々した感じで口をはさむ。
「とんでもない。中心になっている貴族の軍勢になら立ち向かえますけどね。他
の人達は、ただ踊らされてるだけなんですよ。罪もない人達を巻添えにはできま
せん。」
「だけどさ、このままだと、こっちがヤバいんだろ?」
 健司は、まだ少し苛々してる。
「ええ。それで、女神様のお力をお借りしたくて。」
「そんなあ、女神様の力っていったって、あたし達、そんな力もってませんよ。」
「そうですよ。僕に何ができるっていうんですか?」
「いえ、実際の力って意味じゃないんです。女神様が姿を現せば、殆どの人は戦
いを止めると思うんです。そうなれば、あとは私達の軍勢だけで戦うことができ
ます。」
 僕と一美は顔を見合わせて、ちょっとため息をついた。
「仕方無いですね。で、マイア姫。どこに行けばいいんですか?」
「城壁の上です。反乱軍は、まだ城内には入ってきていないですから。」
「じゃ、一美、行こうか。」
「まあ、仕方ないわね。」
「おい、博美。行くって、どうやって行くつもりなんだ?」
 健司が突然、口をはさむ。
「えっ?」
「お前、歩けないだろうが。」
「あ、そうか。どうしよう。」
「じゃあ、あたしが連れてってあげる。」
 そう言って、一美は僕を背負って行こうとする。
「ああ、もう危なっかしいなあ。俺が連れてってやるよ。」
 一美が僕を背負おうとして、ふらついているのを見て、健司が代わってくれる。
「そう? じゃあ、お願いするわ。」
 一美が、ほっとした表情で僕を降ろしてバトンタッチ。僕は健司に背負われる。
「それじゃ、行きましょうか。」
 一美と康司と僕は、それぞれに自分の玉やペンダントを手にして、マイア姫を
先頭に城壁の上に向かった。
「また迷惑かけちまって、ごめんな、健司。」
「ま、いいってことよ。」

 城壁の上に着いて、外を見おろすと、まあ、どっから集まってきたんだか、ど
えらい数の人々が集まっていた。そして、僕達の姿を見た途端、口々に騒ぎだす。
 奴らを殺せ、ひきずり出して火あぶりにしろ、門を壊せ、壁をぶち破れ、等々、
どう聞いても、あまり好意的とは思えない言葉の数々に、思わずたじろいでしま
う。
「マイア姫。もしかして、これ全部が反乱軍ですか?」
「ええ、おそらくそうだと思います。」
 突然、矢が飛んでくる。
 マイア姫は、それをものともせず、叫んだ。
「無礼者! ティアの女神様に向かって矢を射るとは、何事じゃ!」
 その言葉で、あたりは一瞬、静まりかえった。同時に、健司と一美と僕の手に
していた玉とペンダントが全部、光を放つ。
 その光を見た途端、殆どの連中はどよめき、ひざまずいて祈るような格好を始
めた。
 所々で、立ったまま、こちらをにらんでいるのは、マース侯の息のかかった貴
族の兵士だろう。
 そして、反乱の中心になっている貴族の軍勢を除いた一般の民衆は、すっかり
戦意を失なって、ひれ伏していた。
 マイア姫も僕達四人も、残った軍勢の方をにらみつけた。
 矢がバラバラと飛んでくる。それにつれて四個の玉は、ますます光を増し、僕
達四人の体は青白い光で包まれた。マイア姫の体も余波で青白く光っている。
 僕の持っていた玉はいつの間にか大きな透明の楯に変わり、飛んできた矢を皆、
弾き落とした。
 と、それ以上、射かけても無駄だと思ったのか、矢はピタリと飛んでこなくな
った。
 しばらく軍勢とのにらみ合いが続く。と、後ろで騒ぎが起きた。

−−−− 続く −−−−




前のメッセージ 次のメッセージ 
「CFM「空中分解」」一覧 あるてみすの作品
修正・削除する         


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE