AWC トゥウィンズ・1 六章 (1/3) (17/34)


        
#889/1850 CFM「空中分解」
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トゥウィンズ・1 六章  (1/3)  (17/34)
★内容
六章

 どれくらい経ったんだろう。誰かがノックしてる音で目が覚めた。
「お疲れのところ、申し訳ございませんが、ちょっとよろしいですか?」
 扉の外から声がする。
「はい、どうぞ。何でしょうか?」
 ベッドから起き上がると同時に扉が開いて、一人の召使いさんが入ってきた。
「お休みのところ、本当に申し訳ございません。実は、殿の子息であるディモス
殿が、ぜひ女神様にお会いしたいとのことなのでございます。皆と一緒に生き返
りはしたのですが、どうもお加減がよろしくないとのことで、先程はお目にかか
れず残念だと言われておりました。それで、できれば一度お目にかかりたいとの
ことなので、申し訳ございませんが、いらして頂けないでしょうか?」
「はあ。それじゃ、一美も呼んで来ましょうか?」
「いえ、お一人で結構です。」
 この時、一美も一緒に連れていってれば、もうちょっとマシな結果になってた
かもしれない。
「では、こちらです。どうぞ。」
 召使いさんに案内されるまま、ついていくと、ある部屋の前に着いた。
「女神様をお連れいたしました。」
「うむ、入れ。」
 扉の中から声がする。
「どうぞ。お入り下さい。」
 召使いさんに言われるまま、部屋に入ると中にはマース侯がいて、ベッドの上
には割と育ちの良さそうな顔をした若い男が一人横になっていた。
「おお、参られましたか。ま、そちらの椅子にどうぞ。」
 僕はマース侯に勧められた椅子に座る。
「紹介しましょう。これが我が息子のディモスです。」
 マース侯が、ベッドの上の男を指す。
「はあ、よろしく。」
 僕は、どうしたらいいのか判らなかったので、ピントはずれの返事をしてしま
う。
「では、父上。あとは私が。」
「そうか。では、あとはお前に任せよう。」
 ディモスの言葉に対して、マース侯はそう言うと、そのまま部屋を出ていった。
「さて、女神殿。えーと、何とお呼びすればよろしいかな?」
「博美です。」
「では、博美殿。実は少し話がありましてな。ぜひ聞いて頂きたいことなのだが。」
「何でしょうか?」
「実は、我が一族は、この辺りで一番の勢力を持っておりましてな。隣のプラネ
ット公や、さらにその隣のソーラ王と比べても領地が広いのだが、残念なことに
権力があまり強くないのです。そこで、周りの連中に対して、何か力が欲しいと
思っていたところなのですが、ちょうどそこに博美殿、あなたが参られたのです。」
「はあ?」
 なんだか、話の筋がよく見えない。
「そこで相談なのですが、博美殿。私と結婚をして頂けないでしょうか。我が一
族に女神が加われば、周りに対して十分な力の誇示ができ、我が一族は安泰にな
ります。」
「ええっ?」
 なんか無茶苦茶な話の展開に、思わず声をあげてしまう。
「最終的には我が一族で、この国を治めたいと思っておりましてね。それにはぜ
ひ女神である博美殿の力が必要なのです。」
「じょ、冗談じゃない!」
「そう、冗談なんかじゃありませんよ。」
「あんたは、女神の力が欲しいって理由だけで、結婚するって言ってんのか?」
 頭に来たので、思わず普段の言葉遣いに戻ってしまう。猫かぶりもここまでだ。
「勿論、そうですよ。他に何かありますか?」
 冗談じゃない。人をバカにするにも程がある。こんな馬鹿げた理由で結婚する
奴はいないだろう。
「バカバカしい。誰がそんな理由で結婚するか。それに僕には、結婚する気なん
て全くないぜ。」
「そうですか。でも残念ですが、あなたはもう私と結婚するしかないんですよ。
あなたが結婚を承諾しない限り、この部屋からは出られないんですからね。」
「ちょっと、お宅、気は確かか?」
「勿論ですよ。まあ、あなたくらいの器量があれば、我が一族に入るのにも申し
分ないし、それに父上も承知しています。」
「バカにするんじゃねえよ。そんな無茶苦茶な理屈があるか!」
「でも、今も申し上げた通り、あなたは、それを断わることが出来ないんですよ。
それに、あなたが断わり続ける限り、この部屋からお出しする訳にもいきません
しね。ただし私と結婚すれば、どんな贅沢も思いのままになりますよ。」
「あいにく、こちとら贅沢には慣れてないもんでね。いくら贅沢ができるなんて
言われたってピンと来ねえんだよ。」
「やれやれ、そうですか。ま、数日、この部屋に監禁されれば、少しは判るでし
ょう。もし気が変わったら、いつでも呼んで下さい。」
 そう言ってディモスは扉をノックする。すぐに鍵がはずされる音がして扉が開
いた。ディモスはそこで振り返って、
「そうそう、一言だけ忠告しておきます。もう少し喋り方には注意した方がいい
ですよ。女性たるもの、そんな言葉遣いはいけません。」
「はん、どんな言葉を使おうと、あんたには関係ないだろ。」
「やれやれ。」
 ディモスは肩をすくめながら出ていこうとする。僕はディモスの後ろから飛び
かかろうとしたが、あっさりとかわされてしまった。
そしてディモスは振り向きざまに僕を突き飛ばし、
「無駄な行動はおやめなさい。疲れるだけですよ。」
 そう言って出て行った。扉が閉まると同時に、外から鍵が掛けられる音がした。

 一方、一美は、一休みしたあと、僕の部屋に来たらしい。だけど僕がいなかっ
たもので、しばらく待ってみたけど、いくら待っても帰ってこないので、心配に
なって康司を呼んで、その辺にいた召使いさんをつかまえて聞いてみた。と、あ
とから一美が話してくれた。
「すいません。あの、博美がいつまで経っても帰ってこないんですけど、何処へ
行ったか御存じではありませんか?」
「あ、もう一人の女神様ですね。あの方は今、ここの若い領主となられるディモ
ス様の看病をしておられます。」
「は? どういうことですか?」
「マース侯の子息であるディモス様が、こんど新しい領主となられるんですが、
その方は今、病で伏せっておられまして、その看病ということで、付いて頂いて
おります。まあ、私の見た所では、ディモス様の病っていうのは恋の病ではない
かと思われますが。」

−−−− 続く −−−−




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