AWC 再発表]《南シナ海上の武士》【7】 ひすい岳舟


        
#862/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (FEC     )  88/ 3/ 1  18:48  ( 83)
再発表]《南シナ海上の武士》【7】      ひすい岳舟
★内容
                            南シナ海上の武士(7)

  ペリオンのすぐわきを流れる川,スペツナ川.その茶色く澱んだ川を逆上ぼるこ
と,三Kmあまり.そこには,ラ・ドウグ社の直接経営の工場が蟻,川端に停泊し
ている巨大な黒船に,ペリオン同様積荷を急いでいた.その工場では魔の薬が今ま
で生産されていた.そして今,日本に向けて来襲せんとしていた.
  その工場の別棟の建物の中では・・・・・・・・・
 「ギュンダァー,いよいよだな.」
 「フフ.」
 「日本をやったらどうする気だ.」
 「その後は,ベネチアにあるマフィアの子会社をここに移させ,マフィアの東と
西の中間港として働いてもらう.そうだな,マフィア自体も日本に移す必要があ
るな.まぁそれは・・・・.・・・・・・・これで王室の東インド会社に気を配
って隠れる必要は無くなるわけだ.」
 「まぁ,子会社はいいが,肝心のマフィアはどうする.日本に移すまではまだ時
間がかかるのだし,そうなると長い間遠方操作になるぞ.」
 「案ずるな.ヨーロッパの事は全て息子ワルソンに任せた.奴は,我々が手こず
っていたエンゲローブ・マフィアを,早くも壊滅させたよ・・・フフ.」
 「ギュンダァー,お前にある人を紹介しょう−−−−−−おう,入ってくれ−−
−−−−ゲーベ・ザウエル艦長だ.バーク・ゲアリスの.」
 「おぉ,よく来てくれた.ブランデ−は?」
 「いえ,結構です.」
  この海の荒男は,首領のさし出すグラスを丁寧に断った.
 「なぁ,ギュンダァ−.艦長にゲアリス号の性能を聞こうじゃないか.」
 「そうだな,朝鮮国王.ザウエル君言ってくれ.」
 「全長百九十・五三メートル.砲は左右合わせて四十六門,後尾に一門の計四十
七門.大きさの割に数が少ないように思われますが,その威力は同径の軍の物を
越える巨砲であります.マストは5本.エンジンは,五百六十三馬力.」
 「そうか.君の腕に期待しているぞ.」
 「これから商談がある.艦長では,たのむよ.」
 「分かりました.航海の安全を約束します.」と言って彼はドアを閉め,二人の
前から消えた.
 「ラブダ・・・商談ではなく,作戦だろ.」
 「ファファファ!!」

  「あったぞ.」
  「よし,行く.」
  ローギス達は,樽を満載した荷車に悲鳴を上げさせながら,キャラバンに近づい
ていった.キャラバンは牛や馬が主力らしく,白人達の辺りに繋がれていた.
  その中の一人に,ローギスが話しかける.
 「旦那,この荷はどこへ運ぶんで?」
 「なんだぁてめぇは.この糞暑いのによく墨なんか塗ってられるなぁ.」
 「・・・・・・・・・」
 「さあ,むさ苦しいからあっち行け!暑くてたまらんぜ.」
 「旦那,そう言わましても,荷を運ばねばなりませんで・・・.この荷は?」
 「うるっせぇ奴だな,こいつはなぁ.首領のところに運ぶのよ.」
 「旦那の旦那のところにですか?やっぱり,港より遠いところでしょうな?」
 「ぶっとばすぞ.てめぇ.港だったら,おめぇらに運ばせらぁ.第一,港は目の
前だ.そんな近いところにこんな風にして行くか考えろい.」
                       ”こっ,これがそうだ!”
 「ごもっともで.旦那.となると私どもの荷はここということで・・・.」
ローギスはそういうと後ろを振り返り,メゲェル達を呼んだ.
「よーし,樽を持ってきてくれ!」
  メゲェル達は,ローギスの声を聞いて荷を白人の前まで運び,ローギスの後ろ
に並んだ.
 「こいつん中はなんだ?」
 「旦那りんごですぜ.海だと,果物がねぇと思って持ってきました・・・」
 「分かった分かった.てめぇらがいると,暑くて堪らん.さっさと行け!」
  ”ふん,色無しは死にやがれ”
  奴隷達は主人格の白人に一礼し,すごすごと去っていった.

  夜明け前.
  対馬号の甲板には砲の弾が並べられ,戦闘準備が完了していた.
 「よぉし,出陣じゃぁぁぁ!」
  その船長のかけ声とともに,錨が上げられ,気缶に薪がくべられる.
 「これより,シナ海へ北上!!」
  ボッボゴッボゴゴッボゴゴッゴゴゴ・・・・・・・・・・
  ボォォォォォゥゥゥ!
  力強い蒸気機関の音が志士一人一人の心を震わせ,彼らは無言で,ひしひしと
伝わる何かを感じ取っていた.

  六人の指導者達が,そこにいた.
 「ツァン,いつ,火を・・・・・・」
 「二日前の今ごろさ・・・.しかし,五隻目の奴は何処だかわからなかったら,
つけたらいいか判断が鈍って一時間ほど,ずれてますぜ.」
 「・・・・・・・・・」
 「みんな.自由のために.」
  そう,ヴゲナーは言うと,五人の手を一つづつ握りしめた.
 「では・・・・・・.」
  五人は無言でうなずきドアから去っていった.この指導者達は知っていた.みん
なが自由を得るには,もう他の五人と会う望みを捨ねばならぬことを.

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