#756/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (DGJ ) 88/ 2/12 9:43 (104)
RUN☆BATTLE <2> Fon.
★内容
「RUN ☆ BATTLE」 by 尉崎 翻
(淳の場合.......)
某JR駅前。
リミの隙をついて逃げおおせた篠原は駅前にある時計台のベンチに座った。休日の
ため駅に来る人々は子供連れが多い。
腕時計と駅前の時計台の時刻を確認。
約束までの時間には30分近くあった。
時間があるため今日のデートの事を考える。
映画にいってから食事でもして.....etc...
「しっかしなにもこんな日に帰ってくるこたぁないだろうに」
その通りだ。主語は当然リミ。
よりによって一秒の遅刻すら許されない日に。
「来るなら来るで別の日にすりゃいいんだ」
独り言。
「それか事前に連絡すれば。そうすりゃこっちだってあらかじめ隠れるなりなんなり
の対策が出来る。いきなり来ちゃ対策も考えられんじゃないか」
なんのきなしに空を見上げる。
青空がひろがり雲はほとんどない。確率0%の天気予報はどうやら当たったようだ。
「いい日だ。」 思わず言葉がもれる。
「デートにはもってこいの日になりそうだなぁ‥‥ きっちりエスコートしなくちゃ
な。せーっかく何度も誘ってOKしてもらったんだから‥‥」
「何度さそったの?」
「‥‥んーっと、3回だったかなぁ?」
「誰を?」
「クラスメートの瞳ちゃん」
「どんな人?」
「明るくって、可愛くてねぇ、気立てもよくて‥‥‥へっ?」
そこで篠原は気付いた。先程から自分は独り言ではなく、れっきとした会話を行な
っているということを。そしてその会話の声というのが聞き覚えのある若い女性の声
であることを。
空を見上げながらの体制で篠原の体が凝固する。
腕がのび篠原のジャージをつかむ。
「どんな、誰とデートするってーっ!? ハニィィィィィィッ!」
「な、なななななな?!」
リミの手を篠原が振り払う。
「なんでここが判ったんだ!?」
リミがどこからともなく手帳サイズの機械を取り出した。真ん中にディスプレイら
しきものがあり、そのさらに真ん中にピコッ...ピコッ...と、小さい光が点滅
している。そして手を伸ばし篠原の髪の毛から小さな機械をとり外す。
「発信機をつけといたのよ」
「な...! あ、あのな...っ!」
「ストップ! その前にぃ」
リミが目を細めて迫り寄る。
「さぁ! あたしというフィアンセがいるのに! いったい何処の誰とデートするの
か、もういっぺん言ってもらいましょうかぁ!」
再度ジャージを掴み これでもかっ! と、いうくらいにじり寄る。目の色が尋常
ではない。嫉妬深い性格のようだ。
「誰がフィアンセじゃあ!」
「誰とデートですってぇ!」
篠原の反論を全く聞いていない。
何とか言い逃れなくては。このままここでずっといて、瞳ちゃんが来るような事態
に陥れば最悪だ。
「ほ、ほらぁ、あの子だよ」
サッとリミの後方を指差す。
「えっ?」 反射的に振り返る。休日とはいえ駅前だ人は沢山いて判らない。
「ハニー、あの子っていったって誰だか‥‥‥」
リミが視線を元に戻せば既に篠原はそこに居ない。ジャージだけがリミの両手に残
っていた。
「あっ! こ、こらっハニーっ!」
あわてて周りを見渡す。駅前というひらけた地形がリミを幸運にし篠原を不運にし
た。篠原の逃げていく後ろ姿をリミの眼が捕らえる。
「どこに逃げるのよ! ハニーっ!」
リミが空中から猛スピードで追いかける。
両手に持っていたジャージを篠原へと投げつける。ジャージは宙を舞って篠原の頭
部へ覆いかぶさった。
突如視界を失った篠原はあわててジャージを取り除き走りながら腕を通す。
「こらっ、なんで逃げるのよっ!」
「やかましぃ! 君には関係ない!」
「あたしに言えないことなの!?」
「うるさぁーぃ!!!」
駅前から一陣の風が走り去った。
しばらくたって。
「ちょっと早かったかな?」
上下を可愛く着飾った瞳ちゃんが駅前に現われた。
「うーん! いい天気になりそうねぇ!!」
そういいながら空を見上げて時計台の先程まで篠原が座っていたベンチに腰を掛け
るのであった。
Trrrrr...カシャ
uあっ、お母さん? わたし、瞳に電話なかった? ....そう...えっ?別に
たいしたことじゃないから.....」ガシャ!
電話ボックスから出る。
既に淳との待ち合わせ時間から一時間が経過した。
「家にも電話きてない。もう!あの馬鹿!!」
今日何度この言葉を言ったか既に判らなくなった。
瞳の怒りは殆ど頂点に達していた。
キッとにらんだその視線上に運悪く時計台が位置していた。
「淳のあほーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
怒りはそこへ爆発した。
「ハァハァハァ‥‥‥‥」
リミから逃げおおせたのは既に瞳ちゃんとの約束から一時間半が過ぎていた。
なんとかリミをまいて元の駅にたどりつく。
「ったく、しつこいったらありゃしない‥‥」
駅前を見渡す。
瞳ちゃんの姿は......ない。
「帰っちゃたのかなぁ....あれ?」
ふと、篠原の眼にある物が飛び込んだ。
「おかしいな? 朝はちゃんとなってたのに??」
そこには半壊した駅前の時計台が静かにたたずんでいた。
<つづく>