#792/1850　ＣＦＭ「空中分解」
★タイトル (TZJ     )  88/ 2/20   6:10  (102)
新リレーＡ＞第１９回　新たなる出発へ　　　Ｔ−ＢＥＬＬ
★内容
　次の日。放課後。３時半。「夢時堂」。

　深雪ちゃん達のことは、もう有名なっていますから、「夢時堂」のことも、午
前中に、もう学校中に知れ渡っていたのでした。“放課後、教室に残っていると
面白いことがある”なんて噂が、どこからか流れていたりして。

　　　　　　　　◇

　「わざわざ、来てくれて、ありがとう。ちょっと、話があるんだ」
　「深雪さん、これからもずっと僕とつきあって欲しいんだ。いいだろ」
　「え。はい」
　「なんだ、それだけなの？」
　「いや、深雪くんとだけじゃなく、直美くん、祥子くん、みんなで、これからも
ずーっと仲良くしたいんだけど」
　「はあ？」
　「へえ？」
　「どーいうことよ」
　「だからさ、みんなで．．．へへ」
　「ばか．．．」
　と、相変わらずの、健作くんでした。

　そのとき、つかつかと、やってきたのは佐藤くん。なんか、少し固くなってる
むみたい。
　「あら、佐藤クン、どうしたの？」と深雪。半分とぼけて、驚いてみせたりして。

　さて、今まで影の薄かった、深雪に“ほの字”の佐藤くんが、此処ぞとばかり
飛び出して参りました。何てったって、今、出なければ後がありませんからね。
　ひと呼吸おいて、
　「やいやい、先輩と思って、黙って見てりゃいい気になりやがって、もう我慢で
きねえ。深雪だけなら我慢もするが、いや、深雪ちゃんだから我慢できないんだ
けど．．．えへ、ともかく、いいかげんにしろよな」
　なーんて、イッキに言えたけど、慣れないセリフでぎこちないわ。

　「．．．」
　予想しながらも、あっけに取られた様子を演技してる主役達でした。
　「深雪さん、こんなヤツとは付き合わないでもらいたい。どうか僕と！」
　「え！．．．そんな．．．」
　「へー、そうだったの。ふーん。佐藤クンもねえ」
　「ふん、佐藤か．．．お前も．．．」
　「．．．そうだな。いいよ．．．．．．じゃ、祥子ちゃん、これから、どう？」
　「は？．．．うーん、そうねえ。でもぉー．．．やめとく。そのうちにね」
　「ねえ、直美ちゃん、どう？．．．」
　「いえ、わたし、もういいの」
　「．．．」

　「あの。佐藤くん。あたし．．．でも」
　「ずっと、君ら二人を見張ってたんだ。先輩の正体、君にもわかったろ」
　「でも．．．」
　はっきりしない、深雪ちゃん。健作くん、かっこいいもんね。
　「ともかく、この先輩とは付き合わないでほしいんだ」
　何を思ったか、佐藤くん、延々とこれまでの尾行のことをしゃべりだしたので
した。どこからか００７山下、それにＮｏ２が言い足りないところを補っている
よう。

　実はこれ、さっきから逐一、会話と映像が学校の放送室に送られているのでし
た。本日の“特番”。
　誰の仕業かは、言わずもがなね。仕掛に気がついて、青くなったのは、健作。

　各教室で、職員室、校長室、会議室で、「夢時堂」の様子がＴＶに映し出され
ています。
　ときおり、佐藤の話に合わせて挿入される、深雪と健作、デート中の映像。そ
れにいつの間に撮ったものか、健作の昔の行状を暴いたものも．．．
　話が途切れると、「佐藤の砂糖」じゃない「砂糖の佐藤」、あれどっちだっけ。
ともかく、しっかりＣＭまで入ります。教室では生徒達、会議室にはＰＴＡの面
々．．．が。

　「おい、あれ佐藤だろ」
　「ははは」
　「きゃ、あれ陸上部のスズキせんぱいよ」
　「やだぁー」

　「ほう、佐藤くんも、面白いことやってるね」
　「校長！ああいうの、まずいですよ。即刻．．．」
　「いいから！」

　「鈴木の奥様。あれ、どういうことなのでしょう？お宅のご子息ですわね？」
　「え、その．．．」
　（以下略）

　　　　　　　　◇

　というわけで、めでたし、めでたし．．．（なんですっ！！）

　　　　　　　　◇

　数日後。放課後の茶道室で、例の三人が以前のままに。

　「深雪に、ラブレターなんか出したのが間違いよね」
　「なによ。せっかくの．．．でも、あれでよかったのかなあ。なんか、かわいそ」
　「直美も直美よねえ」

　そのとき、ドアがゆっくりと開いて．．．
　（あら、先生？やーだ．．．）
　でも、なかなか姿が見えないわ。ようやく、おずおずと顔を．．．
　（なんだ、野球部の隆じゃないの。どうしたのかしら？）
　「あのー、斉藤さん．．．」
　「あたし？なに？」
　「これ．．．うちの先輩から」

　さあ、どうするの、深雪ちゃん？？

　　　　　　　　　　　　　　　　　＊＊＊＊に　つづく　？？