AWC RUN☆BATTLE  <4>   Fon.


        
#787/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (DGJ     )  88/ 2/18  19: 5  (137)
RUN☆BATTLE  <4>   Fon.
★内容

     「RUN ☆ BATTLE}   by 尉崎 翻
      ( 逆襲のシャル )

Trrrrr...カシャ
「‥‥‥あっ、瞳ちゃん!? あのさ篠原だけど、今日のね‥‥ ガシャッ!!」
 ツーツーツーツーツーツー
「‥‥‥いきなり切るこたないだろぉ!」
 ガチャリと力なく受話器を元にもどす。
 体中がヒリヒリしている。
 その後、篠原は保健室に運びこまれ帰宅に至った。
 爆発の中で数ヵ所の軽い火傷と傷ですんだのは彼の超人的な生命力からであろう。
 階段を上って自分の部屋の前にたどりつく。
 ハァ‥‥‥
 ため息。無理もないかなり状況は複雑化しているのだから。
 ドアを開け一歩部屋に入る。
「‥‥で? なんで君がここにいるのだ?」
「フィアンセが相手の部屋にいちゃいけないの?」
 空中を漂いながらのリミの返事であった。
 篠原の親も親である。フィアンセと名乗って現われたリミを心良く迎えてしまった
のだから。

『 「そうか、そうか。淳! でかしたぞっ!」
  「で、でかしだぞって 父さん! あ、あのねぇ!」
  「わっはっは! こいつめぇ、いつの間にこんな可愛い娘を
  手にいれたんだ!」
  「だ、だからぁ!」
  「淳。男なら責任はとらねばいけませんよ!」
  「か、母さん。 誤解だっちゅうに!」
  「なにをいっとる! お前の年頃ならば婚約者の一人や二人
  いてもおかしくあるまい」
  「複数いてたまるかぁーーーーーーっ!!」         』

 と、この調子である。18と16で学生結婚した両親に判らせろってのがそもそも
問題なのかもしれないが。
「いつまでいるつもりなんだ君は?」
「いつって‥‥やだぁハニーってばぁ。ずぅーっとに決まってるじゃない!」
「ずっとって‥‥」
「だってあたし三次元に家ないもん」
 それもそうである。
「ところでハニー?何処に電話してたの?」
「‥‥‥き、君には関係ない」
 ソッポを向いて篠原は本棚から雑誌を取って読み始める。
「あたしにいえない所なの?」
 リミがにじりよる。
「聞こえん。聞こえん。」
 あくまで無視。
「質問に答えてよっ!」
 ヒョイッとリミが篠原の手から雑誌を抜き取り、天井近くまで浮かび上がる。
「なにすんじゃ!」
「し・つ・も・ん・に・こ・た・え・な・さ・い」
「君に言ういわれは無い!」
「ふ〜ん‥‥ フィアンセに向かってそういう態度とるわけぇ?」
「おれは君をフィアンセと認めてないぞっ!」
 フンッと横を向く篠原。
「わかった‥‥昼間のあの女の所ね!」
 ビクッ! 篠原の全身が数センチ飛び上がった。
「ふ〜ん。 図星ねぇ‥‥」
 急降下で篠原の目の前にリミが降りのと首ねっこにリミの両手が到達するのは同時
であった。
「さては昨日のデートの相手もあの女ね! さぁ!一体、あの女は誰なの!」
「誰がいうかぁ!」
「そぉ‥ならば体に聞いてみるまでよ!」
 リミの手が動き始める。
「じゅん〜! 電話よぉ!!」
「電話、電話だってさっ」
 篠原の母の声だ。これは幸いと篠原はリミの手を逃れる。
 ダダダと階段を降り受話器を取る。
「はい、変わりました。あわっ‥‥! ひ、瞳ちゃん‥‥‥あわわわっ」
 リミに聞かれまいとあわてて口を手で塞ぐ。電話本体を左手で抱えて壁に向かって
小声で話し始める。
「あ、あのさぁ。昨日と今日の事なんだけどね!」
『一応、あなたの言い分も聞かなくちゃ不公平だと思って電話したの。聞くだけは聞
いて見るわ』 冷たい言い方であった。
「だ、だから全て誤解なんだよ。おれは、あのリミとは何の関係もないわけであって、
あいつが勝手に‥‥」
『[あいつ]ですって? へーっ、随分親しそうじゃない?』
「あ、あのね。そうじゃなくてね、だから‥‥」
「ハニー。電話だれからなの?」
 ガバッ。振り返ればリミが胡座のポーズで篠原の直ぐ横を浮かんでいた。
「ねぇ、誰からなのよっ!」
『篠原くん‥‥! 今の声、たしか』
「空耳だっ!空耳ぃっ!」
「ねぇ!ハニー! 誰からなのよっ! さてわ、昼間のあの女ねっ!」
 必死に篠原はリミを無視しようとしていた。それは切れかかったザイルを結ぼうと
する作業に似ていた。
「だからっ、瞳ちゃん。これは全て誤解なんだっ!」
「なんだ、なんだ、婚約者同士がもう喧嘩か?」
 篠原の父の声である。家の中でも大声で話す性格であった。
「まったく先が思いやられるなぁ。ところで淳。リミさんとはAは終わったのかそれ
ともB、いや責任とるんだからCは済んだんだろうなぁ?」
「父さんは、黙ってくれぇーーーっ!!」
 篠原の叫びは半分涙声である。
「あ、あのね。瞳ちゃん‥‥」
『‥‥‥』
 反応が無い。
「ひ、ひとみちゃん?」
『‥‥‥ もうたくさん』
「へっ?」
『‥‥‥もうたくさんよっ!二度とあんたの顔なんて見たく無いわ!さよならっ!!
(ガチャッ!)』
 ツーツーツーツーツーツーツーツーツーツー‥‥‥
 電話の切れた音が虚しかった。
−−−破滅じゃ‥‥‥
「ハニー。元気ないわねぇ?」
 アッケラカンとリミが言う。
「おのれのせいじゃろが!」
 力ない篠原の叫び。トントンと自分の部屋へ向けて階段を上る。ドアを開けようと
するとひとりでに開いた。部屋の中から篠原の母が出て来たのだ。
「布団しいといたわよ」
「あぁ‥‥ありがと‥‥っ!?」
 グイッと擦れ違う母の後ろ袖を左手で引っ張る。
「ん‥なぁに?」
「母さん。なんで一組の布団に枕が二つあるんだっ?」
 なるほど。見れば敷いてある布団に二つの枕が寄りそうように置いてある。
「やぁねぇこの子は。リミちゃんのにきまってるでしょ!」
 ケラケラ笑いながらタッタッと母は下へ降りていってしまった。
「さっ!ハニー。一緒に寝よっ!」
 キャイキャイはしゃぎながらリミが腕を組んで来る。
−−−いかん
 篠原は頭を抑えてしゃがみこんだ。
−−−だんだん、泥沼にはまりこんでいく気がする‥‥
「ハニ〜、頭いたいのぉ? 風邪? じゃぁ早く布団にはいんなくちゃ! あたしが
あっためてあげるぅ!!」

「シャル様! 一大事でございます!」
 シャルの親衛隊「紅影」の一人がシャルにかけよる。
「どうした騒騒しい、血相を変えて何事だ?」
「はっ、報告いたします。篠原家での出来事が予想以上に長くなってしまい。我々の
出番の余地がなくなりました!」
「なんだと!?」 慌てて振り返るシャル。
「馬鹿な! 副題が『逆襲のシャル』と、なっとっただろうが! それなのに‥‥そ
れはまことか?」
「はっ! 間違いございませぬ」
「うぉのれぇ! 篠原淳めっ! つくづく憎きやつよ! このカリは次回に必ず返し
てくれるわぁ!!!」
                                 <つづく>




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