AWC 再発表]《南シナ海上の武士》【11】 ひすい岳舟


        
#866/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (FEC     )  88/ 3/ 1  18:58  ( 70)
再発表]《南シナ海上の武士》【11】    ひすい岳舟
★内容
                           南シナ海上の武士(11)
 「撃てぃ!!」
  ドグォォン!!
  ゲアリス号の右第11砲頭が正面の対馬号を狙って炎を吹いた.撃ち出された光
の球は対馬号をすり抜け,むこう側の海へ突っ込んだ.
  ジョグォォン!ドドォー
  海面下で弾は爆発し,海が輝き,次の瞬間,とてつもなく大きな水柱がたった.
 「だめです!!奴らの船が近付き過ぎて砲ではねらえません!!」
 「では,銃で撃ったら良かろうが!!」
  船長ははぎしりした.

  水柱が崩れ,対馬号に降りかかる.海水はマスト,帆,ヤードに激しくぶつかり
白く泡立ちながら甲板へ落ちていった.
  ドドドォゥン
水は甲板に自らの体をたたきつけ,鈍い音を響かせた.甲板のものは全て,ずぶぬ
れとなった.
 「奴らの砲は強いわい!」
  大板が悪態をついた.とその時・・・・・・・・・
  パァパパパパパン!パパパパン!
  軽火器の爆音が上から聞こえたかと思うと,次に銃弾が雨のごとく降り注ぎ武士
を襲った.彼らは,先程の大水で甲板にたたきつけられたままの体勢であったため
,マフィアにとって好都合だった.船の縁にずらりと並んだ白人どもは,調子づい
た.
  キーン!ドヒューンドヒューン!
大砲に当たった弾は跳ね返り船体に食い込んだ.熱弾が甲板を砕き,武士の体にも
・・・・・・・・・
 「うっ!!」
 「大丈夫かぁ!」
 「なんの,うっ!これ・・・しき」
 「くそったれ毛唐人めがぁ!」
  狂弾が彼らを釘づけにし,それゆえにねらわれ,そのために砲の僅かな影に隠れ
なければならなかった.弾雨は対馬号の甲板をボロボロにし,デコボコにしつつあ
った.流れ弾が彼らにあたり,衣に血がパァッと染みわたる.体の中に電撃にも似
た衝撃が駆け廻り,気が遠のこうとする.しかし,傷口が火であぶられたように痛
みを発し,そう簡単には気を失わせてはくれなかった.海水が傷口を刺し,衝撃が
駆け廻り,気が遠くなりかけ,痛みが気を取もどさせる−−−その連続だった.
 「よぉし,船を乗っ取れ!」
 「縄梯子を持ってこい!」
  水夫長の叫ぶ声と同時に,カラカラカランと縄梯子が落とされた.梯子は対馬号
の後部甲板まで届いた.次々にゲーベル銃を持った水夫,砲手,士官が伝い降り始
めた.
 「奴らがくる」
 「船長!舵を!!」
 「やむを得ん!船をはならす」
  小倉は,船をはならすと奴らの砲撃が始まるということを承知で,舵を回すこと
を決断した.面舵にきられた対馬号は,急速に弾雨の中を脱した.
 「今だぁ砲手!!撃ち方用意!!縄梯子の者早く上がれ!」
  巨大戦艦甲板では,乗員が仕事に大わらわであった.弾薬庫から弾の詰まった木
箱が担ぎ出され,大筒のかたわらにずらりと並べられた.弾が箱より取だされられ
らの正体を掴み,オンボロ船に最大の報復を与えようと意気揚々であった.
 「目標60メートル」
 「よおし,一斉砲撃開始!」
  ドグォン!ドグォドグォン!ドグォン!
  ゲアリス号の巨砲が爆音を轟かす.白い大量の硝煙が後方に流れ去り,オレンジ
色に輝く砲弾は空を横切り,傷ついた老船を襲った.
  ドオオオゥン!ドオオオウン!
  数々の砲弾が対馬号の手前で落ちる.そして次の瞬間,船を下から水柱として突
き上げるのだった.対馬号はそのたびに船体をきしませ,激しく上下に揺れた.飛
んだかと思うほど持ち上がり,沈むかと思うほど海に没する−−−嵐の波にもまれ
ているようである.
  バギィィィン,メリメリメリ!
  船尾の上部に強い衝撃を受けた.木が裂ける音が響く.そして次に船の右に水柱
が立ち,船が突き上げられ,左船首から水の中に突っ込みしばらくのち浮き上がっ
った.
  ついに当てられてしまったのだ.しかしながら,ゲアリス号の強力な砲の前には
老船の装甲は弱すぎ,さく裂せずに貫通したために沈まなくてすんだのだ.
 「へへぇん!適当にぼろきゃぁ,生き残れるんぜい.」田熊が吠えた.
  そのころバーク・ゲアリス号の操舵室では,馬鹿な賭けが行われようとしていた

.




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