AWC Made−up!! ひすい岳舟


        
#799/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (FEC     )  88/ 2/21   7:44  ( 80)
Made−up!!                      ひすい岳舟
★内容
  突然、橋本君から電話がかかってきた。男子から電話なんかかかってきたことがない
のでそれだけでもびっくりすることなのだが(さらにあの橋本君からというだけで異常
事態である。)、さらに今日どうしてもいいたいことがあるから来てほしいという。
  私は有頂天になって早速着替えをし、(場所が何故か学校の超自然現象観測同好会の
部屋だったので制服に着替えたのだ。)家を出た。
  私は橋本君のことを気にしていながらも、話しかけることが出来ずにいたのでこんな
出来事など起こるなんて夢にも思っていなかった。この橋本君が、何というか“人間離
れ”したような人で、本当女子とは滅多に喋らない。男子とは結構喋る方らしいが、女
子の間ではこのため、凄くきらいか、凄く好きか2極分してしまう。(7:3の割合か
なぁ〜)大抵、好かれる人同志集まってキャッキャやるのが女子の性分なのだが、この
橋本君容認派は何故かそれぞれが触れ合わない。これも彼の性格によるものなのでしょ
うか?

  学校について超自然現象観測同好会の扉を開けると、橋本君が狭っ苦しい部屋の中央
を収めるデスクに着いていた。がくらんは傍らに脱いでいて、ワイシャツの上から部の
白衣をはしょり、腕捲りをして何やら書きものをしていた。私が入ると手を差し出して
椅子を進めてくれた。
  「どうも、せっかくの日曜なのにすまない。」
「いいえ。」日曜というものはこういうためのものにあるのよ!
「実は、君に好意を抱いている。」橋本君はノートに書きものをしながらそっけなく言
ってのけた。「率直に言ってしまうと、貴方のことが好きだ、ということになる。」
「………」
「用というのは、そういうことなのだが、分かってくださいましたかな?」
「は、はぁ……」
  分かったには分かったが、こんな告白のしかたがあったものだろうか?“好意を抱い
て…”とか“と、いうことになる”とか………。もっと、なにか表現があってもいいも
のでしょ。………あ、そうか、これは照れ隠しなのね。
「私も実は、貴方のことを………そのなんです………」
「知っていたよ。」
「え!」
「と、いうよりは推測していたよ、というべきか。大体、人間の行動なんてものは見て
いればその身上を表わしてしまうから伝わるものなのだ。私は君のことに気を引かれて
いて通常の人よりもみることが多かったから、余計に伝わりやすかったのだ。」
「なるほど……」なんか、言っている意味は“普通の告白”と同じものなのでしょーが
彼がいうと何かの講座を聞いているように聞こえてしまう。
  「であるから君に伝えようと思う。」彼はこのとき初めて私の目を見た。
「はい。絶対に人には言いませんから。」何故か、そんな約束までしてしまった。
「そうしたほうがいいだろう。言ったところで誰も信じはしないことだが。君自身信じ
られないことだと思うよ。」
「大丈夫です。」
「私は人間ではない。」
「はぁ……?」
「人工的に皮膚・筋肉・神経など出来るだけ人間に近い組織でつくり、ロボットという
概念から離れた人工生命体の研究は古くからあったらしい。近年、新陳代謝が可能な肉
体の開発が完成し、それからは“精神”をつくるのがプロジェクトの中枢となった。人
の性格は簡単に言ってしまえばひとつのプログラムなのだ。ある条件に対し、行動した
り感情を表わしたり。感情というのもランクをつけて怒りながらも笑ってみせたりする
ことが可能なのだ。まあ、主プログラムに様々なプログラムが附随して、人格を形勢し
ている。身体の管理の方はそういったのとは別のものが、runされているわけだ。
  人類解析学が進むにつれてこれらのことが分かったわけなのだ。そして、人類は人工
的に人間をつくることに挑戦し、プロトタイプII型が去年完成した。それが私なのだ
。今、君はこう話していて、なんか感情的ではないなぁ〜と思っているね。実際感情人
人格プログラムは通常の人でさえ、かなり膨大なもので、それを設定するにはまだ技術
が追い付かないのだ。私のプログラムは1/50程度でしかない。
  私がどうしてこういった民間にいるか、というと−−−私をつくるのに国家レベルの
金がかかっているのだよ−−−私がこうして生活をしていて人間としてのデータを集計
しているからなのさ。ところがだ。」
「ところが………なに?」
「新陳代謝が行われなくなってきているのだ。身体が崩壊を始めているのだ。まだ、君
達のように私ら“新人類”の耐久年数は1、2年といったところなのだ。」
「………」
「そんな中、私は貴方に恋をした。」
「私は………どうしたら………」
「何もしなくていい。」彼は私の手を握った。「ただ、今話しを聞いてくれるだけでい
いのですよ。」
「もうじき、私は引っ越したとかなんとか言って、学校から消えることになるだろう。
私はどこだかの磁気テープかディスクだかにファイルネームを付けられ、来る実験の為
に備えられ」
「そんな話!嫌!!」
「………すまない。じゃ、これ以上はよすよ。でもこれだけはきいてくれ。表現は1/
50の陳腐さかもしれないが、本気だ。」
  「………」
  「佐藤喜美子さん、私は貴方が大好きだ!!」
  彼はそういって手を離し、後ろの窓のカーテンを開けた。そこからは冬とは思えない
ような日差しが差し込み、地球の生まれかわる季節“春”の到来を感じさせた。そう、
壊れたものが落ち、新しいものが出る季節を。

                          −−−−−FIN−−−−−

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